「1票の不平等」が最大2・06倍だった昨年10月の衆院選を「合憲」とする判決が相次いでいる。2倍もの格差を、司法が容認していいのか。憲法が求める「法の下の平等」により近付けるよう、警告を発し続けるべきだ。
昨年の衆院選の議員1人当たりの有権者数は、最少の鳥取1区に比べて最多の北海道3区は2・06倍だった。北海道3区の有権者が投じた1票は、鳥取1区の0・49票分にしかならない計算だ。
こうした格差があると、有権者から多数の支持を得た政党が、国会で少数派になる事態が起きかねない。民意を可能な限り正確に反映させる選挙制度でなければ、代表民主制は成り立たない。
昨年の衆院選は投票価値の平等を求める憲法に反するとして、二つの弁護士グループが選挙の無効を求めて全国8高裁・6支部に計16件の訴訟を起こした。
しかし、東京高裁などこれまで計6件の判決はすべて「合憲」だった。いずれも、格差是正を目指した近年の国会での選挙制度改革を評価している。
人口比を反映しやすい議席配分方法「アダムズ方式」の導入、都道府県に配分される小選挙区定数の「10増10減」と140選挙区での区割り変更などだ。10年ごとの国勢調査などに基づき、議席配分を見直す仕組みも整えられた。
しかし、都市部への人口移動は今後も続く見通しで、改革は一時しのぎに過ぎない。昨年の衆院選でも、区割り決定時には格差を2倍未満に抑えたものの、その後の人口移動などで選挙時には格差2倍超の選挙区は10区に上った。
この程度の改革では、2倍もの格差が常態化する恐れがある。
1972年に約5倍だった衆院選の1票の格差は、その後の約20年間で2倍台まで縮小できた。最高裁での「違憲」「違憲状態」判決を受けて国会が対応を重ねた結果だが、2・32倍となった96年以降の約30年間は、2倍前後で足踏みしている。最高裁が国会の弥縫(びほう)策を過大評価し、「合憲」を連発してきたからではないか。
高裁・支部の判決は3月に出そろい、早ければ年内にも最高裁の統一判断が出ることになる。
司法が2倍もの格差を容認してきた発想を転換して、有権者の投票価値を何よりも大切にしない限り、欧米で実現しているような高い次元の平等は望めまい。
*れいわ新選組のアップを素直に喜ぶ
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