老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

米核戦略の見直し

2018-02-16 21:04:42 | 安全・外交
米トランプ政権は、2月2日核体制(NPR)の見直しを発表した。見直しの骨子は、以下の通り。

・核使用は,核以外の戦略的攻撃を受けた場合も含む
・核の先制不使用政策を否定
・世界は大国間の競争に回帰
・中国、ロシア、北朝鮮、イランの脅威指摘
・低爆発力の小型核の導入
・海洋発射型の核巡航ミサイルを研究開発

この発表について、河野外務大臣は「同盟国への抑止力拡大を明確にした」として「高く評価する」と述べた。核兵器の小型化は、日本を防衛してくれる重要な戦略変更だと認識したのであろう。

河野外務大臣の変節ぶりには慣れっこになっているが、今回の核兵器小型化や先制使用も辞さず戦略を【高く評価】する発言には、過去の彼の発言から考えれば、変節漢というだけではなく、人間としての信頼さえも失ってしまったと思う。

同時に、この厳しい国際環境下で外交を展開しなければならない外務大臣としての資質や世界認識すらも疑うのは私だけではないだろう。

◎第一の理由

河野外務大臣は、米国の小型核爆弾が日本を守るためだけに使用されると考えているのだろうか。そうだとしたら、とんだお目出たい人間だと言わざるを得ない。

ジャーナリスト田中良紹は以下のように述べる。
・・・「同盟国を守る」ために核兵器を使うことが自国の安全に寄与するなら「同盟国は守られる」が、逆にそれが自国の安全を危うくするなら「同盟国は切り捨て」られる。「同盟」とは自国の利益を守るための協力関係であり、同盟国と運命を共にすることではない。」・・・
「米国の核が日本を狙う可能性を考えない愚かさ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakayoshitsugu/20180204-00081260/
2/4(日) 田中良紹

わたしも、このような冷徹な認識が外交には必要だと考えている。「自国の安全を脅かすようなら、同盟国でも切り捨てる」という米国のありようを示す格好の証拠を提示しよう。

・・・「報復関税、同盟国にも=日本も対象の可能性―米大統領 2/13(火)
【ワシントン時事】トランプ米大統領は12日、日本や中国などに対する貿易赤字に不満を示し、同盟国であっても「報復関税」を課す意向を表明した。
詳細は明らかにしていないが、ホワイトハウスでの会合で「数カ月以内に分かるだろう」と語った。年間7兆円超の対米黒字を抱える日本も対象となる可能性がある。
トランプ氏は「他国が(米国産品に)膨大な関税や税を課す一方で、われわれが(外国品から)何も徴収できていない状況は許せない」と主張。また「われわれは中国と日本、韓国など、多くの国に対して巨額の損を被った」と訴え、政策変更により「(日中韓などは)少し厳しい状況になる」と語った。」・・・
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180213-00000035-jij-n_ame

これが超大国である米国という国家の発想。これと同様な認識で小型核兵器の使用問題を考えられたらどうなるか。国家の運命を司る外務大臣が上記のような認識で大丈夫なのか。想像力のあまりの貧困さにぞっとする。

自国の利益のためだったら、日本に対して小型核兵器を使用することも躊躇しないのが米国という国だ、という乾いた認識を持つことが外交官としてのイロハだろう。

(※ 太平洋戦争末期、広島・長崎の原爆投下が米国の勝利のために本当に必要だったのか。誰がどう見ても、アメリカの勝利は時間の問題だった。原爆投下は必要なかった。それでも投下したのは、原爆の威力を確認したかったから。それが証拠に、被爆後の資料の大半は米軍が持ち帰った。米国という国家の本質が原爆投下に象徴的に示されている。そこからのみ、米国という国家の本質が読み解かれる。外務大臣ならこの程度の冷徹な歴史認識で対処してほしいものである。)

◎第二の理由

米国は、小型核の開発理由に、中国・ロシアなどの脅威を挙げている。つまり、小型核を使用する国家として、中国・ロシア・イラン・北朝鮮などを想定している。しかも、相手が核攻撃をしないでも、核による先制攻撃を行う、という「先制攻撃論」も併せて主張している。これでは、名指しされた国家が自国も「小型核兵器」の開発をしないはずがない。ここから止めどない軍拡競争が始まるに違いない。

しかも、核使用のハードルが事実上ないに等しい状況になる。と言う事は、従来、語られてきた【核】による「抑止論」が事実上崩壊する。これで、世界の緊張が高まらないはずがない。核時計も残り2分になった。世界の国々がこの決定を強く批判しているのも当然である。

ところが、河野大臣は、世界がこのような状況に陥るのを高く評価するという。世界で唯一の被爆体験国の外務大臣の言辞とも思えない。被爆体験国のみが持ちうる道徳的・倫理的優越性をかなぐり捨てるというのである。覇権国家でもなく、軍事国家でもない日本が、世界に堂々と発信できる最大の外交的優位性(道徳的・倫理的優位性)を放棄しようというのだから、正気なのか、と疑わざるを得ない。

これは世界各国の共通認識だろう。これでは、日本の国際社会における地位は低下する一方。「核廃絶」という世界の国々の悲願における唯一の被爆国としての信頼性も地に墜ちた。日本の孤立は避けようがない。

さらに救いようがないのは、米国自身がこのような無制限な軍拡競争に耐えられる経済的優位性にない。この事は、きわめて重大な意味を持つ。経済的優位性がなくても、軍事的優位性を強調しようというのだから、無理がある。そうなると、同盟国にさらなる経済的負担や軍事的負担を要求してくるのは火を見るより明らかである。現在でさえ、役に立たない型遅れの武器を馬鹿高い値段で買わされている。それに加えて、さらなる軍事費負担を要求されるのである。

◎米国の戦略転換の理由

この問題を考えることは、現在の世界をどう読むか、という問題と同義である。

【覇権の問題】でも指摘してきたが、米国の「一極支配」が終焉を告げ、ロシア・中国などの「多極支配」が現実化している。その中で、わずかでも軍事的アドバンテイジを取ろうというのが、米国の戦略転換の最大の理由であろう。世界が、覇権国家の衰退と新たな覇権国家の台頭の間(※わたしはこれを転形期と呼んでいる)の混沌とした時代に突入した証左でもある。

やくざ世界が典型的だが、ボスの交代時期には、様々な問題が起きる。(山口組の分裂騒ぎが典型。)世界の政治状況も同様で、「覇権の交代」時には、戦争など様々な問題が起きる。特に、支配の座から滑り落ちる「旧覇権国家」の悪あがきが最も危険である。

米国の「小型核兵器の開発」や「先制攻撃論」もその文脈で捉えなければならない。日本では、北朝鮮危機であまり論じられていないが、ヨーロッパにおける米国・NATOの対ロシア戦争危機は、北朝鮮危機など比較にならないほど深刻である。

Paul Craig Robertsは、「米国の核戦略見直し」(マスコミに載らない海外記事)の中で今回の見直しをネオコンの所業だと指摘。以下のように書いている。

・・・「今日発表された攻撃的なアメリカ核戦略はトランプ大統領のせいにされている。ところが、文書はネオコンの産物だ。おそらく、トランプは文書公表を阻止できただろうが、彼がプーチンと共謀して、アメリカ大統領選挙で、ヒラリーに不正に勝ったという非難で圧力をかけられており、トランプにはネオコン化したペンタゴンに敵対する余裕はない。

ネオコンは陰謀を企む連中の小集団だ。大半がイスラエルと連携しているシオニスト・ユダヤ人だ。中には二重国籍者もいる。アメリカ外交政策の主目標は、アメリカ単独行動主義に対する制限として機能しうる、いかなる大国の勃興を阻止することだと規定するアメリカ世界覇権というイデオロギーを連中は生み出した。

ネオコンがアメリカ外交政策を支配しており、それがアメリカのロシアと中国に対する敵意と、中東で、イスラエルが、イスラエル拡大の障害と見なす政府を排除するのに、ネオコンがアメリカ軍を利用していることの説明になる。

アメリカはイスラエルのために、中東で、二十年間戦争を続けている。この事実が、狂ったネオコンの権力と影響力の証明だ。ネオコンのように狂った連中が、ロシアや中国に対して核攻撃を仕掛けるだろうことは確実だ。」・・・
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/

彼は、以前からネオコンの危険性について、口を酸っぱくして警告している。彼は、ネオコンの本質について以下のように書いている。

・・・「ネオコンのような教条主義者は事実を基本にしていない。連中は世界覇権という夢を追っている。ロシアと中国はこの覇権の邪魔なのだ。16年間たっても、アメリカ“超大国”がアフガニスタンで数千人の軽武装タリバンを打ち破ることができないアメリカの通常軍事力の限界を学んだのだ。

ネオコンは対ロシアや対中国の通常武力侵略がアメリカ軍の完敗になるのを知っている。それゆえネオコンは核兵器をネオコンの世界覇権の夢で、ロシアと中国を破壊するために使える先制攻撃用に使用可能な武器に格上げしたのだ。

事実から絶縁した教条主義者は自分たちのためにバーチャル世界を作り出す。連中のイデオロギー信仰で、自身や他の人々に連中が押しつけている危険が見えなくなっている。」・・・

Paul Craig Robertsの指摘するネオコンの特徴は、安倍首相を始めとする日本会議などの右派の論理形成とそっくりである。「事実から絶縁した教条主義者は自分たちのためにバーチャル世界を作り出す。」は、安倍政権の政治そのものである。

アベノミクスを始めとして安倍政権が次々と打ち出す目くらましの政策課題。今回、「働き方改革」で基礎となる数値のインチキ性が暴露されて、答弁の取り消しに追い込まれている。実は、この数値の改ざん疑惑は、安倍政権発足当時から指摘されていた。経済統計数値の取り方を変えて、以前の統計より良く見せる。統計としては決してやってはならない手法を行っている。

アベノミクスを成功していると偽装するために、日銀や年基金機構がGPIF株価介入を行い、株価高値維持を行っている。安倍政権の政策が成功しているという幻影(バーチャル世界)を維持するために、日本国や日本人が営々と積み重ねてきた国富を浪費し続けている。

この国富の中には、お金や社会資本だけではなく、日本人が大切にしてきた「公平さ」「平等を尊重する」「他者への配慮」や「弱者へのいたわりの視線」や「嘘をつかない」「自らの行為に対する責任」「お金のためだけでない、自らの仕事に対する誇りと駄目な仕事を恥じる感覚」「見苦しい言い訳に対する恥の感覚」等々、日本人が培ってきた社会的倫理観、道徳観がある。

安倍政権下で力を得た右派勢力は、この日本人が一番大切にしてきた日本人としての【社会的倫理観・道徳観】を破壊しつつある。それを率先垂範して行っているのが、安倍晋三という「嘘と言い訳の塊」のような男の存在である。この状況を【魚は頭から腐る】という。

Paul Craig Robertsのいう「ネオコンの狂気」は、何も米国だけの専売特許ではない。日本の安倍政権の「狂気」も同様である。Paul Craig Robertsは、この「狂気」に「世界の滅び」を予感している。

今、わたしたちが、最も警戒しなければならないのは、北朝鮮でもなければ、中国でもロシアでもない。米国という国家である。米国がネオコン流の「狂気」に支配され、核戦争(世界の滅亡)の引鉄を引きかねない点である。

河野太郎外務大臣はじめ安倍政権の危険さは、このネオコンの【狂気】を【狂気】と感じない感性であり、理性と知性が決定的に欠落した【詐欺的政策運営】にある。

安倍政権の存続は、確実に日本の滅びを早めるだろう。

「護憲+BBS」「 メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2018-02-17 10:14:55
広島長崎への原爆投下を謝罪する米国人は数%だと思われる。経済的富の90%が1%の富裕層に締められる。強者が勝って当然な国である。日本もその影響か、富が企業、公務員など富裕層に集中している。弱者は生きる価値が否定される。日本では小学生のうちから、私は結婚しない、子供を作らないと決めている子供が増えている。日本の将来はどうなるのか。安倍、河野に聞いてもわからない。小学生が実は日本の将来を知っている。

米朝戦争は起こりにくい (竹内春一)
2018-02-17 21:14:58
米朝戦争は必然ではない。
東ローマ帝国が陥落した時に、東ローマ皇帝の亡骸は不明になったと思う。朝鮮王朝のトップが日韓併合時、行方不明になったようなものである。西側の中東諸国への爆撃と焦土化には、そのような心理的なバックグラウンドがあった。しかし、米国には北朝鮮を焦土にする、歴史的因縁というか理由はまったくない。日本、韓国、中国の経済が崩壊する恐れもある。そのようなリスクを犯す人はいたとしても僅かでしょう。

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