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『17歳』 (2013) / フランス

2014-02-26 | 洋画(さ行)


原題: Jeune & jolie
監督: フランソワ・オゾン
出演: マリーヌ・バクト 、ジェラルディン・ペラス 、フレデリック・ピエロ 、ファンタン・ラバ 、ヨハン・レイセン 、シャーロット・ランプリング
観賞劇場: ヒューマントラストシネマ有楽町

映画『17歳』公式サイトはこちら。


名門高校に通いながら何不自由のない生活を送る17歳の少女イザベル。バカンスに訪れたビーチで初体験を済ませた彼女は、やがて不特定多数の男たちを相手に売春を重ねるようになり……。(映画.comより)


オゾン監督の前作『危険なプロット』は謎かけを楽しむ感じのサスペンスだったけど、正直あまり自分の中ではヒットしなかったんですね。しかしこれは予告から結構楽しみにしてました。オゾン監督の美少女・美少年の発掘力にはいつも脱帽なんですが今回もそうだった。実にツボを押さえたキャスティングをしてくる。本作のマリーヌ・バクトもまさにそう。1990年5月14日ということで実年齢は23歳、劇中でも結構大人びて見えましたが、高校生役はすっぴんならまだ大丈夫という感じ。とにかく彼女の存在感が全てでした。

17歳の誕生日とほぼ同時に初体験を済ませるイザベル。それから程なく、秋風が吹く頃にはSNSで出会った不特定多数の男たちを相手に売春を始めているという事実にまず驚く。性の初心者であるはずのイザベルが何故、性体験の行きつく果てとでも言うべき売春に一足飛びに進むのか。その確たる理由は劇中のどこにも記されてはいない。

普通の少女であれば、例えばイザベルと男の話をするクラスメートのように、誰に告白されて嬉しいとか、振られて悲しいとか、一喜一憂しながら異性との付き合いを進めていくんだろうけど、イザベルにとっては同世代の恋の駆け引きなど全く意味のないことのように見える。表面的には適当に話を合わせているつもりでも、本音はそんな「たわごと」につき合う必要はないんだと彼女は本能的に判断している。突き詰めていけば異性との付き合いなんて性を抜きにしては語れないし、回りくどいことを考えた所で結局はそこがポイントなのだから、合う合わない以外に何もない。

イザベルが売春に走った確固たる理由はどれがどうと言えないのだけど、その1つには好奇心もあったのだろう。自分が知った性の世界は一体どんなものなのか。多くの男たちと肌を重ねることで彼女は自分の前に開けてくる世界を堪能したかった気持ちもあったのだろう。
それでもそこで代金を貰うという発想が出てくるということは、単に自分と合う男を探していただけでもなく、確実に彼女は自分に価値を求めている。自分が一体どのくらいのものなのか、大体の所でも自分で値段をつける辺りが大胆でもあるが、そこに実は娼婦的な部分の価値を求めているのかもしれない。普段の自分とスイッチが入る自分の境界線、それは金銭を貰って奉仕することなのかもしれない。
境界線と言えば、彼女がいつも使うホテルへと向かう道のり、特に地下鉄のエスカレーターを上がっていくシーンが目印になっている。ここを上がる時はいよいよ気分を切り替えて行くのだろう。リピーターなら安心だけど普段はどんな男が待っているかはわからない。理不尽な目に遭うこともある。流しの売春なんでまかり間違えば殺されてもおかしくはないのに、よく怖くないと思うのだけど。
あともう1つ境界線として着目しないといけないのは、義父への目線。「血縁関係がない男」という自覚があるからこその義父への眼差しにはまぎれもなく「女」を感じさせるものがあった。男として相手を意識した瞬間から娼婦目線に変身するイザベルには普通の17歳の面影はない。

イザベルの行動のいくつかは弟の目線で目撃されているということも忘れてはいけない。冒頭、ビーチにトップレスで横たわるイザベルに弟が近づいて声をかけるシーンがあるが、それも結構驚きで、ティーンエイジャーともなれば弟に自分の裸を晒すことなどまずないと思う。しかしそれを何も思わずにしてしまったり、その後の彼女が自分の行動を逐一弟に話すシーンなどは彼女の無防備さの表れなのか、それとも弟を完全に自分を客観的に見つめさせる役目として捉えているのか。いずれにしろこれも通常の姉と弟というイメージではない。傍観者、代弁者として、弟は役目を負っているし、恐らくオゾン監督の目線もこれに近いのだろう。

本作はヒロインの行動の原因だの理由だのに言及をしていない。何故なのかどこにも答えはない。17歳という年齢が強固にそうさせる訳でもない。好奇心でも金でもパートナー探しでもない。まして男に対しての愛でもなく。その曖昧さ加減を絶妙に表した所が素晴らしい。
そもそも人は、何かをするための動機をいちいち考えないことはよくある。その曖昧さがまた、人が人たる所以でもあるのかもしれない。後年もしイザベルが自分を振り返ることがあったとしても、あの時何故あんな無茶をしたのか、はっきりとした理由は見つけられないかもしれない。
性愛を知ったことは一つのきっかけに過ぎず、俯瞰しているもう1人の自分をそこから探す痛々しい旅。満たされる日は永遠に来ないのかもしれない。
それでも明らかなのはジョルジュはイザベルに取っては他の男達とは違う存在。リスクの大きな出会いの中でも彼はイザベルの内面を見る。責任のない関係だが彼女の心は動く。離婚して滅多に会えなくなった実父への思慕や、男としての魅力がかすかに彼の中で重なったのだろうか。

反社会的と思われたり反感を買うような行動を取るイザベル。そんな彼女を見守る2人の女性、母親のシルヴィとジョルジュの妻・アリスという存在が救いをもたらしてくれるだろう。シルヴィは彼女をどこまでも愛情で包み込み、女として家族としてきっちり見守っている。義父とイザベルとの関係も区分けをして諭すことができるのだろう。そしてアリスは自身の過去を振り返り、女としての本能の部分からイザベルと対峙している。
とても表面では割り切れない感情が押し寄せて来た時、人は誰かに理解してもらいたいと願うのではないだろうか。誰にも理解してはもらえないことなら特に。その意味でこの2人の理解者はイザベルが今後生きて行く上で大きな支えとなって行くのだろう。

鑑賞中も鑑賞後もこれ程考えさせられる作品もなかなかない。そういう意味で実に面白い。マリーヌ・バクトは、昨年鑑賞したモーリス・ピアラ監督『愛の記念に』のサンドリーヌ・ボネールのデビュー当時の演技を思い起こさせる。どちらも衝撃的で美しい登場だった。今後のマリーヌ・バクトの活躍も楽しみになってくる。


★★★★☆ 4.5/5点







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Unknown (mig)
2014-03-02 17:12:26
こんにちは、
主演の子、オゾンらしい発掘でした
弟との関係がもっと危なくフォーカスされたら
私好みだったんだけど(あはは)

少女がまた意識なくってところが怖さありますね、
今後にも注目ですね。
migちゃん (rose_chocolat)
2014-03-04 10:57:16
そうだね。オゾン監督が美少年美少女を発掘する能力はすごい。
弟が姉の裸見ちゃうっていうのもちょっとわかんないというか。見られても平気みたいな感じだったしね。
感覚違うのかなと思うこともあります(苦笑)
無意識に何でもしちゃう齢なんだろうけどねー。
女の気持ち (とらねこ)
2014-03-11 10:12:13
オゾンて本当に、よくもまあ女の気持ちが分かるよなーと思う描写なんですよね。
私実は男の友達と見たのだけれど、彼の感想は的外れなことばっかりだったな。なんか女同士でいろいろと語りたい気がする。
とらねこさん (rose_chocolat)
2014-03-16 10:12:18
>よくもまあ女の気持ちが分かるよなーと
ですよねえ、微妙な部分がいつも嫌味も引っかかりもなく出てくるのはさすがです。

>男の友達と見たのだけれど、彼の感想は的外れなことばっかり
笑! わかります。私の周りの男性諸君も不評だし。

こういうのは女子会というより、お泊り会クラスの議題だよね(笑)盛り上がるわー
母親について (真紅)
2014-03-19 21:27:36
こんばんは。
うんうん、と拝読していたのですが、母親シルヴィに対して私は批判的なんですよね。
傷の手当とかしてはくれるんだけど、自己愛の強い人だなぁという印象でした。
まぁ、よくいるタイプの母親ですね(笑)。
私もこの映画かなり好きでした。
真紅さん (rose_chocolat)
2014-03-20 09:26:59
>自己愛の強い人
いかにもフランスの母って感じしましたよね。
自分も再婚で、義理父に対してのイザベルのスタンスを見せられたら、あれでもたぶん精一杯なんだろうし。
イザベルもなんだかんだで同性として頼らざるを得ないんじゃないでしょうか。もっと成人しても尊敬できないなら母を捨てるとは思いますが(苦笑)
娘が (sakurai)
2014-05-20 15:38:46
いる身としては、他人事じゃないのですが、あんなに綺麗な娘じゃないから、やっぱ他人事。
個人を重んじるお国柄も感じさせましたが、私は物語展開のうまさの方に目が行きました。
さすが、ストーリーテラーだわ。
しかし、配役の妙はいつものことながら、感心します。
sakuraiさん (rose_chocolat)
2014-05-23 06:08:21
>物語展開のうまさ
日本じゃまずこういう感じの作り方はできないでしょうから、そのあたりのスマートさも含めてのうまさですね。
フランス人の感覚ってすごいと思います。オゾンは特にですが。
いつもながら配役もどんぴしゃですよね。
 (latifa)
2014-09-29 14:04:43
roseさん、レンタル開始になったから、さっそく借りて来ました^^
オゾン監督の映画は、相性いいから、たいがい外れないです。本作も、面白かったー。

弟とお姉さんの会話とかが、結構エグくて、びっくり。
日本とフランスじゃ違うだろうけど、それにしても、結構凄かったですよね。

おかーさんも、色々娘の心配とかしてるけど、でも浮気してるっぽいしね・・・。

女性なんて・・・ってオゾン監督が思ってる感じがしたなー。
latifaさん (rose_chocolat)
2014-09-30 06:07:24
日本とフランスじゃずいぶん違いますよね。
あんな姉弟の会話なんてまずないだろうし・・・ w

>女性なんて・・・って
うん。どこか醒めた目線だったよね。

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