原題: LA PIEL QUE HABITO/THE SKIN I LIVE IN
監督: ペドロ・アルモドバル
出演: アントニオ・バンデラス 、エレナ・アナヤ 、マリサ・パレデス
試写会場: ブロードメディア・スタジオ月島試写室
公式サイトはこちら。[2012年5月26日公開]
映画レビューサイト・cocoさんのご招待で行って来ました。 とても観たかったのですごくうれしい!
人気作品なのになかなか試写自体が少ない感じだし、倍率高いのでよかった。 ありがとうございました。
さーて何から書いたらいいのか・・・というくらいこれはネタばれなしだと難しいのよ。
なので断片的にネタばれの可能性あり、観賞前の方はここでお帰り下さいね。
とりあえず、goo映画さんからあらすじ拝借(緑のフォントです)。
「謎めいた雰囲気を漂わせる女性ベラ(エレナ・アナヤ)は、全裸と見まがうしなやかな肢体に肌色のボディ・ストッキングをまとい、ヨガの瞑想に耽っている。彼女は画期的な人工皮膚の開発に没頭する天才形成外科医ロベル(アントニオ・バンデラス)によって幽閉されていた。」
ポスターとかチラシとか予告にもたっぷり出てくる、肌色のボディスーツを着たり、ロベルと並んで仮面をかぶって登場する美女・ベラ。
彼女がキーパーソンというのは間違いないのだけど、では一体何者なのか? どうしてこんなスーツを着ているのか? 何故ロベルはベラを監視・監禁しているのか? という理由には一切触れずにストーリーは進む。
ロベルとベラと、お手伝いのマリリアと。 この3人だけだった住まいに、マリリアの息子のセカが乱入してくるところから物語は大きく動きだす。
「ロベルが夢見るのは、かつて非業の死を遂げた最愛の妻を救えるはずだった“完璧な肌”の創造。
あらゆる良心の呵責を失ったロベルはベラを実験台に、開発中の人工皮膚を移植し、今は亡き妻そっくりの美女を創り上げてゆく……。
そして、ベラは一体何者で、どのような宿命のもとでロベルと巡り合ったのか……。」
このあらすじだけを読むと、「かつて非業の死を遂げた最愛の妻」を偲んで、ロベルがベラを作り上げたかのように読める。 しかしながらこの「妻の死」と同時進行で、ロベルにとって妻と同じくらいかけがえのない人物、娘のノルマに関して、もう1つのショッキングなストーリーが進行していく。
この映画、昨年のラテンビート映画祭からずっと言われてきたキャッチフレーズのようなワードがあって、それは「変態映画」ということなのだが、どちらかというと「変態」よりは「執念」「狂気」のほうがしっくり来るような気もしないでもない。
「復讐のなれの果ての狂気」とでも言おうか。 いずれにせよ、妻に対してもノルマに対してもロベルが抱いていたのは狂おしいくらいの愛情であり、その愛が下敷きになって物語が二重に繰り広げられる。
そして一見関係ないように見える、この2つのエピソードが1つに結びつく瞬間。 それまでこの話は「何故?」としか思っていなかった観客は、ロベルの、妻と娘に対してのあまりの愛情の深さに愕然とさせられるのである。 ここまで来ると愛情という言葉自体が上滑りに感じるくらいの業の深さ。 そしてそれ故にこの映画は「変態映画」と呼ばれてしまうのだろうが、むしろ報われなかった最愛の人の人生を永遠に再現させるために支払わせた代償の惨さの方が恐ろしく感じる。
「変態映画」と聞くとどうしてもある種の偏見を伴う作品を連想しがちだが、本作は決して下品なものではない。 むしろ敢えてファッショナブルに仕上げ、オブジェ等も駆使して色彩的な効果を狙ったのもあり、描かれている内容が残虐で荒唐無稽であるのに比較すると、極めて淡々と、粛々と仕上がっているので、映画そのものに対しての嫌悪感は少ないはずだろう。
この手の事件は世界各地で例があるが、そこに「人工皮膚を形成して、最愛の妻を再現する」(実際科学的に考えても実現はしないのだろうけど)ことを組み込んでおり、別々に進んでいたことが1つになってここに在る事実に、アルモドバル監督の世界が止め処なく創られている様を見る。 愛や想いは時にあらゆる尺度をも飛び越える狂気を生むのだと。
忘れてはならないのが、狂気はあくまでも狂気であり、その世界を容認するのは支配者だけだということで、ベラにとってはおよそ承服できないことのはずだった。 しかしながら初めこそは嘆き悲しむしかなかった彼女も、ロベルやマリリアと居を共にするうちにいつの間にか彼らに対しての奇妙な信頼が生まれていく。
絶対に受け入れられないことのはずなのに、もしかしたらロベルと一緒にいれば本当の愛が得られるかもしれないと一瞬でも思ってしまう錯覚に陥るベラ。 辛うじて狂気と現実との隙間から這い出た彼女は、映画が終わった後、これから一体どうして生きていくのだろう。 鏡を見るたびに、そして感じない肌を実感する度毎に、おぞましい日々に捉われてしまうのだろうか。 それとも全く別の人間としてやり直すことができるのだろうか。 絶望しかない現実でも、それでも希望があればいつの間にか生きることに自分を順応させていけるのが人間の強さなのかもしれないが、その定石どおりに生きることは彼女にとっては難しいのかもしれない。
本作の特徴として、「色」を効果的に使用したことは避けては通れない。
無機質な壁面とは対照的な赤のベッドを持つ監禁部屋、ビセンテの実家のブティックに溢れる色とりどりの服、パーティーで若者たちが着飾るドレスの色の洪水・・・。
斬新かつユーモラスなファッションを繰り広げるフランスのデザイナー、ジャン=ポール・ゴルチェに全面的な協力を仰ぎ、原色、特に赤を効果的に駆使したシーン。 これがあるから、ベラが着用する肌色のボディスーツや、セカのコスプレなどの「異様さ」が際立つのである。
ベースがアヴァンギャルドでありながら、艶やかな色彩や柄、大胆なカットとを組み合わせた衣装はそのままストーリーにも影響を及ぼしそうな雰囲気で、映画との相乗効果も抜群である。
アントニオ・バンデラスは常に隙がなくダンディな雰囲気で狂気を演じる。 -そしてエレナ・アラヤの伸びやかで美しい肢体は本作の持つ「妖しさ」にうってつけだったのだろうか。 狂気の物語を演ずるにふさわしい共演であった。
本作は予告もうまくネタを割らない様に作っている。 そして真実が明かされるまでの欺き方も秀逸。 時間軸の移り変わりが若干多くあるが、決して邪魔にならず、見事に観客を騙すことに成功している。
★★★★☆ 4.5/5点
どんでん返しが面白かったです。
やっぱり、ああまでして・・・って思ったら「変態」だよねえ??って思っちゃう(笑)
愛は・・・それでも何となくあるんでしょうね。
歪んだ愛?
これからどうやって生きてくんでしょうね。ほんと、その後を見てみたいです。
そっか「変態映画」ですよね…確かに
でも美しいし,切なさもあるので赦します。
こういう絆でも最後は愛が芽生えるのかどうか
その点が一番気になりました。
まぁロベルのしたことはやはり許されることではないので
ハッピーエンドにはならないとは思いましたが・・・・
この先ヒロイン?がどんな生き方をするのか余韻たっぷりですよね。
受験シーズン、お互い疲れましたね(苦笑)
子どものいる前だと、そうですね。これはだめですね(笑)
アルモドバル監督独特の世界を楽しめる作品です。
久しぶりにゆっくり映画が見れたわ~~。
明日が子供の卒業式なの。
今日は予行練習で、久しぶりに学校へ登校。
で、この映画を選びました!
うふふ~大正解。
これ、子供のいる前では見たくないぞー(^▽^)
面白かった~~。
内容もだけど、roseさんもおっしゃってる通り、インテリアとか色づかいとか光っていたよねー。
結構な内容だけど、撮影とかスタイリストさんとかが一流どころで、びしーっとしているせいもあって、安っぽい映画にならないのよね。
また、次のアルモドバルの映画が見たいわー。
そりゃ、これがリアルで起こったらやってらんないでしょう(笑)
服飾のことなども出てましたし、どこかスタイリッシュ。でも異常(笑)こんな映画、他にはないでしょうね。
見事にだまされましたが、自分が当事者で勝手にあんなことされたら
その場で発狂しちゃかも^^; ベラはしっかりしてたよ。
異様なつくりでも、上品なところが好感もてます。
わかっても、何だか面白おかしくって感じだもんね。
私も2回行きましたよ。
ネタバレうっかり読んでしまったのですが、わかってても面白かったです。
ということは2度おいしい作品なのかもしれませんね。
先日2回目を観ました。話はわかっているので細部などをたっぷりと楽しんできました。
監督の遊び心がいっぱい入っているのがわかりますね。
わたしの感想など、観た方でなければ意味不明(笑)
「変態映画」と言い切るにはやはり抵抗がありますね。
それだけではとてもこの男の言動や内面を表現し得ないです。
かと言って、好きなお話かと聞かれれば、好きだとは答えないだろうと思うけれど、
脚本、映像、構成、キャスティングなど、
圧倒的な力を感じる作品でした。
もっと奥深いと思うんですが、言葉だけが独り歩きしてます。
というのも『ムカデ人間』のハイター博士とこの整形外科ってどことなく雰囲気が似ているんですもん。
でもこの映画は変態映画という四文字で片付けてはいけない映画でもあると思いました。
>悲劇をいいわけにしてもともともっていた狂気を実現させてしまった
何だか最後ごっちゃになってましたね。 あんまりそういうことこだわらないというか。 後はご自由に!って感じでした。
わたしには悲劇ゆえに狂ってしまったというか、悲劇をいいわけにしてもともともっていた狂気を実現させてしまったように感じられました。やっぱ人には多かれ少なかれそういう歪んだ欲望が潜んでいるものではないでしょうかね。ふふふ・・・
支配してるつもりがいつのまにか虜になってるあたり、『痴人の愛』なども思い出しましたよ
上映運動してもいいくらい、よくできた作品ですよ。
気のせいかな?劇場予告で流れていたのに・・一向に
上映予定作品にUPしないの。不安が募ります(涙)
アブノーマルな話なのに、そうと感じさせずに観客を持って行くところがいいんじゃないですかね。
>どちらかというと「変態」よりは「執念」「狂気」のほうがしっくり来るような気もしないでもない。
まっ、それはどれも紙一重だろうね。
どれもアブノーマルだから。^^
だけど、色はアルモドバルにしてはわりとノーマルな感じがしたんだよね。
蛍光色とかありえない色遣いの奇抜さがなかったと言うか。。。
内容的にはアブノーマルの極みなので
それぐらいの色合いのほうが丁度良いのかもしれないけどね。
内容で引っかかっちゃうと、あとの先が進まなくなりますね。それは仕方ないです。
エレナ・アナヤは魅力的でした。
チェックしてみて下さいね。
女性陣にはウケが良かったみたいですね(笑)
ボクとしては、娘を死に追いやったビセンテを性転換させ、妻の顔に似せ、
それで抱けるロベルの神経は異常だとしか感じられません。
ちょっと嫌悪感を抱きました
でも、エレナ・アナヤ、
魅惑的な女優さんですね~
へえー、cocoってtwitterの映画に関するつぶやきを纏めるサイトですよね。
試写会もあるんだ。今度チェックしてみます。
>セカのキャラや最終的な決着方法がもうひとつだった
何となくこっちの方面ですよーって誘導された感じだったから、そこで「え?」って思っちゃうと違和感あるかもしれませんね。
前半の流れに油断してたもんだから
あそこで受けた衝撃は相当なモノがありました(笑)
でも、セカのキャラや最終的な決着方法がもうひとつだったのよ^^;
下手に書けないっていうか。 書いたらいけないんじゃないかって思わせるだけでもすごいもんだよこれは。
本当にそうですよね。 あのままベラは順調に生きて行けるとは到底思えません。
そこら辺は観客が推定するとして、ストーリー自体も上手く騙してくれました。 満足です。
こういうラスト、大好きです。
「よかったね、よかったね」で終らせず、
さてこれからどうなるんだろう?って…。
映画は終わっても
実際には物語、いや人生は続いていくわけで、
もう、思わず拍手したくなっちゃいました。
なんていうか実に奥深かったですね。これ。
>ベラは錯覚に陥ったというより、計画的だったと思うんだけど
ノラネコさんのところで「ストックホルム症候群」の話があって、ああなるほどなと思いました。
一緒にいると親しみを感じてしまうようですが、ベラはそこから這い上がりましたね。
>映画祭で観て字幕もめちゃめちゃ
ラテンビートはそうだったんだね~。
今回の試写はあまりそれは感じなかったけど、ラテンビートと同じなのかな?
また観たら感想教えてね。
あの時ご覧になったヤツですね~
コレ本当に狂気と変態と執念が合わさっているのに、すごくハイソで高尚な雰囲気があるよね。
ベラは錯覚に陥ったというより、計画的だったと思うんだけどどうかな?
驚きですよねー!笑
でも大好き。
近年のアルモドバル作品のなかでもズバぬけて面白かったな♪
映画祭で観て字幕もめちゃめちゃだったし、公開したらまたちゃんと観たいの☆
私はこういうの好きです。 だって御見事なんだもん。 途中まですっかり騙されてましたよ私も(苦笑)
偉い~!(笑
私は諦めて全開ネタバレしちゃいましたから。
コメントの言葉すら慎重に選んでしまうけど、まあ自分の世界を持っている映画作家にしか作りえない作品でした。
観た人の評価も、良い悪いよりも好き嫌いになりそうです。