老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

21世紀を読む;米覇権の後退と多極化世界へ (2)

2018-08-03 16:40:40 | アメリカ
★トランプの戦略

こういう巨大な力と戦っているトランプ大統領の戦略は、基本的には(2)の戦略を踏襲している。北朝鮮との交渉に持ち込んだ手法は、今にも戦争を起こさんばかりに危機を煽りまくり、軍産がそれはやりすぎと沈静化に勤め始めた時を狙って交渉に持ち込んだ。

この手法は、シリア空爆やイランとの合意の破棄、エルサレムに米大使館移転などの手法に共通している。トランプの言うディール(交渉術)だろう。現在、行われているのは、イランとの戦争を起こさんばかりのやり取り。イランが本気でホルムズ海峡封鎖を強行したら、戦争は必至だろう。ただ、マティス国防長官が、話し合いの可能性を示唆しているところを見ると、おそらく落としどころを探る動きが出ていると思われる。

これらの政策を冷静によく見れば、米国は中東での仲介者の役割を降りた。仲介者を務めると言う事は、対立する二者の利害から離れて中立の立場を取る事を意味している。

これまで、米国は曲がりなりにも中立性を保ってきた。だから、覇権国家として行動できた。その中立性を捨て去るというのである。これでは仲介者の役割は果たせない。俺たちはイスラエルと同じだと言う事を宣言したと同じである。と言う事は、中東での覇権を手放したと言う事と同義である。

中東の覇権はロシアに任せたのである。(ヘルシンキでのプーチン大統領との会談の主要目的)

★覇権のコスト

さて、冷静に考えてみて、世界で唯一の覇権国家という立場は、アメリカやアメリカ国民にとって幸福なものなのだろうか。

この問いは、アメリカという国の将来を真剣に考えている大統領・政治家・学者・評論家・国民にとって重い問いである。覇権を維持するためには、膨大なコスト(資金的にも社会的にも、兵力維持のための兵員確保をどうするかなど)がかかる。こういうコストを支払ってまで覇権を維持するのが正しいのか。簡単に答えの出る問題ではない。

(1) 覇権を維持するための軍事的コスト⇒> 軍事費:6,110億ドル(約73兆円)
2007〜2016年、軍事費の変化:4.8%減 (オバマ政権下)
軍事費、GDP比:3.3%
1人当たり軍事支出:1,886ドル(約20万円強)  世界の軍事費の35%

(2) 兵士をどのように確保するか⇒現役兵士の数⇒約140万人 世界各地にある米軍基地の数⇒約800。(内訳;ドイツ=172。日本=113。韓国=83、など世界80ケ国に存在。) 
文化人類学者ヴァイン教授の試算⇒アメリカの納税者たちは1年に平均して1万ドルから4万ドルを、海外で働く一人の軍人を養うために支払っている。しかしながら納税者たちはまず、その事実に気づくことはない。

専門家は、アメリカ駐留軍は11の航空母艦とそれらの海軍基地を含め、様々な形をとって160の国と領土に存在していると指摘している。また、宇宙空間でもその存在が増している。公正を期すために指摘しておくと、国外における基地というのは他国も有しているが、そのような基地の数は全部で30といったところだ。とするとアメリカの有する国外に配置している駐留軍は、全世界の在外駐留軍のうち95パーセントにあたる。(スプートニック;
https://jp.sputniknews.com/us/20150918913887/

この膨大な費用と人員(兵士)を確保しなければならない。これが「覇権」を維持するためのコストというわけである。

(3) 帰還兵のPTSDなどが示す社会へのコスト⇒イラク戦争が始まった時、声高に語れたのが「戦争の民営化」という言葉。特にラムズフェルド国務長官がよく使った。

⇒文字通り、戦争を金儲けのタネにする発想⇒ハリーバートンなどの企業の名前が挙がっていた。・・・・・⇒このように、一部の企業経営者にとって戦争は文字通りビジネスだった。
           ↓
イラク戦争での米軍死者⇒約4500人
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/nobu/iraq/casualty.htm
イラク戦争でのイラク人死者⇒約50万人
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/8459/

一部の企業の儲けのために、これだけの人命が失われた。よく考えれば、すぐ理解できるが、米軍戦死者の保証は国が行う。しかも、米軍兵士の給料は国が払う。戦争をする主体の費用は、全て国が負担。企業が負担する必要経費ではない。こんなうまい儲け話はない。文字通り、坊主丸儲けの世界である。「戦争の民営化」とは、人の生命を金儲けのタネにする、「ハイエナ資本主義」の極致である。

問題はそれだけで終わらない。米軍帰還兵の精神的疾患(いわゆるPTSD)の発症率はきわめて高く、しかも事態は非常に深刻。

ランド研究所(米軍にきわめて近いシンクタンク)が出した数字。
https://www.rand.org/pubs/monographs/MG720.html

・・・「戦争による目に見えない傷」(Invisible Wounds of War)として、帰還兵の3割がPTSD(心的外傷後ストレス傷害)やTBI(脳損傷)に侵されているという報告書を出した。また、同研究所は5月には、【帰還兵の自殺者】が、イラクアフガンでの戦死者数を上回ったことをレポートしている。

それによれば、「およそ300,000人がPTSDまたは大うつ病に現在も苦しんでいると見積もり、320,000人の退役軍人が配備中にほぼTBIである病を経験し、」「過去に配備された人々のうちの三分の一(31パーセント)が、これらの3種類の体の異常の内の少なくとも1つを持っている」。つまり、派兵された兵士の3分の1、およそ50~60万人近くが何らかの形で精神疾患・脳障害を負っているのだ。そこで明かされるコストも膨大である。重度精神疾患者一人に4000万円近いコストがかかる。治療費にとどまらない「社会的負担」が覆い被さるのである。9月にはこの報告書に基づいて、TBI患者への補償の増額が決定されている。・・・

日本でもNHKスペシヤルでこの問題が報告されている。
戦場 心の傷(1)兵士はどう戦わされてきたか  2008年9月14日(日) 放映
戦場 心の傷(2)ママはイラクへ行った  2008年9月15日(月) 放映

そして、この問題がアメリカ社会の格差拡大につながり、社会の大きな不安要因になっている。自殺だけにとどまらず、凶悪犯罪に手を染める帰還兵も多く出ている。

映画ランボウの苦悩はベトナム戦争が舞台だったが、イラク戦争やアフガン戦争帰還兵も同じ悩みに苦しんでいる。時の流れは残酷でそのような悩みを抱えた帰還兵たちも容赦なく年をとる。ますます、彼らの社会復帰が難しくなり、問題の深刻さは増すばかりである。

上記のような問題を深刻に受け止め、真摯に問題に向き合うなら、【世界唯一の覇権国家】であり続ける正当な理由を見つけ出すことは難しい。

歴代の米大統領は、軍産の力を削ぐために、覇権の一部を中ロなどに譲り渡したいが、軍産の代弁者たちの「敵に覇権を渡すなどとんでもない」という主張に阻まれてきた。それでも強行しようとするとケネディ家のような悲劇に見舞われる可能性が高い。

アメリカが覇権国家になった初期の理想(世界平和の構築)などどこかに飛んで行き、軍産複合体の利益確保のための【覇権国家】という現状になっている。

現在、トランプ大統領は、ロシアのプーチン大統領との会談で譲歩しすぎたという批判にさらされている。わたしたちは、メディアから、トランプ大統領がロシアの代理人だという主張をずっと聞かされ続けている。彼がロシアの代理人だという証拠は何もないのに関わらず、である。

Paul Craig Robertsは、【アメリカ大統領を打倒するCIA/FBI/DOJの策謀】という文章でその事を告発している。
(マスコミに載らない海外記事 http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/ciafbidoj-e76f.html

如何にトランプ大統領が軍産複合体から危険視されているかがうかがえる。軍産にとってトランプを潰さなければ、自らの基盤が失われるという危機感が伝わってくる。

・・・トランプ大統領はその事をよく知っており、軍産の主張に同調したように見せかけながら、過剰な敵視政策をとることにより、反米国家や非米国家を団結させ、米国の覇権外に新たな国際秩序を構築するように仕向けている。(上海機構や今回の北朝鮮が良い例)イランとの確執もその戦略の一環ではないかという疑いがある。

さらに米国が起こし、無残な失敗をした中東などの馬鹿な戦争の後始末をロシアやイランなどの非米国家に任せ、その地域を非米国家の覇権下に押しやる方法である。イラク、シリア、北朝鮮、エジプトやイスラエルもロシアに任せている。つまり、中東の覇権はロシアに譲っている。・・・(田中宇説)

さらにG7やNATOでのトランプの言動。トルコに対する言動。アメリカの同盟国に対するこれらの言動は、当然同盟国の首脳を怒らせる。そうなれば、同盟各国はアメリカに過剰に依存する事を止めようと考え始める。良い例がドイツのメルケル首相で、彼女ははっきりと「アメリカにはもう頼れない」と言い始めている。

特に、貿易問題などで欧州産品の関税を上げようというトランプの主張を受け、EU各国も報復関税をかけようとしている。こうなると、経済でもEU各国は自立する以外ない。TPP離脱やNAFTA再交渉もこの文脈で見なければならない。

さらに、注目しなければならないのは、NY連銀に対するトランプの要求である。アメリカでは、伝統的にNY連銀の独立性が重視されてきたが、ここにきてトランプ大統領は、利上げしないでドル安・低金利を維持しろと圧力をかけている。さらに、日本やEUに対し、ドル高・円安ユーロ安を維持するQEなど緩和策をやめろと言い出している。これが利いたかどうか定かではないが、8/1に行われたNY連銀の金利は現状維持だった。

トランプのこの政策は、短期的には米国貿易の縮小。長期的には、アメリカ国債の利上げ、を齎す。

つまり、米国覇権にぶら下がりたいEUや日銀にとって、米国貿易を拡大し、アメリカ国債の利下げが利益。トランプの政策は、この狙いを壊すもの。日本もよくよく考えなければ、トランプの経済政策で経済がボロボロにされる可能性がある。

アメリカ覇権に永久にぶら下がりたい同盟諸国は、これからはトランプ大統領の政策に安保・経済両面で追い立てられると覚悟しなければならない。

★トランプ大統領の政策目標

◎安全保障と経済(金融)⇒対米自立・非米化の強制

日本の官僚機構⇒対米従属(隷属と言ってもよい)が自らの官僚独裁を守る要諦と信じている。(※鳩山由紀夫が知らなかったと証言した日米会議で様々な方向性が決定している)

例えば、・・・7月31日、黒田日銀が政策決定会合で、QEを今後も長期にわたって続けることを決めた。今回の政策決定は「次回大統領選挙でトランプが再選を果たす2020年まではQEを続ける。QEの資金によって、日本だけでなく米国の金利安(債券高)や株高を維持し、米国中心の債券金融システムの破綻を先送りすることで、トランプ再選に貢献する」という意味だ。・・・田中宇(田中宇の国際ニュース)

つまり、国家の方向性を決定するようなQE(その弊害はもはや看過できないところに来ている)を日銀が決定してしまう。下手をすると、日本経済がクラッシュする可能性が囁かれているような政策をこのまま続けるというのである。

欧州の中央銀行(ECB)は今年末でQE(金融緩和)を止める。彼らは、対米自立を加速させようとしている。

トランプ大統領が続く限り、欧州の動きが世界の主流になる。日本政府が購入を決めたイージス・アショアの馬鹿高さ一つとっても、対米従属のコストが看過できない規模にまで達している。日銀の異次元とうそぶいた金融政策も、そもそもは、米金融当局を助けるため、行われた政策。

トランプアメリカが、対米従属を止め、対米自立をしろ、と言っているのに、「どこまでも付いて行きます 下駄の雪」という対米従属政策以外にひねり出せない安倍政権と日本官僚機構の能無しぶり、へたれぶりにはあきれ返る。

現状維持思考だけで、こんな「無能政権」を支持していると、日本沈没が目の前にくる。

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水

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1 コメント

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巨大な組織は腐敗する (竹内春一)
2018-08-05 09:38:22
日本の軍事的クーデター、515 226 事件はなぜ起きたか? 若手将校の決起とされているが、軍事費削減が原因であった。アメリカも軍事費を削減しようとしていて、暗殺の危険があるから、危機的な外交をやっていると思われる。日本の場合は煙もないから、顔がむくんでくる。思考力の低下が著しい。本当の日本が見えなくなっている。日本では重要な仕事は給与が低い。どうでもいい仕事は給与が高い。今年は酷暑の夏である。全てのものが腐りやすくなっている。これは避けられない自然現象である。体力の無い老人は下痢をおこしやす。人間の生命活動も国の経済社会活動も、酷暑即ち腐敗活動によって、余命が短くなってくる。対処は個人の創意工夫のみである。御嶽正露丸ではなくて、地黄8味丸が私の場合は有効であった。

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