(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

読書/年の瀬のご挨拶と「今年の5冊」

2007-12-31 | 時評
0読書日記<年末ご挨拶>

  ”年の瀬や朝の光に第九聴く”
 
早朝の車のラジオから第九が聞こえてきた。自宅に戻るとFMで懐かしいシャルル・ミュンシュがボストン交響楽団を振った第九が流れていた。1958年の演奏だが、清新・白熱の気がある。ソプラノは、レオンタイン・プライス。でも第九は、1950年に復活なったバイロイト祝祭劇場でフルトヴェングラーが指揮した演奏にとどめをさす。雄大かつ鬼気迫る演である。うねりが次第に高まってゆき、最後に爆発する歓喜の歌は録音の古さなど気にもならぬ。

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  このブログ「(新)緑陰漫筆」も無事に一周年を迎えることができました。これもひとえいつもお立ち寄りいただき、コメントをお寄せ頂いているみな様のお陰と、あつく御礼申し上げます。

さて(今年の5冊)今年手にした本は、およそ120冊余。そのなかで、最も印象に残った本を挙げてみます。もとより、”半歩遅れの読書術”、いや二歩も三歩もおくれた読書なので出版の新しさとは無関係。勝手に手にした本の中でのセレクションであります。


(1)『与謝蕪村の小さな世界』(芳賀徹 中央公論社 1986年4月)

 『詩歌の森へ』など、私の好きな本をたくさん書いている著者が、プリンストン大学にいたころ日本文化史研究の一環として蕪村全集(潁原退蔵篇)を読み、それがこの本を書く端緒となった。蕪村の俳句、詩文はもちろんのこと、18世紀日本の文化史的  背景も含めて、蕪村の世界を追った名著である。短夜の美しい世界、桃源郷の世界  、それも西欧の詩文との対比で論じる。比較文化史研究ともいえる文章そのものが詩的世界に遊ぶようである。この初版本は、私にとっての宝物である。

(2)『おっとりと論じよう』(丸谷才一 文芸春秋2005年11月)

 丸谷才一対談集と題されたこの本で、丸谷は詩人の岡野弘彦、大岡信、作家の山崎正和、井上ひろし、鳥居民、中村勘三郎などと対談した。テーマも、「桜うた千年」、「夏目漱石と明治の精神」、「言葉は国の運命」などなど。いずれも美や詩の世界に遊んだり、読書の事が語られたり、また激動の昭和史を語ったりで、おおいに刺激もあって興味を惹かれる。鳥居民の『昭和二十年』もこの対談のお陰で知った。

(3)『微光の道』(辻邦生 新潮社 2001年4月)

  辻邦生の最後十年間に綴られたエッセイ集。「自作の周辺」では、あの大作『西行花伝』などについて語る。「風のトンネル」は、『手紙、栞を添えて』の一節だ。今読み返しても心が揺さぶられる。後半の「読書」のところでは、読みたくなるような本が、読みたくなるような文章で紹介されている。嬉しいことに山本周五郎のことまで出てくるのだ。夫人の辻佐保子さんが書いている、後書「字を書く手」も愛情に溢れたいい文章である。
   

(4)『漱石先生お久しぶりです』(半藤一利 平凡社 2003年2月)
    『漱石という生き方』(秋山豊 トランスビュー 2006年5月)

 著書の半藤一利が、どうしてこんなに楽しく、懐かしく漱石のことを書くのかと思っていたら、それもそのはず、奥さんの母上が漱石の娘の筆子さんだ。漱石やその周辺のエピソードを綴ったものだが、とても面白い。そして漱石や子規の生き方に共感を覚える。

 もうひとつの秋山の本は、漱石の著作を通して彼の心の変遷を追ったものである。漱石が考えたこと、表現しようとしたことの理解につながって、とても興味深い。

(5)『深追い』(横山秀夫 新潮文庫 2006年5月)
    『臨場』(横山秀夫 光文社文庫 2007年)

 警察小説という新しいジャンルを本格的にきりひらいた横山の短編集。ある警察署に勤務する7人の男の人生を変えた事件を描く「深追い」、検死のプロが犯罪の真相を現場検証から暴きだす『臨場』  どちらも人間ドラマとして興味を覚える。手応えのある秀作だ。

   
この他『性分でんねん』(田辺聖子 ちくま文庫2007年1月 第11刷)も)や『最後の日本人ー朝河貫一の生涯』(阿部善雄 岩波書店)『運河沿いのフェルメールの家』(イングリット・メラー エディション 1992年2月)なども楽しい、あるいは興味深い著書として印象に残った。
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2 コメント

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年始のご挨拶 (ハミングバード)
2008-01-06 10:41:01
ゆらぎ様

明けましておめでとうございます。
昨年は色々勉強させていただき、有難うございました。今年も面白くて刺激になる御本のご紹介を期待しています。

実は、年の瀬に「今年の5冊」についてを拝見していて、大変興味があったのですが、超忙しの時故、書き込みが出来ずにいました。そして、すっかり忘れていましたが、年の改まった今、再読して、ご紹介の御本のうち、『おっとりと論じよう』(丸谷才一 文芸春秋2005年11月)、と 『微光の道』(辻邦生 新潮社 2001年4月)を読んでみたいと思いました。 いつも興味ある御本の指南役を有難うございます。

それにしても夏目漱石という文豪は大変幸せな方ですね。後世、近親者も含めて、こんなに色々な人に親しみを込めて語られる文人は珍しいと思います。 比べるのはよくないですが、森鴎外先生とは全然カラーが違うのでしょうね。

浅学の私でございますが、本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

いつもありがとうございます (ゆらぎ)
2008-01-07 16:14:30
ハミングバード様
 丁重なご挨拶、痛み入ります。いつもお目通しいただき、こちらこそ有り難く思っております。本年も引き続き、よろしくお願い申し上げます。

ご紹介した5冊は、好みにもよりますが、読書好きな方には、おすすめです。今年も新年そうそうから良書と巡り会っています。順次ご紹介いたします。

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