傍流点景

余所見と隙間と偏りだらけの見聞禄です
(・・・今年も放置癖は治らないか?)

無難は美徳?

2007-02-27 | 戯言・四方山話・メモ
 実は一週間前に自宅PCに不具合が起こりまして、ようやく友人の助けで復活できた矢先。今年のアカデミー受賞結果を知ったのですが……んーー、やはり私はこと米国の映画賞関連とは、つくづくソリが合わないんだなあ。てなことを思いましたねえ。(日本アカデミーなんて論外なんで文句言う気にもならんのだが)
 勿論、現時点ではノミネート作すべては観てないし、日本公開待機作である『クイーン』『ラストキング・オブ・スコットランド』『バベル』は楽しみにしていますよ。
 でも今のとこ、受賞に合点がいくのは『ドリームガールズ』のエフィ@ジェニファー・ハドソンだけですねえ。『ドリーム~』については、後日改めて書きますが、彼女は貰って当然だよね。日本の菊池凛子がいかに素晴らしいか知らないが、誰であろうと現在最もアメリカン・ドリームを体現しているジェニファーに、あの全身ソウルフル&パワフルな存在感に太刀打ち出来るわけがなかろう。ということで、本当にジェニファーちゃん、おめでとう~~!!

 …なんですが。問題は監督&作品賞がスコセッシの『ディパーテッド』だということですわ。おそらく、相当数の彼のファンも同じ気持ちではなかろうか? だいたい、よりによって何故に受賞作がコレなのか?!
 ココで個人的なスコセッシ作品への思い入れれを語らせていただく。私は近年のスコセッシの映画で、最も評価されるべきだったのは『ギャング・オブ・ニューヨーク』だったと断言する者である。この作品について、特に日本では評価が低かったことは知っているし、確かに「気合が空回り」「金と時間がかかったわりにダルい内容」との評にも、多少理解しない部分がないでもない。 
 が! 知られざる創世記のアメリカ~ニューヨーク史をあぶり出し、血と暴力の歴史を愛蘭移民を中心に描かれるアンダーグラウンド史、そんな彼の“我が街NY”に対する渾身の魂と愛がこもった見事な映画だったと思うのだ。ラストで現代のNY(崩壊前のWTC)が映し出されるシーンなど、今観ても尚、胸と瞼に熱くせり上げるものがある。更にエンディングのU2のテーマ曲が追い討ちをかけるのだ。私はほぼ20年ぶりぐらいにU2の曲に感動し、映画の内容と相俟って初見のエンディング後しばらく席から立ち上がれなかったほどだった。
 ところが、その『GONY』はオスカーではノミネートに留まった。監督賞は、ポランスキーに譲っても、作品賞は…と思ったが、キャサリンに負けてしまった。(>単に私にとって『シカゴ』の見所がキャサリン・ゼタ・ジョーンズ姐御だけだった、という話です;;)

 そして『ディパーテッド』。ご存知、香港映画『インファナル・アフェア(無間道)』のリメイクである本作、確かに上手く出来ていた。本家と話も殆どのエピソードも同じながら、受ける印象は対極にある。乾ききった暴力描写と、たたみかけるロックのリズム。スコセッシの作品としては明らかに『グッドフェローズ』路線のギャング映画になっていた。こうなっては最早、オリジナルと比べてどうこう言うのも野暮というほど、完璧にスコセッシ印の仕事であった。映画の出来映えとしては確かに高レベルだとは思う。
 でもさー、コレは結局スコセッシにとっては単にヌカリのない職人仕事だよね。この程度(なんて言ったら失礼千万だが)の映画なら、彼の過去のスキルを使いまわせば済むんだもん。オリジナルを観てない米国人は素直に「面白い!」と思うだろうし、ましてや『グッド~』あたりのファンであれば「スコセッシis bak!!」と快哉を叫ぶのかもしれない。でもさ、要するに『ディパーテッド』は“無難”な映画なんだよね。そこに、スコセッシ自身の挑戦とか志なんて、殆ど入り込む余地なんて無い。

 そんな作品で御褒美貰ったって・・・少なくとも、ファンとしては喜べません。おめでとう、とも言えないや。まあ、どんな理由でも褒美は褒美として、ありがたく受け取るのがオトナって事でしょうから、圏外から騒音立てても仕方あるめえ。とも存じますが。
 スコセッシの次回作は遠藤周作原作『沈黙』だそうで、今回の受賞に複雑な思いを抱いたファンとしては気持ちを切り替えて、彼の新たなるステップに期待を賭けましょう。

 てなところで、久しぶりの愚痴終了(苦笑)。次回こそは超久々の映画感想文でお目見えしたいと思いまーす。

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2 コメント

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同感! (bossa)
2007-03-09 16:48:48
こんにちは!
TBさせていただきました。スコセッシ監督に対する気持ち、ほぼ同感です!
よく出来た映画ではあるけれど、監督賞はねえ…。
もし、これが新人監督ならわかるけど、天下のスコセッシですからねえ。
もうひとふんばりして、誰もが納得!の映画、撮ってもらいたいです。
コメント&TB多謝です (shito)
2007-03-09 21:33:29
bossaさん。一応、明日放送予定のBSで受賞時のスコセッシ&仲間たち(笑)の和気藹々ぶりは微笑ましく見たい、とは思ってますけど…ホントわかっちゃいたけどオスカーってアテにならないなあ~、ですよ。
でもスコセッシ、映画だけでなく音楽系の文化事業(?)への貢献など精力的に活動してますものね! 次回作は『沈黙』以外にも、ミック・ジャガー卿との仕事も控えているらしいですから、それも楽しみです。