老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

ラグビー競技の精神と多様性を見習え

2019-01-03 17:41:01 | 社会問題
現在、大学ラグビー選手権と高校ラグビー選手権が戦われている。近鉄花園ラグビー場での高校ラグビー、秩父宮での大学ラグビーを観戦するのが、わたしの年末年始の年中行事。

特に、今年の高校ラグビーは、各校のレベルが格段に向上していて、見ごたえがある。理由の一つは、科学的合理的トレーニング方式の導入により、選手のフィットネスの各段の向上がある。もう一つは、日本で2019年のワールドカップが行われるため、選手強化が進んでいるためであろう。

日本では、ラグビー競技は、今一つ人気がない。その理由の一つに、ラグビーが肉体的にきわめてハードな競技である点とルールが結構難しくて理解できない点がある。それとラグビーの日本代表メンバーに、生粋の日本人が少ない点が挙げられる。その為、国民のナショナリズムをあまり掻き立てない点にある。

日本人が好きなのは、かっての早明戦。体の大きな明治フォワードがスクラムで押し立てる。体の小さな早稲田フォワードがゴール前で必死に耐える。一瞬のスキを見つけて早稲田バックスが走り、トライを取る。

“柔よく剛を制す” “小が大を制す” これに日本人は熱狂する。だから、身体のでかい外国からの帰化選手に今一つ熱狂できない。ナショナリズムがいまいち燃え上がらない理由。

しかし、近年、他のスポーツでも、混血の選手が大活躍している。陸上のケンブリッジ・飛鳥、サニブラウン、卓球の張本、バスケのオコエ、テニスの大坂など枚挙に暇がない。

その意味でも、スポーツの世界は、これからの日本の社会を先取りしている。その中でも、ラグビーは最も先進的で、最もラディカルな「多様性」を実践している。

例えば、現在の日本代表。36人の代表選手中、日本国籍を取得した選手を含め、16人が外国生まれないし混血の選手。
https://www.jsports.co.jp/rugby/japanese_player/
これからの日本が直面する社会のありようを先取りしている。

入管法改悪の最大の問題点は、政治家や経営者、官僚たちの感性が、ラグビー界などよりはるかに遅れている事を全く自覚していないという点にある。
日本のエリート集団が、如何に【国際性】を喪失しているか、という問題である。

例えば、一時、南アフリカの選手が多数来日した。彼らが日本を選んだ理由は、治安が良くて、日本での生活が安心できる、というのが一番だった。南アフリカでは、高給取りであるラグビー選手は、家族の安全を守るためにどれだけ気を使っているか、という問題である。

日本の会社は、彼らの宿舎、家族の生活に至るまで丁寧に面倒を見た。その為、多少収入が悪くても日本でプレーする事を選択したのである。(NZやオーストラリア、南アフリカ、英国、フランスなどはラグビー先進国。日本は後進国。プロとしての収入は、先進国がはるかに良い。プレーのレベルも日本は劣る)

つまり、日本で働こうと考える選手には、先進国で働いて得られる収入より安い収入でも働こうというインセンティブが必要。これを日本を選択してもらうために考えなければならない。

入管法の最大の問題点は、このインセンティブを提供しなくてもよい仕組みになっている事にある。ターゲットがアジア諸国だからそれで良い、と考えている姿勢がありありと見える。この差別意識が、最大の問題点。

給料は安い。インセンティブもない。これで日本が選択されると考えている政府や経済界、官僚連中の国際感覚の無さは度し難い。彼らは世界が狭くなっている事に気づいていない。今回の入管法の改悪の問題点の情報は一瞬にして世界中を駆け巡っている。

さらに度し難いのは、自らの根拠のないエリート意識、そこから生まれる差別意識、差別意識から生み出される人権感覚の薄さ、それが国際性の欠落につながっている、という自覚の無さ。

それに比べると、ラグビー界の国際感覚は素晴らしい。昨年亡くなった神戸製鋼の平尾GMなどは、20年以上前からラグビーの国際化を推進していた。

「多様性こそラグビー文化」。4年前のワールドカップで活躍した五郎丸選手の言葉。こういう先進性こそ、日本ラグビーが世界的強豪国に肩を並べられる国として進化した最大の要因である。

さらにラグビーという競技は、正統的保守主義(漸進的民主主義。安倍自民党のいう保守主義とは全く違う)思想を見事に体現している。

少し、ルールに即して説明する。

★ラグビーは、ボールを前に投げてはいけない。
この場合の選択肢⇒ ①自分で運ぶ②キックで前に運ぶ(キックの場合は前に蹴る事を許されている)③後ろの味方にパスする

① ②の場合は、敵にボールを奪われる危険性が高い。⇒ラグビーの防御は、タックルという強烈な方法が許されており、自分だけでボールを運ぼうとすると、奪われる危険性が非常に高い。キックする場合は、敵陣に蹴りこむことになるので、ほとんどのボールを敵に奪われる。⇒そのため、③の方法を選択する場合が多い。⇒後ろの味方にパスする。

※このルールの思想的意味⇒進歩(前に進む)とは、後ろ向きに進むことである。⇒前進するためには、いったん後退する必要がある。⇒過去の検証なくして、進歩はない。
⇒この考え方は、イギリス人の国や社会に対する考え方と一致する。

●「ドイツ人は、考えてから走り出す。フランス人は、走ってから考える。イギリス人は、歩きながら考える。」この比喩は、欧州を代表する国家である英独仏の考え方の相違を見事に言い当てている。

★ラグビーボールの特殊性⇒楕円形のボールでどう転ぶか分からない。不確定要素が多い球技⇒この不確定要素に対応する技術と瞬時の判断力と個人の創意工夫が求められる。
⇒個人のアドリブが重要になる

★ラグビーは15人の選手が必要
ラグビーのような激しい肉弾戦を伴う競技では、怪我は日常茶飯事。15人だけではチームは組めない。最低でも20人から25人の選手が必要。しかも、不確定要素が多く、個人の判断と創意工夫が必要な競技だからこそ、チームとしての理念、戦略、戦術が重要になる。それを実践する選手の理解度、それを具現化する技術の練度、90分間戦い続けるフィットネスが重要になる。だからこそ、それを司る指導者の頭脳が問われる。

ここで問われているのは、古くて新しい【組織と個人】の問題であり、二者択一ではなく、組織も個人も生きるにはどうしたら良いか、という組織論である。

(1) 指導者の明確な理念が必要(戦術・戦略の問題)
(2) 選手の理念(戦術・戦略)の理解度が鍵を握る
(3) 組織が前進するためには、前の実践の総括が重要⇒後ろ向きに進む
(4) 組織が前進するためには、前の実践の継続が必要⇒継続の精神
(5) 組織が活性化するためには、個人の創造性が不可欠⇒アドリブが重要
(6) 個人の創造性を生かすためには、他の選手のフォローが重要⇒継続の精神
(7) 組織の活性化には、選手それぞれの能力にふさわしいポジションが必要⇒選手は与えられたポジションの理解が必要。同時に他のポジションに対する理解が重要。⇒能力の評価、ポジションのトータルな理解、フォローの問題

こう見てくると、外国人選手や混血の選手たちをチームの一員として迎え入れ、チーム活性化やチーム強化に生かす、と言う事は、日常からの国際性が必要になる。これをやり遂げて初めて、チームが強くなり、選手も進化する。

今年は、ラグビーのワールドカップが日本で行われる。日本チームの主将、リーチ・マイケルは、ニュージーランド生まれ。高校生の時、北海道札幌山の手学園に留学。冬の全国高校ラグビー大会に出場。活躍した。その後、東海大学に進学。主将として活躍。その後、実業団の東芝に入団。日本代表に選出される。日本チームの主将として、ワールドカップ南アフリカ大会に出場。今回の日本でのワールドカップでも日本チームの主将に選ばれている。

彼が主将に選ばれたのは偶然でも意図的でもない。彼の選手としての力量、チームに対する献身的プレー、チームメイトの信頼も厚く、人間としての評価も高い、などが合わさって、大学でも選ばれ、日本代表チームでも二回連続選ばれたのである。きわめて自然で当然な選出。

日本人でなければならないとかいう狭いナショナリズムや狂信的ナショナリズムを止揚して、多様性を大切にした新たなナショナリズムを作り上げなければ、21世紀の日本の未来はない。その意味で、多様性を大切にし、個人の創造性を大切にしながら、チームのために犠牲になる(特にフォワードの仕事)ことも厭わないラグビー競技のありようは、大変参考になる。

英国のイートンとかハローなどのPublic School でGentleman Idealを育成する重要なツールとしてラグビーが奨励されているのも了解できる。日本でも良く引用されるが、One For All  All For One、とかノーサイド精神(試合が終われば、敵味方でなく友達)というのが、ラグビー精神と言われるもの。日本で言うなら、剣道とか柔道のような英国流【道】の精神。

ここで注意しなければならないのは、上記の精神性だけに注目しすぎない事である。日本では、上記のような精神性ばかり強調されるが、ラグビーの本当の要諦は、戦術であり、戦略にある。

肉体強化もさることながら、将来を見据えたチーム強化をどのようにするか、という理念と戦略。その場その場に応じた戦術戦略を組み立てる頭脳とそれをチーム全てに説明できる論理性と説得力。その「戦術・戦略」を実践できる技術と体力を育成する能力と選手の成長を待つ忍耐力など多様な能力を育成している。

こういう教育を経て社会に出た紳士たちは、政治や経済などあらゆる部門で活躍する。例えばイギリス情報局 M16などで活躍したりする。イギリス情報局は世界でNO1の諜報能力を誇っていて、アメリカCIAのお手本だった。戦後のCIAの驚異的拡大の裏には、イギリス情報局の影響が大きかった。

第二次大戦後、イギリスはかっての力を失ってしまった。そのイギリスが、世界に影響力を行使できたのも、イギリス情報局がCIAに深く影響を与えた結果だった。

イギリスは、このように長期的戦略・理念をきちんと持ちながら、短期的戦略を柔軟に使い分ける。第二次大戦後、イギリスが世界の覇権国から降りなければならない事を誰よりもよく理解していた。その最も有利な降り方を考えて、次の覇権国であるアメリカに強い影響力を行使する事により、自らの国の維持を図ったのである。

ラグビーの理念、戦略、戦術を考える、と言う事は、このような国家の将来を考える貴重なトレーニングになる。その為には、多くの能力が必要。狭いナショナリズムにとらわれていては、国際性が喪失する。

ラグビーのワールドカップ出場選手規則では、その国のラグビーリーグに三年以上在籍した選手は、その国(日本なら日本)の選手として出場できる。
これが、イギリスが影響力を行使している国際ラグビーの規則。如何にも、多様性・国際性を重視するイギリス的規則である。

イギリスなどは、この種の教育を経て世界の覇権国になっていったという歴史は知っておく必要がある。イギリス流が全て正しいとは思わないが、米国流のやり方より、はるかに地に足がついたやり方に見える。

今年は日本でラグビーのワールドカップが開催される。日本チームの勝敗をさることながら、ラグビーという文化をもう一度見直してほしいと思う。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
流水

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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-01-04 08:43:47
日本は選ばれなくて結構喜んでるのは経済界だけ一般庶民は治安が悪くなるのが嫌だ。
ラグビーのボールの運び方に思想があったとは知らなかった、こじつけすぎダロウが
平成が終わり激動期に入る (竹内春一)
2019-01-04 14:31:25
金融界で飛び交っている金は実資金の10倍以上ある。昨年末、その資金の一部がニュヨークダウを下げた。それを号砲として、日本の株式市場が襲われ1100円下げた。一旦2万円台に戻したが、正月4日には再び720円下げて1万円台に下がった。日本政府が年金をつぎ込んでも、下げは止まりそうにない。外資が儲けて、日本国民が損をする流れである。下げて上げての繰り返しで、平均株価は1万円を切る恐れもある。まさにハゲタカの来襲である。蒙古来襲、幕末の黒船、本土空襲、以来の出来事である。ただマスコミの経済オンチによって、目に見えない金の動きは、銀行の倒産、企業の倒産が発表されるまで国民には定かではない。ハゲタカに日本の個人金融資産の20%、すなわち300兆円が奪われれば、相当な被害になると予想される。

なぜ日本が狙われるのか、そこに金があるからである。特に最近は、日本政府の信用が落ちたこともあって、すべての国民は預金を増やした、企業は儲けをすべて内部留保にしている。一億2千万人にくまなく金が行き渡っておれば狙われない。川の流れのようにダムに溜まっている。ハゲタカの季節到来である。総務省の統計では2008年の個人金融資産は20%減である。もしかしたら今年はその上を行くかもしれない。ハゲタカと日本政府はタッグを組んではいないが、年金資金をどうぞ持っていってくださいというような政策を過去に行って来た。

73年前に日本は焼け野原を経験している。再び焼け野原を経験しないと日本人の根性は立ち直らない。株価が底を打たないと上昇に転じないように、人間も底を経験しないと立ち直れない。

第二の焼け野原をどう生き残るのか。横の連携が重要になってくる。トヨタも一時期、倒産の憂き目にあったが、全国各地の草の根投資家に支えられて復活した。会社に言われたとおりに仕事をしていたのでは、つまり上からの指示、つながりだけでは生き残れない時代が来るのである。

40年前、すべての端末(個人)は大型コンピューター(企業)とつながり動作していた。管理(オーバヘッド)に費用がかかりすぎた。パソコン、インターネットがその問題を解決した。横の連携があれば、新しいビジネスはパソコンを操作するように運営できるかもしれない。最大の問題は「信なくば立たず」である。ネットワーク、連携の上にどう信用を築くかである。
沖縄の日常風景から考える (竹内春一)
2019-01-07 11:29:45
2年前、ピースボート世界一周旅行のおり、沖縄を訪れた。那覇を周り、ここが米軍ヘリコプターが墜落した大学構内ですと説明を受けた。私は、そのことよりも、もっと日常的風景のなかに、考えるべき問題があった、と今考える。
那覇米軍基地が見下ろせる小高い岡は公園になっていた。そこにアメリカ人の家族20人位がピクニックに来ていた。体重100キロ以上もありそうな、いかにもアメリカ人という風体であった。その覇気のない人たちは、まさか兵士ではないだろうと思って、ツアーガイドに聞いてみた。彼らは米軍海兵隊員の家族ですと答えがあった。彼らは沖縄が気に入っており、永久に沖縄に住み続けたいと言っているらしい。

その気持が、あなたに分かりますか。除隊になりアメリカ本土に帰っても、警備員くらいのアルバイトしかなく、生活が不安定になり、犯罪を犯す人が多い。上からの命令で仕事をしていると、命令がないと何もできない人間になってしまう。それは、アメリカ人にとっても、アメリカ経済にとっても不幸なことではないだろうか。

アメリカ経済のバブルが弾ければ、公共事業のような、海外軍事展開は不可能になる。それが今年2019年である。
アメリカ軍シリア撤退の裏側 (Unknown)
2019-01-08 11:37:12
去年シリアでアメリカ軍の地上軍とロシア軍の地上戦闘が行われた。最古の文明発祥の地で第三次世界大戦発生の可能性があった。そこでトランプはシリア撤退を決めた。ところが米国民主党始めとする軍産共同体は撤退に反対した。そこでトランプは言った。アメリカ軍には使途不明金が500兆円もある。これにはヒラリーも真っ青。マスコミも裏金で生きていることがバレるかも知れない。シリア撤退に反対できなくなった。
翻って、安倍政権は日本駐留アメリカ軍の撤退に反対している。安倍政権の弱みをつく情報暴露がその内あるかもしれない。
Unknown (Unknown)
2019-04-14 01:09:34
ラグビーが好きなのはよくわかるが、飛躍しすぎて一般社会にも多様性を認めすぎるというのはどうだろう。外国人や移民をうけいれすぎるのどうだろうかと思う元々イギリスが、何故EUからりだつしようとしているか知っているのかドイツの深刻な移民問題を知ってるのか。失業している若年労働者が不満を貯めて昼間から、同国人同士で作ったコミュニティーに団体でウロウロしてたら、危なっかしくて近づけないだろ。

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