老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「永世中立国」スイスに於ける「軍隊廃止」是否議論

2018-09-15 17:18:28 | 安全・外交
厚顔さんが、「日米安保条約はこれからの日本の安全保障たり得るか」の記事の中で、「日米安保条約」に代わるこれからの日本の安全保障政策として「永世中立」という選択肢があり得るのではないかという提起をされています。

「永世中立」と言われて私たちが最初に想起するのはスイスですが、そのスイスで実際に行われた「スイス軍廃止」の是否に関する「国民発議」の議論が中々興味深いので、紹介させていただきます。
(情報は「国民投票の総て」(今井一さん編著)を参照しました。)

ご承知のように、スイスは第二次世界大戦勃発と同時に「武装中立」を宣言し、今も「国民皆兵・武装中立」を国是としています。(「良心的兵役拒否」は認められている。)

一方、世界情勢が変化し、東西冷戦が終わる1980年代後半には、「軍隊なきスイスを目指すグループ(GSoA)」が、「もはやスイスはどこかの国と交戦する可能性はなく、軍隊を廃止すべきだ」として1989年に「スイス連邦軍の廃止」の「国民発議」を議会に提出。結果は、投票率69.18%、(軍隊廃止に)賛成35.59%、(廃止に)反対64.41%でした。

その後、EUが発足し、加盟国が増えて欧州同士の交戦の可能性がほぼなくなったと思われる流れの中で、「軍隊なきスイス」という市民グループが、2001年に再び「軍隊廃止」の改憲を発議。この時は、投票率は37.93%と低迷し、廃止賛成票は22%弱に止まりました。

結果は結果として、ここで注目したいのは、「国民投票」に向けた市民グループGSoAと連邦評議会の言い分です。(「国民投票」では、賛否両派の言い分、投票結果によって法律や制度がどう変わるかの説明の解説書が届けられるが、解説書の中では当該案件についての連邦評議会の立場(このケースでは、「この発議に同意しない」)を明記しています。)

1989年の例では、GSoAは
『ヨーロッパでひとたび大きな戦争が起これば、スイスが生き延びることはありえない。戦争の勝者も存在しない。「軍事的防衛」によって我々はすべてを失う。
連邦憲法に定められた国家目的(平和、自由、自主独立)への努力は今後も続けるべきである。しかし、軍隊は平時にはこの目的を推進することはなく、有事にはこれを守らない。現実はその反対で、軍隊は有事に守ろうとするものを、平時に破壊しようとする。
我々の時代の課題は、国家間紛争解決のパターンとして定着している戦争を克服することである。スイスもまた全世界的な軍備縮小に貢献しなければならない。
スイスは軍事的にはもう誰からも脅かされない。私たちの暮らしの本当の脅威は、自国内にあるか、地球規模かのどちらかである。これに対しては、軍隊は無力である。』

と「軍隊廃止」の論拠を述べ、

『我々は、重くのしかかる幻影に負けて戦争を肯定することをやめ、戦争回避に全力を注ぐべきである。軍隊を廃止することによってのみ、スイスは平和政策の可能性を最大限に利用することができる。
「軍隊なきスイス」は毎年、環境保全の拡充、国内や第三世界における貧困等の戦いのために、何千フランかの支援を得ている。包括的な平和政策は世界の可能な限りの多くの地域で、可能な限りの多くの人々に生きる機会を与える。本発議によって、GSoAは連帯感のあるスイスの構築に寄与したい。』
と結論付けています。

これに対し、連邦議会は、
「軍拡競争は続いており依然として脅威は存在する」「武装中立によってヨーロッパの安定に寄与し、他国の利益に貢献している」「純然たる防衛軍であり、軍隊の存在は「牽制作用」として、戦争防止に役立っている」「軍隊は、災害その他の非常事態の救助活動、国際会議での警護、安全保障、世界中の平和維持活動に貢献している」などの理由から、「軍隊は我が国の独立を守り、安定性を維持し、ヨーロッパ内の平和を促進することにつながる」として、GSoAの発議に「NO」とすることを有権者に勧めています。

「国民投票」の結果は先に述べた通りですが、夫々の論拠は日本を取り巻く状況にも重なるものがあります。私たちは、直面する「9条改憲」の賛否選択や「日米安保条約」からの脱却の可能性を考える上でも、スイスの議論から学び、「嘘」や「煽り」ぬきの、論理的で冷静な議論を重ね、判断することを、真剣に考えたいと思います。

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
笹井明子
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2 コメント

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軍ではなくて警察だけで十分な条件 (竹内春一)
2018-09-15 21:11:09
明治維新ころまでは、日本人が皆殺しされる危険があった。そのために強力な軍隊を作ったが、逆にそのために周辺諸国は日本人に皆殺しにされるのではないかと恐れた。その間違った考えを正すのが、戦後の平和外交であって、アジアの経済発展を助けた。軍事予算を増加、消費税の上昇は民を困窮させ、日本経済が落ち込むのは当然である。それを承知で政治を行っているのだから、地震、風水害が起きても、見て見ぬふりで、何かをやっているフリだけする。人口減少にも対策なしである。日本人は目で考える民族である。頭で考える民族との交流が望ましい。
Unknown (Unknown)
2018-09-20 11:50:45
徴兵制の是非を問う国民投票が実施された(2013年)
結果は有権者の73%という圧倒的多数が徴兵制の廃止に反対し、26州すべてで廃止反対派が勝利。今後も一部の職業軍人ではなく、国民全体で国防を担うとの意思が示された。
国民投票を呼び掛けた平和団体「軍隊なきスイスを目指す会」も、この結果を予想していたようだ。「軍隊はスイス人のアイデンティティーの一部。事実より(感情が)勝るものだ」と、広報担当者は語っている。(ニューズウィーク)

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