Chiro's Memo

My Sweet RoseとRosariumの更新記録です。

世紀末と猫族

2006-01-20 20:17:15 | 美術
フェルナン・クノップフ 愛撫

1891 50.5×150cm ブリュッセル ベルギー王立美術館



世紀末の象徴主義絵画では様々な象徴モティーフが使われていますが、
動物の象徴的モティーフとしてあげられるのが猫です。

「夜」に意味を見出した世紀末においては、
昼は寝ているが、夜になると目を爛々と輝かせ
闇の危険性を秘めている猫が好まれました。

また世紀末は「室内の時代」と呼ばれた時代で、
暖かい部屋の中に閉じこもったイメージのある猫がぴったりの時代でもありました。

世紀末に猫を描いた画家として有名なのが、スタンランです。
スタンランの猫のポスターやグッズは見たことがある方が多いと思います。

上の絵はモンマルトルにあったキャバレー「シャ・ノワール(黒猫)」のポスターです。
細身の体、爛々と光る大きな目、長いひげと尻尾など様式化された姿は
単なる「猫」ではなく、世紀末の精神を象徴する存在のように思えます。
このほかにもスタンランは猫を描いた作品を数多く手がけています。
それらは比較的写実的に描かれ、愛らしい姿を見せています。

パリにはキャバレー「シャ・ノワール」に多くの芸術家が集いましたが、
バルセロナにもこの時代「エルス・カトル・ガッツ(四匹の猫)」というキャバレーが
芸術家たちの集う場としてつくられました。
やがてこの「エルス・カトル・ガッツ」からピカソが巣立っていくこととなります。

また象徴モティーフとして猫を解釈すると
スフィンクス風の謎めいたものの象徴、
猫族的な遊戯衝動の象徴とされています。

ギリシア悲劇「オイディプス王」には旅人に謎をかけ、
謎の解けなかった人間を食い殺してしまうスフィンクスが登場します。
このスフィンクスは頭は女で、体はライオンです。
つまり女であると同時に猫族でもあるのです。
世紀末には多くのスフィンクスが描かれました。

今回のタイトル画像クノップフ「愛撫」では
身体が豹で、頭が女のスフィンクスが青年を抱擁しようとしていますが、
青年はその抱擁には答えていません。
このスフィンクスは誘惑の象徴であり、
青年は誘惑に動じない崇高な芸術の象徴です。

世紀末には甘美な接吻がのど笛への噛み付きに変わるかもしれないという
「魔性」と神秘性を兼ね備えた「宿命の女」のイメージと猫が重ね合わされました。

神秘的で気品ある猫の姿は大好きですが、
残念ながら我が家のさっちゃんはとても“famme fatale”のイメージには結びつきません。
どちらかというと「癒し系」(「いやしい系」かも・・・)です。

ここからはサイト更新の情報です。
久しぶりに「世紀末用語集」を追加しました。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
猫好きな画家 (oki@猫好き)
2006-01-22 12:42:39
どうもいろんな画家を見ていると猫の絵を描く画家が多いのに気づきます。

この前見た須田国太郎も猫の絵を描いていました。

犬の絵をよく描く画家というのはあまり思い出せません。

猫は屋内にいることが多いから描きやすいのかな。
猫とスフインクス (sekisindho)
2006-01-22 22:01:45
ここ数日のブログは圧倒的迫力がありますね。

とても読みごたえがあり、楽しませてもらいました。

猫とスフインクスと云えば、レオノール・フィニを思い出しますね。

マンディアルグの言葉を借りれば、「人間的なものが猫めいたものとすこぶる緊密な結びつきのかたちで混じ合う、<美わしき怪物>」がスフインクスだとか。
猫大好きです (千露)
2006-01-23 22:21:02
お返事が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。



>okiさん

「キャット・ギャラリー」や「ニャーンズ・コレクション」といった本で紹介されているように、猫を描いた絵画は非常に多いですね。

画面の片隅にさりげなく描かれていても、存在感を放っています。

犬の絵を好んで描いた画家もいるにはいるのですが、

猫のほうが多いようですね。

どちらかというと画家という職業は室内での作業が主になるので

家の中にいる猫のほうが身近なのかもしれません。



>sekisindho様

展覧会をあれこれ見てきたので、一気に感想をUPしました。

この「世紀末と猫族」は以前HPで公開していた文章に加筆したものです。

><美わしき怪物>

モローの描く妖しく残酷で美しいスフィンクスを見ていると本当にそう感じます。

猫族のしなやかさが女性を思わせ、“famme fatale”と猫が結びついたのでしょうね。