ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

Ryo ’s Bar 15th ( 室内楽コンサート )

2007-10-15 | コンサートの感想
昨日は、ブログでお世話になっているemiさまが参加されている、Ryo's Barという室内楽コンサートを聴きに行きました。
Ryo's Bar は、安藤亮・貴子ご夫妻が中心になって作られた室内楽シリーズ。
「本格的な室内楽を、出演者と聴衆が一緒に楽しむ」ことをテーマに、1997年から始められたそうで、私が聴かせてもらうのは昨年に続いて2回目になります。

<日時>2007年10月14日(日)19:30~
<会場>目黒パーシモンホール(小ホール)
<曲目>
■ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番 変ホ長調 op.127
■ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 op.8
<演奏>
■安藤亮(チェロ)
■安藤貴子(ヴァイオリン)
■伊藤恵美(ピアノ)
■栗原祐子(ヴァイオリン)
■丸谷眞世(ヴィオラ)


目黒パーシモンホールへ行くのは初めてでしたが、この小ホールは約200名を収容できるそうで、室内楽には手頃の大きさですね。
客席の階段を歩くと予想外に大きな音がして驚きましたが、多目的ホールということなのでやむを得ないでしょう。(そういえば、ラ・フォル・ジュルネでおなじみの東京国際フォーラムもこんな感じでした。)

この日のプログラムは、前半がベートーヴェン、後半がブラームスというオール・ドイツプロ。
まず前半のベートーヴェンは、弦楽四重奏曲第12番でした。
後期の弦楽四重奏曲の中でも、13番と並んで私が大好きな曲です。
この曲の持つ古典的な雰囲気が、よく伝わってきました。
また、第3楽章スケルツォのトリオが活き活きとしていて、良かったなぁ。

休憩を挟んで後半は、ブラームスのピアノ三重奏曲第1番。
ブラームスの室内楽で、およそ不出来なものはないんじゃないでしょうか。
中でもこのピアノトリオの第1番は、私にとって「特別の音楽」。
第1楽章冒頭で、瑞々しい情感を湛えたピアノに導かれてチェロが歌いだすと、それだけで私は胸がいっぱいになります。
この日の演奏も、まさにそんな気持ちにさせてくれました。
まぎれもないブラームス!
時間を忘れて、最後まで聴き入ってしまいました。

第1楽章では、ヴァイオリンとチェロがユニゾンで歌いながら、ピアノがハーモニーを豊かにしリズムに変化をつける箇所が多く出てきますが、そのあたりがとても上手くいっていたように思いました。
第2楽章では、中間部の伸びやかな歌がとくに印象に残っています。聴きながら私は第2交響曲の旋律を思い出していました。
第3楽章は、冒頭からemiさんのピアノを中心に聴いていると、「これはベートーヴェン?」という気がしてきます。後期のピアノソナタのようでもあるし、同じく後期の弦楽四重奏における緩徐楽章の香りも漂ってきます。
しかし、チェロが旋律を朗々と歌いだすと、そこはやはりブラームス。
やはり、この曲は名曲です。

ただ、この曲は、曲の美しさに夢中になって「綺麗に弾こう」とすると、一番美味しいところが逃げていくように思います。
安藤さんご夫妻とemiさんのトリオは、緊張感を持ちつつ、一方で「この曲が大好きだ」という深い愛情を持って、この名品に取り組んでおられたのではないでしょうか。
お世辞抜きに、素晴らしいブラームスを聴かせていただきました。

次回は、がらっと雰囲気を変えて、フランスものはいかがでしょうか。
たとえば、ラヴェルのピアノトリオとか・・・。

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6 コメント

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一番おいしいところ (emi)
2007-10-16 00:02:07
romaniさま


休日の夜、しかも阪神戦の最中の^^;演奏会にいらしてくださって 本当にありがとうございます。

私にはまだ本物のブラームスが何なのかわかりませんで、ピアノパートはそんな私が今の段階で弾ける、表現できるもの、でしかなかったと思います。
でも全体として「ブラームス」に近かったとしたら チェリストの解釈と弦の演奏によるものだと思います。彼らにははっきりとした輪郭がありました。そして私もそこに目標を定めることができました。
romaniさんが褒めて下さり、素直に嬉しく思います。
今年もこのように素敵なブログに記してくださってありがとうございました。

この曲のromaniさんのおっしゃる「いちばん美味しいところ」とは何なのか?
≪若さ?≫?
これを考え出すとまた不眠に悩まされそうです・・(笑) 
冒頭の美しい旋律には郷愁、を感じ コンブリオ という表示がなかなか理解できませんでした。難しかった!
いろんな演奏があると思います。そしてひとりひとりのブラームスがあるのだと・・・・。
それを探すために・・・・がんばります。貴重な感想をありがとうございました。

そして、なんだかわくわくするようなCDをいただきました。
来週 一段落したらゆっくりじっくり聴かせていただきます。ライナーノート、とても分かり易く 中味を聴かなくともどんな演奏なのか想像がついてしまいました・・・。
(笑)素晴らしいです。ほんとうにありがとうございました。


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>emiさま (romani)
2007-10-17 00:31:51
こんばんは。

素敵なコンサートでしたよ。

少しばかり禅問答のような書き方になってしまいましたが、言いたかったのは次のようなことなんです。
随分前になりますが、私がブラームスのピアノトリオ第1番の冒頭を最初に聴いたとき、美しく歌い上げるヴァイオリンとチェロに比べて、少しばかりピアノの強奏がきつ過ぎるなと感じました。
しかし、何回も聴くうちに、この曲は「憧れ」と「葛藤」でできているんだと考えるようになりました。
ピアノのきつく感じたフォルテはまさに「葛藤」そのもの。つまり強い「憧れ」を感じながら、一方で思うようにならない苛立ちのようなものが入り混じった感情、それこそが「葛藤」ではないかと・・・。

このふたつの感情が両立しないと、やっぱりブラームスにならない。
そう考えたときに、弦の豊かさの隣で葛藤するピアノがないといけないし、逆のケースももちろんあり。
いずれにしても、単に綺麗な旋律を美しく歌い上げるだけでは、ブラームスが言いたかったことの半分しか伝わらないと思うのです。

その意味で、あの日のemiさんのピアノは素晴らしかった。激しさも優しさも感じられました。
本当の意味で、他の誰の作品でもない「ブラームスのトリオ」だったと思ったのです。

なかなかうまく書けなくて、ごめんなさい。

P.S
18日は素晴らしいコンサートになるよう、お祈りしております。
それから、我が愛するトラちゃんは残念でした。
来年は、ライオンとトラで日本一を争いましょう。
返信する
いちばんおいしいところ (emi)
2007-10-17 11:51:23
こんにちは。

度々すみません。お返事ありがとうございました。
よーくわかりました。
「美しさ」と「強さ」の共存。
おっしゃる通りです。
それがブラームスの聴き手にとって「おいしいところ」でこの曲のピアノの「難しいところ」です。
その難しさと葛藤している自分がそのまま出たのでしょうか?(笑)

作品8なのに 後に加筆されているところもこの曲のやっかいなところです。
日程が悪く私の知り合いはromaniさんにしか聴いていただけなかったのですが、誰よりもromaniさんに聴いていただけて本当によかったです。
ありがとうございました。m( )m
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>emiさま (romani)
2007-10-18 23:47:04
こんばんは。

ブラームスの音楽は、「文句なしに美しいけど、どこか煮え切らないなぁ。」と思った時期もありましたが、それこそが彼の音楽の魅力の源泉だと気がついたのは、比較的最近のことなんです。
根源的には、クララさまさまかもしれません。(笑)

それにしても、ブラームスの室内楽はいつ聴いても本当に素晴らしいです。
クラリネットが入った作品はどれも名作だし、弦楽5重奏や弦楽6重奏も、他の作曲家の作品とは一味違う刻印が押してあるように思います。
それから、emiさまに紹介いただいたヘッツェルの「ヴァイオリンソナタ」は、今でも私のコレクションのなかでもスペシャルなスペースに鎮座しています。

秋の夜長は、誰が何と言おうと、やはりブラームスを聴きたい!
そう思っています。
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他県での講演 (kenji)
2008-12-19 11:15:19
私は、現在沖縄県に転勤しました。こちらでの演奏をお願いすることはできないものでしょうか?
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>kenjiさま (romani)
2008-12-21 22:56:51
こんばんは。

沖縄のコンサート事情はよくわからないのですが、東京とはかなり違うのでしょうね。
(尤も、東京が世界的にみても恵まれすぎているのかもしれません)

安藤亮さんが主宰されているこのシリーズ、「生の室内楽を、できるだけ多くの方に聴いてほしい」という願いで始まったと聞いています。
私も、まだ2回しか聴いたことがありませんが、そのメッセージは十分伝わってきました。
安藤さんとは直接面識があるわけではありませんが、kenjiさまの気持ちをお伝えしてみようと思います。
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