傍流点景

余所見と隙間と偏りだらけの見聞禄です
(・・・今年も放置癖は治らないか?)

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秋の映画覚書~米国犯罪実録路線二本立

2006-11-15 | 映画【劇場公開】
◆『ブラック・ダリア』 ブライアン・デ・パルマ監督
 1940年代の米国。L.A.の空き地で1人の若い女の惨殺死体が発見される。胴体を真ッ二つにされ、内臓は抜き去られ、口は耳元まで裂かれていた死体の主は、エリザベス・シュート。ハリウッド女優を夢見ながらも、実際は娼婦のような生活を送っていたという彼女は、一体誰に殺されたのか。何故、こんな残酷な死体となって放置されたのか? ---この事件は、現在に至るまで迷宮入りだという。黒髪のエリザベスは、いつも黒いドレスを身に纏い“ブラック・ダリア”と呼ばれていた。そしてジェイムス・エルロイは、この事件をモチーフにした【ブラック・ダリア】というノワール小説を書き上げた。

 ---ということなのだが、私は今もってエルロイの原作は読んでいない。だがデ・パルマ監督のファン故に、私は本作を2回も観てしまった。が…残念ながらイマイチだなあ、という感想は変わらなかった。ううむ。デ・パルマ好きを公言したところで、所詮私など十両以下のお遊びレベル。とてもこの作品で「デ・パルマis ba~ck!」と狂喜するほどの愛は無かったみたい・・・嗚呼。

 以下、正直にコゴトを書くことにする。まず第一に、主役である2人の刑事の人物紹介、関係、その背景の描写に時間を割いた前半は、おそらく原作をそれなりに踏襲しているのだろうが、もうちょっと何とかならなかったのだろうか。これは映画全体に関して感じたのだが、いかにも“原作をがんばって纏めてみました”という作りなのだ。デ・パルマらしい長回し、ケレンの効いた演出は、後半からようやく調子を出してくるのだが(ウィリアム“ウィンスロー”フィンレイの出演場面からが本番)、どうにも本来の味を出してくれてるとは言い難いものがある。よく言えば、職人に徹した手堅い映画なんだけども、ニュアンス的には『アンタッチャブル』の系統で、はっきり言って私の好きなデ・パルマ映画ではなかった(デ・パルマ映画過ぎると世間で馬鹿にされるからだろうか? 前作『ファム・ファタール』みたいに;;)。
 次に、主演陣のキャスティングも微妙にハズしてる気がする。あんまりこういうことは口に出しちゃいかんと思ってるんだけど(苦笑)今回ばかりはスミマセン! 事件の被害者であるエリザベス@ミア・カーシュナーに入れ込む2人の刑事---リー@アーロン・エッカートにしろ、バッキー@ジョシュ・ハートネットにしろ、なんというか普段表面化しないにしろ、根底にあるだろう屈折感や暗い情念、それによって立ちのぼる歪んだ色気、みたいなもんがなくアッサリし過ぎてるのだ(おそらく彼らの属性が“スマート”で“育ちが良い”雰囲気だからかも)。加えて女優2人(スカーレット・ヨハンソン&ヒラリー・スワンク)も、かなり記号的な演技に終始しているように思えたし。(ヒラリー@マデリンの男装という部分のみ、彼女をキャスティングした効果はあるのだが…)  だから、もう少し旨いキャスティングしてくれてたら映画のレベルも上がったんじゃないかなあ、と思っちゃったんだなあ…(主演陣俳優ファンの皆さん、聞き流してくださいな。個人的趣味だから)。あ、そうそう。レズビアン・バーで唄うk.d.ラング、というサービス(?)は、オマケ程度には楽しめるけど…老けたなあ~k.d.ラング…。

 されど、この映画にも光はある。唯一文句なしに素晴らしかったのが、エリザベス@ミア・カーシュナーである。もしかしたら、彼女こそが本作を救っていると言っても過言ではないかもしれない。
 映画オリジナルだという【スクリーン・テスト・フィルム】のモノクロ・シーンで、淫靡に輝くエリザベスを見よ。カメラの外側から聞えるサディスティックな男の声(なんとデ・パルマ自身がやってるとか。やっぱりな~!)に応えて、怯えと媚の入り混じった視線でカメラを見つめる彼女の哀れさ。常に男に縋って、嘘で自分を塗り固めて、夢に喰いつくされてしまった女。無残な死体となったエリザベスの、そんな冥く儚い魅力が焼き付けられたモノクロ・フィルム---これらのシーンがあるからこそ、私は2度観ることが出来たとも言える。
 或いはこの物語=映画の場合、それで充分なのかもしれない。なぜなら残像でしかない、オブセッションの対象としての女~ブラック・ダリア=エリザベスの存在そのものが陰の主役であり、デ・パルマ・ワールド不変のテーマであるとも言えるだから。 (あら? 結局キレイにまとめちゃったのかしらアタシ…)


◆『カポーティ』 ベネット・ミラー監督
 本作は、1950年代末に米国カンザス州で起こった農場主一家殺人事件を取材したトルーマン・カポーティのノンフィクション・ノヴェル【冷血】についての、執筆秘話的な映画である。コチラは、ちゃんと【冷血】読んでおいて良かった~、という感じでしょうかね。(読んでなくてもわかる映画だと思うけども)

 この作品の場合、殆どカポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンの為の映画(苦笑)という印象だろうか。監督もホフマンの旧友で、本作がデビューとなるベネット・ミラー。実にソツのない正統派な映像で、演出がややノッペリとして緊張感に欠ける感じがあるので、正直途中眠くなるところもあったんだけど^^;; 良いんじゃないですか、という出来かな。ただ作品全体としてはフックに欠ける、ちょっとした違和感が残る映画だな…と個人的には思いましたが。
 この違和感はたぶん、主演俳優に起因する部分が大きいのかもしれない。何かね、可愛過ぎるんだよね、ホフマンのカポーティは。って私もカポーティの大ファンとかではないし、主にAウォーホール人脈として少し辿った程度なので、ちょっと間違った先入観とかあるかもしれない。けれど、カポーティは単に可愛い変人“おかまちゃん”ではなかったはずで、つまりそれはホフマンのカポーティにはイヤラシさを、“欲望”を感じられなかった、ということなのだ(事件の主犯であるペリー・スミスに対して、ということ。原作を読むと、余計そう思ってしまう。決して“同調”だけではなかったと思う)。
 勿論ホフマンが演技者として素晴らしいのは認めるし、個人的には決して嫌いではない。でも、肝心な部分を巧妙に避けた(或いは無意識に重視しなかったのか)役作りに思えてしまったのだ。

 それでも本作の面白さには、ホフマンを軸とした手堅い俳優陣によるところも多く、中でもカポーティの幼馴染にして親友である作家ハーパー・リー(【アラバマ物語】)@キャスリーン・キーナーが良くハマってたと思う。こんなお姉さんが欲しいって感じ。そして私的注目点だったのは、犯人であるペリー役のクリフトン・コリンズJr.なんだけど、彼もイメージ通りで見事! 言葉よりも多くを語る、彼の暗い瞳。知性と凶暴性と孤独を内包したペリーという男の、得体の知れない魅力が充分に感じられたと思う。クリス・クーパーは、まあいつも通り(苦笑)。ちょっともったいない。

 タイトルであった【冷血】とは、=ペリーというだけではなく、カンザスに代表される保守的な地域の人々のことでもあり、一方では事件を己の最高傑作となる格好のネタとして利用したカポーティ自身のことでもあった---ということが原作よりもわかりやすく描かれた、親切な映画でもありましたね。

 さて、こうなるとワーキング・タイトル製作によるもう一つの【冷血】秘話映画『Infamous』が、俄然楽しみになってくる。Showbisだったか、テレビでチラッと断片を観た限りでは、カポーティ役のトビー・ジョーンズの似ている度においては、既にハイレベルなそっくりさん状態(笑)。しかも、現ジェイムス・ボンドであるダニエル・クレイグがペリー役! のみならず、彼ら2人のキス・シーンまであるというのだから…期待ですぞコレは。

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2 コメント

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*お久しぶりです (ダーリン/Oh-Well)
2006-12-08 17:39:46
☆shitoさん、こんにちは。
一年ほど前の『キング・コング』以来久方ぶりにお邪魔します。

先ほど、本エントリーをスリリング^^に拝読させていただきました。この、デ・パルマの新作は、素朴にデ・パルマ好きの僕にとっても、一度の鑑賞では堪能したとは言い切れぬものがありました。勿論、今後も何度か観て行きたいですし、鑑賞を重ねてすっと入って来る部分も少なくないだろうとは思えています。

>唯一文句なしに素晴らしかったのが、エリザベス@ミア・カーシュナーである。
>もしかしたら、彼女こそが本作を救っていると言っても過言ではないかもしれない。…

のくだり、僕も同様に受け止めています!!

***

『カポーティ』は封切当初に鑑賞しました。丁寧に作られていたことに好感を持てましたし、鑑賞中はじわりと惹き込んでくれたように思い起こします。ただ、shitoさん仰るようにのっぺりとした印象なのが少々難点かなとは僕も感じました。

一方で、僕も矢張り“Infamous”は楽しみにしている一本。監督のダグラス・マクグラスはよく知らないのですが、アレン映画の脚本を書いたり、俳優キャリアもそこそこ有ったりと、良く言えば多彩な映画人の一人とも為りそうですね…。

キャスティングも一言では言い表せないような多彩さで…。主役のトビー・ジョーンズやペリー・スミス役のクレイグはもとより、イザベラ・ロッセリーニ、ジェフ・ダニエルズ、映画監督のピーター・ボグダノヴィッチの名に目を引かれています。

―それでは失礼を。
読んでくださってるかしら・・・^^;; (shito)
2006-12-11 23:29:01
ダーリンさん、亀どころかナメクジ並の遅いレスになり申し訳ございませんでした。このよーな放置&僻地ブログを覚えてくださってて尚お立ち寄り頂けたというのに・・・ましてや同じデ・パルマ好きとして面目ないですっ。
・・・と、クドい言い訳はこのへん致します。
私もダーリンさんの記事を拝読しました。うむ、仰る通り確かに、時間が経って鑑賞し直せば味わいも増すのかもしれません。今回私がこの映画にワクワク出来なかった最大の要因はキャスティングにある気がしてますし(苦笑)。デ・パルマのせいではない・・・かもです。
それでもやはり、一番輝いてたのはミア・カーシュナーですよね! デ・パルマ映画では、いつもさほど有名ではない女優が最も魅力的に撮られていると思います。実は最近『キャリー』を観直したのですが、あの作品でも勿論シシーの凄さに叶う人はいなくても、ナンシー・アレンは光ってましたからね・・・(あんな役なのに)。

もう一つの“冷血”『Infamous』は、新ジェームス・ボンドのおかげで(笑)人気ウナギのぼりのダニエル・クレイグがペリー役!!というだけで、確実に日本公開はしてくれるだろうし、私もいよいよ楽しみになってきました。
ハーパー・リー@サンドラ・ブロック、というところが若干?な感じもしますが、彼女はイメージより意外と上手い女優かも、とも思うのでカポーティ@トビー・ジョーンズとのコンビぶりにも注目ですね!

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