Chiro's Memo

My Sweet RoseとRosariumの更新記録です。

クリスマス・キャロル

2005-12-04 22:18:42 | 美術
現在My Sweet Roseのトップページを飾っている作品は
ロセッティ「クリスマス・キャロル」(今日のタイトル画像)です。

ヴィクトリア朝の人々は家族や友人が集うクリスマスに
人々との間に確乎とした絆のあった中世の生活を連想したそうです。
この作品でも中世とクリスマスが結び付けられています。

中世風の赤いドレスをまとった貴婦人が二人の侍女に髪を梳かれながら、
クラヴィコードという中世の鍵盤楽器を奏でています。
背後の棚にある王冠から彼女が高貴な身分の女性であることがわかります。
クラヴィコードの装飾画に「受胎告知」と「キリストの降誕」が描かれています。
画面の左右にある植物はクリスマスには欠かせない柊です。

私がこの作品を見ていて気づいたのは、
貴婦人の赤のドレスと侍女の緑のドレスがいわゆる「クリスマスカラー」だということです。
2002年に国立西洋美術館で開催された「ウィンスロップ・コレクション」展にも
この作品は出展されていましたが、
色彩の美しさが印象に残っている作品です。

貴婦人のモデルはロセッティの妻となるエリザベス・シダルです。
彼女はこの頃多くのロセッティの作品でモデルを務めています。
後年のジェインやファニーをモデルとした華やかな作品よりも
この頃のリジー(エリザベス・シダル)をモデルにした素朴な作品のほうが
どことなく味わい深いように思えます。

この頃(1857年頃)のロセッティは「青い小部屋」「七つの塔の調べ」といった
中世の女性が音楽を奏でる姿を幾度も描いています。
これは絵画の中に音楽的(詩的)な要素を盛り込むことで、
最高の芸術を生み出そうとしたものです。

19世紀英国の評論家ウォルター・ペイターは「すべての芸術は絶えず音楽の状態に憧れる」と述べ、
ドイツの哲学者ショーペンハウエルは音楽を「最も純粋な芸術」と呼び、
フランスの詩人ヴェルレーヌは自作の詩の冒頭に「何よりもまず音楽を」との一句を掲げました。
このように19世紀において「音楽」は最も純粋な形の芸術であると考えられ、
絵画の世界にまでその影響は及んだのです。


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5 コメント

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こんにちは (アイレ)
2005-12-05 00:49:17
ご無沙汰しております。

この絵は「ウィンスロップ・コレクション展」で見ることができましたが、小品ながらも色合いが美しく遠目からも目立つ絵でした。

ロセッティは水彩絵の具を何回も重ね塗りしたり、アラビアゴムなどを練りこむことによって独特の質感と光沢を持たせようとしたようですね。

初期の頃の水彩画は素朴な感じがしますが詩的な雰囲気が上手く出ている感じがします。私も大好きな絵です。
お久しぶりです (千露)
2005-12-05 23:27:59
>アイレ様

コメントどうもありがとうございます。

「ウィンスロップ・コレクション展」はどうしても見たかった展覧会で、ディズニーシーに友人と行ったときに無理を言って上野まで見に行ったのを覚えています。

ロセッティは「聖母マリアの少女時代」と「受胎告知」以外の初期作品はほとんど水彩で描いていますね。

油彩とは一味違う独特の質感が中世の夢物語を描くのにいい味を出していると思います。
Unknown (bleu)
2006-08-16 22:55:34
 先日、投稿させてもらいましたbleuです。早速ご返事頂いて、とても感激しています。身近にこうした話題を共有できる友人を持たない私にとって、千露さんのような方とお話できたことは幸せでもあり、寂しさを癒してくれました。



 情緒の不安定に悩む私は、感性と理性の狭間で暗闘する不様な獣にすぎません。「人間存在は根底において孤独である」とは正鵠を射た言葉だと思います。また、パスカルは人間を葦に譬えています。自分の存在を持て余す身にとって、美とは我れと我が悩みから解き放つ、驚異すべき現象です。しかしまた、時間のように移ろい易く、桜花のように果無い存在でもあります。

 私は生涯を美に捧げようと考えています。美を思索し抜くこと、これこそ私の宿命だと信じています。人間は葦のように弱い存在でありますが、思惟することによって万物に優っているというパスカルの言葉には汲めども尽きぬ深い味わいがあるように思います。



 音楽とは関係のないことを話してしまいました。また堰を切ったように流れ出したこれらの言葉を不審に思われるでしょう。私自身、読み返して見ると取りとめもないことを書いてしまったとあきれています。それでも理性の中にのみ真実があるわけではありません。こんな拙い言葉の中に、僅少でも真情が表れていることを願っています。
Unknown (千露)
2006-08-22 20:35:48
>bleu様

私のつたない内容のブログで、美についてこんなにも深い思索をしていただけたことに

恐縮すると同時に大変感謝しております。

私も身近には芸術について・美について語る友人は無いのですが、

ネット上で様々な方と交流できることを喜びに感じています。

またいつでもおいでくださいませ。お待ちしております。

Unknown (bleu)
2006-08-24 23:28:11
 先日は丁寧なコメントをどうもありがとうございました。突然あのような内容の投稿に、さぞ当惑されたかと思います。あまりに不躾であったと反省しております。



 千露さんのエッセイには私自身教えられることが多く、とても参考になります。世紀末美術はもちろんですが、個人的にはフェルメールの作品が取り上げられているのが嬉しかったりもします。



 世事に忙殺されることが多い生活の中で、精神を清浄に保つことは稀なことですが、遥かな記憶に想いを馳せるような心持の折には、美術について、また文学や音楽について語り合えることを楽しみにしております。それでは失礼いたします。