2020年、バルセロナで豆腐屋を営んでいた著者・清水建宇は、豆腐パックを積んだ貨物が税関で止められてしまう。理由は、EUの「食品用プラスチック」に対する規制の強化。輸入するのもごとに必要な検査をし、その結果を記した書類を提出しなければならないのだ。しかし、税関が求めている書類のひな型をみて、頭を抱えることとなる――。
11月、平沢さんから、EUの新しい食品用プラスチックの規制内容と、税関が求めている書類のひな形が送られてきた。書類のひな形は、わざわざWORD文書に変換して書き込めるようにしてくれていた。
この書類を見て、思わずうなってしまった。まず、溶出量が規制値を超えていないかどうかを検査する24種の金属が列記されている。
(1)カドミウム、(2)鉛、(3)アルミニウム、(4)アンモニウム、(5)アンチモン、(6)ヒ素、(7)バリウム、(8)カルシウム、(9)クロム、(10)コバルト、(11)銅、(12)ユウロピウム、(13)ガドリニウム、(14)鉄、(15)リチウム、(16)マグネシウム、(17)水銀、(18)ニッケル、(19)カリウム、(20)ナトリウム、(21)テルビウム、(22)ランタン、(23)マンガン、(24)亜鉛
聞いたことのない名前がいくつもあった。プラスチックの原材料となるテレフタル酸とエチレングリコールが、いくつかの条件のもとでどのくらい溶出するかについても検査結果を求めていた。さらにプロピレンなど5種類の添加剤、原材料などについても記入する欄があった。
● 60年以上前に定めた基準を 日本は使い続けていた
豆腐パックのメーカーに検査結果を送ってくれるよう、代理店である泰喜物産の落合利治さんを通して頼んだ。落合さんは開業時に駆け付けてくれた豆腐づくりの先生である。
落合さんから届いた「分析試験成績書」は日本食品分析センターという財団法人が作成したもので、カドミウムと鉛の2種類しか検査しておらず、結果欄には「適」とだけ記載されていた。
溶出試験は(1)ヘプタン、(2)エタノール、(3)水、(4)酢酸の4種類について数値が書かれていたが、欧州連合が求めている樹脂の原材料や添加剤など7種類の化学物質はどれも検査対象になっていなかった。
成績書の欄外に小さな文字で記された「注」を見て、びっくりした。「規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の合成樹脂製の器具または容器包装」と書かれている。昭和34年は1959年だ。なんと61年も前に定められた基準がそのまま使われているのだ。最初の東京オリンピックより、さらに5年前である。「厚生省」も昔の名前であり、労働省と統合して「厚生労働省」となってから、もう20年も経っている。
食品用プラスチック容器に対する日本の規制は、欧州とはあまりにも違いすぎる。60年前の規制は、のちに化学物質がいくつか加えられたが、基本は同じままで、まだ日本で通用している。
2002年には食品のリスクを調べる独立組織として「欧州食品安全機関」を設立し、加盟する28ヵ国の専門家が集まって検査方法や対象物質の研究を続けた。2011年には規制する金属や化学物質を定めた総合的な施行規則をまとめ、2020年には改訂版を発表して、検査する金属の範囲を広げ、検査方法も厳格化した。
● 技術の進歩に合わせた法改正が 日本はなかなか進まない
欧州の規制では、プラスチック容器に実際に食べ物を入れ、有害物質がどのくらい食品に移行するかを重視している。その検査では酸やアルコールに触れた場合や、さまざまな温度での移行量を調べるが、新しい規制では脂肪分が多い食品を電子レンジで調理した場合を想定し、最高175℃で検査する項目もつくった。
JETROの報告書は、欧州の規則は体系的・論理的につくられているために中国や豪州、湾岸諸国が採用し、いまや世界標準的な存在になったと言えると評価している。
では、日本の規制はどうなっているか。報告書は、昭和34(1959)年の「厚生省告示第370号」に基づいて説明しているが、「技術の進歩に合わせた法改正を永年しないために、使用実態との乖離があるのが現状である」と解説している。60年前の規制が現実とかけ離れたものであることは、だれでもわかる。
この課題について、国と産業界が約10年間、検討を進め、2020年6月、ようやく改正食品衛生法が施行された。しかし、検査する物質、検査方法などの具体的な事項は向こう数年かけて完成させることになりそうだという。
日本は欧米に比べて大きく出遅れたうえ、追いつこうとする作業さえものろのろと遅い歩みで、このままではさらに引き離されてしまう。
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上↑↑ 日本と言う国がどういう国であるのか 本当によく分かるよなあ 石破くんww
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