蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

思い込み  (bon)

2018-05-15 | 日々雑感、散策、旅行

  先日、会報の三重県総合博物館長、大野昭文氏の記事を読んでいましたら、「見落とし」
と「思い込み」というくだりがあり、ちょっと興味を惹かれました。

 見落とし‥というのは、「自転車に乗れるようになると、何も考えなくとも体が覚えて
いる状態になる」これを、「手続き記憶」というそうですが、このように、頭で考えない
まま判断してしまうことだそうです。 思い込み・・も、反射的にそうだと思ってしまう
ところがあり、似た思考過程にあるともいえるかもしれません。


 記事の中で、大野氏は、『一部が見えた時、輪郭を補い、全体像を想像して思い込む
ことで、私たちの祖先にとって極めて重要な生き残りのための知恵だったのです。』 と
言っています。 どういうことかといえば・・、

 太古の昔、ホモ・サピエンスの祖先は、サバンナの広がるアフリカで生まれたと考え
られ、彼らは、草原で、“藪の後ろに何かいる!” と気づいたとき、“隠れた部分の
輪郭を補って全体像を想像し、ライオンだ! と思い込んで逃げれば”生き残る確率は
高くなる・・。

 このようなことから、「思い込み」の知恵が備わってきたのではないかと述べられて
いました。

 しかし、「思い込み」には、このような知恵のほかに、人によっては、ある事象を深く
信じ込んで、他者がいくら説得してもその考えが変わらず、まったく共有できないことも
あります。 「思い込む」というのは、ある種不思議な現象のように思われましたので、
ネット調べをしてみました。  ウイキペディアにありました。

 イギリスの哲学者 フランシス・ベーコン(1561年ー1626年)が掲げた4つのイドラは、
抜きがたい錯覚や偏見という意味で、思い込みの一種であるとして 以下のように説明し
ています。 ここで、イドラとは、『イドラ(idola)とは、人間の先入的謬見(偏見、
先入観、誤りなど)を帰納法を用いて説いたもので、「偶像」「幻影」などと訳される。
ラテン語で偶像を意味し、英語のアイドル(idol)の語源でもある』とあります。

       フランシス・ベーコン
        
(ウイキペディアより)


 で、4つのイドラとは・・

 1、種族のイドラ(自然性質によるイドラ)…「その根拠を人間性そのものに、人間
という種族または類そのものにもっている」イドラとしたもので、人間の感覚における
錯覚や人間の本性にもとづく偏見のことであり、人類一般に共通してある誤りである。
例としては、水平線・地平線上の太陽は大きく見えることや 暗い場所では別のものに
見誤ることなどがあげられる。

 2、洞窟のイドラ(個人経験によるイドラ)…「各人に固有の特殊な本性によること
もあり、自分のうけた教育と他人との交わりによることもある」イドラとしたもので、
狭い洞窟の中から世界を見ているかのような、各個人がもつ誤りのことである。 それ
ぞれの個人の性癖、習慣、教育や狭い経験などによって ものの見方がゆがめられること
を指し、「井の中の蛙(かわず)」はその典型である。

 3、市場のイドラ(伝聞によるイドラ)…「人類相互の接触と交際」から生ずるイド
ラとしたもので、言葉が思考に及ぼす影響から生じる偏見のことである。 社会生活や
他者との交わりから生じ、言葉の不正確ないし不適当な規定や使用によって引き起こさ
れる偏見を指し、噂などはこれに含まれる。

 4、劇場のイドラ(権威によるイドラ)…「哲学のさまざまな学説から、そしてまた
証明のまちがった法則から人びとの心に入ってきた」イドラとしたもので、思想家たち
の思想や学説によって生じた誤り、ないし、権威や伝統を無批判に信じることから生じ
る偏見のことである。 思想家たちの舞台の上のドラマに眩惑され、事実を見誤って
しまうこと。中世において圧倒的な権威であったカトリック教会が唱えてきた天動説的
な宇宙観は、コペルニクス、ガリレイらによる天文学上の諸発見によって覆された。

 

 そして、ベーコンは『人間の知性は、これらのイドラによって人は一旦こうだと思い
こむと、すべてのことを、それに合致するように つくりあげてしまう性向をもつと考え
た。こうした思い込みは、たとえその考えに反する事例が多くあらわれても、それらを
無視ないし軽視しがちである。したがって、この4つのイドラを取り除いて初めて、人は
真理にたどり着け、本来の姿を取り戻すことができる』と説いたとあります。

     錯視の例(婦人と老婆)
       
(ネット画像より)

 

 また、「思い込み」は、頑固であるまたは邪推深い、猜疑心旺盛さらには精神障害
などと、悪い意味で使われることが多いですが、目標達成の原動力にもなるという側面
もあるとあり たとえば、周囲には無理だと言われながら スポーツ選手がプロデビュー
を果たしたり、無謀と言われながら選挙への立候補を重ねて、ついに当選し、政治家
デビューを果たすなど、往々にして思い込みが功を奏する場合もあるとしています。

 

 沈む夕日が大きく見える、イドラは、特段の悪さもしないし、どうってこともありま
せんが、噂などのイドラ(市場)やある一つの自然現象から“そうだ”と思い込んで
しまうイドラ(洞窟)などは気を付けたいものだと改めて思いました。

 

 

 

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ナイチンゲール  (bon) | トップ | 免疫力  (bon) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日々雑感、散策、旅行」カテゴリの最新記事