からだの内なる統合を求めて…

ロルフィング施術者日記
by『ロルフィング岡山』
http://www.rolfingjoy.com

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

大腰筋でウォーキング(2)足裏の目

2009-02-03 | 大腰筋
前回の続き、大腰筋システムの末端部分、足の動きについて取り上げます。

「大腰筋は伸びることで活性化します。」

大腰筋は図のように、腹部の脊柱に沿って走行する筋肉です。腹部では胸椎12番とすべての腰椎から起こり、大腿の内側(大腿骨小転子)に付着しています。


      


そこで、脚を体の真下でちょこちょこ動かしても、このような大腰筋を十分使っていることにはなりません。歩く時に大腰筋を十分活用するには、離陸の際につま先がすぐ離れずに、体の後方へ伸びていくことがとても大切です。


         

実際にやってみると、つま先の親指側で離陸した時に、腹部脊柱前面~脚~足がつながって良く伸びるのがわかります。反対に、つま先の小指側で離陸すると、大腰筋とのつながりをあまり感じないでしょう。

平坦な場所を歩く場合は、親指が後ろへ伸びるように離陸すると、大腰筋システムが活性化します。(ただし、斜面を登る場合には、より下方向へ伸びる必要があるので、急な階段などでは、つま先が伸びる余裕が少なくなり、より足裏全体で伸びる感じになります。)

足の親指は、大腰筋システムを通して腹につながっています。文明開化期に来日した西洋人が、当時の日本人の立つ姿勢の素晴らしさに驚嘆する文章を残していますが(斎藤孝著「身体感覚を取り戻す」NHKブックス、参照)、現代の日本人よりも昔の人の方が中心軸が定まり、姿勢が安定していたであろう言われています。これは、履物の変化などによって、足の親指を使わなくなり、腹の力が失われたことも、姿勢が不安定になった原因の1つなのではないかと推測します。

また長年に渡って、生物の進化過程を尊重するような子供の保育を実践している斎藤公子さんが、言語能力の発達の遅れなどが見られる幼児にハイハイをさせると、足の親指が床から離れてしまうので、親指が床に着くように補助しながらハイハイをさせ始めたところ、発達の遅れが回復していったと述べています(「子育て・織りなした錦」かもがわ出版)。足の親指を使い始めると心身の発達のスイッチが入るということは、足の親指が大腰筋システムのスイッチを入れ、そこから生じたラインが心身を統合するというロルフィングの考え方とぴったり一致します。


さて次は、足が着地する場合について考えてみます。それには、足の構造を観察してみましょう。足の骨は、図のような2階建ての構造をしています。


 


1階にあたる踵の大きな骨(踵骨)は、小指側2本の指につながっています。これが足底の外側のアーチ(外側縦足弓)を形成します。その上の2階の骨(距骨)は、脛の2本の骨にはさまれて足首の関節を構成し、親指側3本の指につながっています。これは内側のアーチ(内側縦足弓)を形成します。ちょうど、脛に連絡する2階のアーチが、1階のアーチの上に載るように位置しています。

2足歩行する人間だけが、このような足のアーチを持っています。ゴリラやチンパンジーにはありません。ゴリラやチンパンジーは、手の拳も使って歩くので、完全な2足歩行ではありません。

また、4本足で速く走る犬や猫、馬や牛などでは、後ろ足が離陸用、前足が着地用に分化しています。足裏全体ではなく、小さなつま先だけが地面に着くようになり、離陸時の後ろ足の「蹴り」が、骨盤を通じてダイレクトに背骨に伝わります。
これに対して前足側では、鎖骨が退化し、肩甲骨が胴体に筋肉だけでゆるくつながっているので、着地のショックが伝わりにくい仕組みになっています。しかし、人間は左右1組の足のみで、ショックを受け止め、地面を蹴らなければなりません。
そこで、強靭な靭帯でつながった足底のアーチが、バネのような効果を発揮して、着地のショックを吸収し、それを離陸するエネルギーに変換します。

歩く時には、この重要な構造が生かされなければなりません。

ロルフィングを創始したアイダ・ロルフ博士は、アーチ構造を生かしてふわりと着地することを推奨し、踵で打つように着地することをヒール・ストライクと呼んで敬遠しました。踵からの着地を奨励するウォーキング法がありますが、それは踵が転がるように、重さが滑らかにアーチに移行することを意味しているのだと理解しています。しかし、踵での着地を強調しすぎると、足を前へ前へと振り出すことになります。すると、より大腿四頭筋が働いて股関節が伸びにくくなり、大腰筋の邪魔をしてしまいます。

行進するように、足や膝を持ち上げようとすることも同様です。最近、大腰筋を活性化するために、武道の「すり足」を取り入れている例がありますが、着地で膝を安定させるための大腿四頭筋が、離陸時に働いてしまうことを抑えるという点では納得ができます。

前に進む時には、足を前ではなく、後ろへ後ろへ(斜面を登る場合は、下へ下へ)腹から伸ばすようにすると、大腰筋システムが活性化します。
後方で地面から離れた足は、伸びようとするもう一方の足の反動で、ただ振り子のように前に戻り着地します。この時、無駄な力が抜けていれば、どこが先に着地したのかわからないくらい、アーチ全体でフワリと地面を受け止めるでしょう。

フワリと広がったアーチの上に、上体の重みが加わる時、着地の度に足裏のある部分が開く感覚が起こります。この部分をロルフィングでは「足の目」(eye of foot)と呼んでいます。





足の目は、脛の骨(脛骨)から伝わった加重がかかる、2つのアーチの頂点の位置にあります。足関節への加重が正常であれば(軸がずれている場合には、股関節、脚、足首周囲の組織への施術を行います)、2つのアーチの頂点に重さが加わることで、足裏側の足の目がわずかに開く感覚があるでしょう。

足の目が開くこと、それは足へのラインが開通することでもあります。立った時には、ここから重力のラインが地面へと抜けていきます。

このように大腰筋システムが活性化すると、頭頂部へと抜けるライン(体を統合する力のベクトル)の基礎が出来上がります。このラインを感じ始めると、ゆっくり歩くことは、じっと座っていることよりも楽になり、歩けば体が整っていくことが実感できるでしょう。

次回は大腰筋システムの上部に位置する、横隔膜について取り上げます。

コメント   この記事についてブログを書く
« 大腰筋でウォーキング(1)... | トップ | 横隔膜の上と下 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

大腰筋」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事