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スクロヴァチェフスキ&読響 ブルックナー:交響曲第7番ほか(10/16) @サントリーホール

2010-10-19 | コンサートの感想
相変わらず多忙を極める毎日です。
その間、愛する虎はついに冬眠から醒めなかったし、私にとって正直グッドニュースが少ない中、先週末にサントリーホールで聴いたブルックナーは数少ない感動的な出来事だった。

<日時>2010年10月16日(土) 18:00開演
<会場>サントリーホール
<曲目>
■シューベルト/交響曲第7番 〈未完成〉
■ブルックナー/交響曲第7番
<演奏>
■スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮
■読売日本交響楽団

前半は「未完成」。
いつになく読響の音色が美しい。
聴きなれている東京芸術劇場ではなく、サントリーホールということもあるのだろうか。
とくに弦楽器の美しさは、今まで聴いた中でも出色だった。
音量の変化という点では、むしろ控え目。
しかし、すべてのピースがぴたりと填まったときのジグソーパズルのような爽快感が、何とも言えず心地よい。
詩情豊かなシューベルトに、体の芯に残っていた疲れが解き放たれていくような気がした。

後半は、いよいよお目当てのブルックナー。
春に聴いた8番があまりに素晴らしかったので、「夢よもう一度」ではないが、聴く前からいささか興奮気味の私。
マエストロが登場し、例によって明快なアウフタクトから弦楽器のトレモロが静かに始まる。
そして、あの美しい第1主題が優しくそして伸びやかに奏でられる。
続く最初のクライマックスで、早くも鳥肌がたつ。
弦のみならず、この日は木管の表情もまさに魅惑的だ。
大きなうねりを伴いながら、美しく舞い続けるオケの素晴らしいサウンドに酔いしれているうちに、あっという間に第一楽章が終わった。

ブルックナーの7番といえば、数年前に聴いたパーヴォ・ヤルヴィ&フランクフルト響の演奏が、今もって印象に残っているが、この日の第1楽章を聴きながら、ひょっとしたらヤルヴィたちの演奏を超えるかもしれないという予感がする。
そして、その予感は第2楽章アダージョで、まさしく現実のものとなった。
「神々しい」という言葉は、まさにこのような演奏にこそ相応しい。
息の長いクレッシェンドを果てしなく繰り返しながら、圧倒的なクライマックスを構築してみせるマエストロ。
クライマックスでシンバルの一撃があった後、2度登場するファンファーレのような音型が、強烈なインパクトをもって聴き手に迫る。
ワーグナー追悼のコーダでは、不覚にも涙がこぼれてきた。
いま思いだしても、ため息が出そうだ。
また、この日の読響も最高の演奏でマエストロに応えていたと思う。
この第2楽章が終わった直後のオケのメンバーの幸せそうな顔が、何よりの証左だろう。

類まれな見通しのよさと、音の隅々にまで注がれた深い愛情。
そして、深い淵を覗き込むときのような緊張感を味わわせた後に導かれる雄大なクライマックス。
これぞブルックナー。これでこそブルックナーだ。
もう言葉はない。
この大きな感動から比べたら、第三楽章冒頭でトランペットが少々トチッたくらいは、本当に些細なことだ。
大袈裟な言い方ではなく、スクロヴァチェフスキのブルックナーは、現在聴ける最高のブルックナーのひとつではないだろうか。
スクロヴァさん、そして読響のみなさん、本当にありがとう。

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2 コメント

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客演でしょうか? (ご~けん)
2010-10-20 23:52:29
放映されると良いですね。常任ラストのドキュメンタリ番組は見ました。
2005年の同曲に接し、感動したことを思い出しました。友人のブルックナー愛好家も涙していた名演でした。そのTV放映も録画しています。心ないブラボーもうまく消していました。いつまでも印象に残る名演、名コンビだと思います。
>ご~けんさま (romani)
2010-10-21 23:33:33
こんばんは。
コメントとTB、いつも本当にありがとうございます。
感無量の素晴らしいブルックナーでした。きっと厳しいリハーサルを重ねてきたのだと思いますが(フィナーレの冒頭の主題の扱いを聴いただけでも、それを強く感じました)、生まれてくる音楽は何とも自然でかつ見通しがいいんです。

2005年のときの演奏は、私もテレビ放送でみましたが、これまた大変な名演でしたよね。
今回もノーランがコンマスで、管楽器のトップ達も2005年のときとまったく同じでした。
違いといえば、チェロとヴィオラの位置が入れ替わっていたことくらいでしょうか。ソロチェロの毛利さんや、退団されたティンパニの菅原さんらの顔が見れなかったのは、やはり寂しかったですが・・・

録音はマイクのセッティングを含めてしっかりされていたので、CD化されるかもしれませんね。
ただ、テレビカメラが入っていなかったので、残念ながら放映はされないと思います。

ただ、本文には書かなかったのですが、春に比べてマエストロが少し老けたように感じられたので、それだけが心配です。
体を大切にして、いつまでも素晴らしい音楽を聴かせてほしいと、心から願っています。

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