ヒロヒコの "My Treasure Box"

宅録、DAW、ギター、プログレ、ビートルズ、映画音楽など趣味の四方山話

好きな映画「シェルブールの雨傘」

2012年09月14日 | 映画
 私は映画が好きである。そこで、今まで見た中で一番印象に残っている映画は何かと思う。子どもの頃見たゴジラ・シリーズは忘れられないし、銀座のシネラマの180度大画面で見た「2001年宇宙の旅」も衝撃的だった。「未知との遭遇」もラストシーンの感動を求めてリバイバル上映の度に映画館に足を運んだ。しかし、もしひとつだけ選ぶとすれば、それは「シェルブールの雨傘」である。

 監督ジャック・ドゥミ、音楽ミシェル・ルグラン、主演カトリーヌ・ドヌーブ。なぜこの映画が好きなのか。(1)ルグランの音楽が素晴らしい。(彼は私が敬愛する3大作曲家の一人である。)キャッチーなメロディともの悲しさが同居し、ジャズ的なアレンジも盛り込んだ楽曲の数々が魅力的。主題歌はI Will Wait For You というタイトルでスタンダードナンバーになっているが、私は Watch What happens として有名な一曲が大好き。名曲だ。(2)セリフがすべて歌。普通のミュージカルとは違い、例えば”Oui.”(ウィ=はい)という一言にもメロディがつく完全な歌劇。その歌と演技が見事にシンクロしており画面から目を離すことができない。(実は歌は演じている俳優と別人物が担当しているということは後から知った。)(3)何も言わずひたすら待つだけの女性マドレーヌがともて魅力的。(4)劇中の家具などの原色系色合いがとてもフランスらしくポップ。私はフランス大好き人間であるが、実際に現地の大型店でみた家具の色合いが派手で、それを思い出させる。
 (5)(※以下、未見の方は結末について触れるので要注意)物語が悲しい。特にラストは涙なしでは見られない。恋人達が戦争のため結ばれず、それぞれの幸せを見つけ別々の人生を送る。偶然の再開においてもお互いを思いやる一言を交わすだけであらためてそれぞれの人生に立ち戻っていく。しかしなぜ、それぞれの子供の名前が二人で決めたフランソワなのか。実はお互いの思いは断ち切れていないのだ、そんなことを感じさせるあのラストシーンはとても哀しく、実際私は、美しい主題曲がコーラスと共に再現されるこのシーンで毎回涙してしまう。ハッピーエンドで終わることの多いアメリカ映画とは違ったフランスならではの余韻…。

 なかなか言葉では言い尽くせないが、以上がこの映画の魅力である。私は子供の頃、テレビで放映しているこの作品を何気なく見て、やがて目を離せなくなり涙ながらに見終わったという記憶がある。それがこの作品との出会いであった。余談だが、1964年のカンヌ映画祭でパルム・ドール賞を受賞しているので、本国フランスでもさぞ有名だろうと思っていたが、フランス人の知り合いに聞いたら、彼は知らないと言っていた…。
 
 さて、この映画が大好きなので、サントラのCDやアナログ盤をいくつか購入したが、09年リリースのデジタル・リマスター版DVDが目下のところお気に入りとなっている。(実際にはその後ブルーレイ盤も出たようだが購入には至っていない。)その頃、札幌の映画館でこのデジタル・リマスター版での映画が公開され、ぜひスクリーンで見たかったのだが、遠方に住んでいたため果たせなかった。だからこのDVDの発売は大変うれしく思ったものだ。

 ついでに、同じ監督作品で、やはりルグランが音楽を担当したかの有名な「ロシュフォールの恋人」もリマスター版DVDを同時購入し、初めて見た。こちらも名曲が何曲もちりばめられ、ジャズ的なアレンジが多いのでルグランの本領が発揮されていると感じた。物語自体にはあまり魅力を感じなかったが、オープニングのハリウッド・ミュージカル風な踊りのシーンや、カフェで働いている女の子がとてもキュートなのが印象的であった。