自民、公明両党が2012年末に政権復帰してから国民のくらしはどう変わったのか。15日公示、27日投開票の衆院選では、安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」と、それを継承した菅義偉元首相、「新しい資本主義」を掲げた岸田文雄前首相の成果が問われる。約12年間の景気や暮らしの変化を経済指標などを基に検証した。(川田篤志、坂田奈央)
◆名目GDPは600兆円に達したが…
石破茂首相はアベノミクスについて「デフレではない状況をつくり、国内総生産(GDP)を高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながった」と評価する。その一方で「実質賃金が伸び悩むとともに、個人消費も力強さを欠いた」と負の側面も認める。
実際、各種指標は首相の分析を裏付ける。円安による輸出企業の好調な業績などを背景に、名目GDPは安倍政権が政策目標に掲げた600兆円に達した。日経平均株価は12年当時の3倍を大きく超え、有効求人倍率や失業率も改善した。
実質賃金 労働者が実際に受け取った給与(名目賃金)から、消費者物価指数に基づく物価変動の影響を差し引いた指数。実質賃金が減少すると、それまでと比べて購入可能な物品やサービスの量も減少するため、個人消費の動向にも影響する。厚生労働省が毎月勤労統計調査で公表している。今年5月の調査まで過去最長の26カ月連続マイナスだった。6月、7月はプラスに転じたが、8月の調査では3カ月ぶりのマイナスとなっている。
◆物価高などが家計への波及効果をかき消し
だが、非正規労働者の割合は4割弱でほぼ固定化。企業の内部留保は2倍近くに膨れ上がり、利益が賃上げや設備投資に十分回っていない。給料アップを上回る物価上昇の影響で実質賃金はマイナス傾向が続くほか、国民所得に占める税や社会保障負担の割合を示す国民負担率は5割弱に迫る。経済指標が改善しても、家計への波及効果を物価高などがかき消している。
自民は今回の衆院選公約で「新しい資本主義」で掲げた成長と分配の好循環を「さらに加速化する」と明記。成長分野に官民挙げて投資を行って「賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現を図る」(首相)とする。
◆立憲民主党は「分厚い中間層の復活」を提起
立憲民主党は「アベノミクスの負の遺産は格差を拡大させたこと」(野田佳彦代表)と批判し、公約で「分厚い中間層の復活」を掲げる。中低所得者向けに消費税を還付する「給付付き税額控除」導入を盛り込み、「家計・賃上げの支援」を前面に打ち出して自公政権との違いを鮮明にする。
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