老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「三代目ギャン妻の物語」(田中紀子著)と「IR法案」

2018-07-09 22:29:26 | 社会問題
「三代目ギャン妻の物語」の著者田中紀子さんは、祖父、父、夫という3代のギャンブラーが身近にいる暮らしを続け、自らも一時ギャンブル依存症や買い物依存症で苦しんだ経験をもつ「ギャン妻(ギャンブラーの妻)」でした。

田中さんの夫は優秀なサラリーマンでしたが、空いた時間は全て競艇などのギャンブルに費やすギャンブラーでした。田中さんがそのことに気づいたのは、夫のサラ金からの多額の借金発覚によってでした。借金の尻拭いをし、借金を繰り返す夫を攻め、二人の関係が悪化して家庭がガタガタになると、田中さんは苦しみから逃れるために自らもギャンブルや買い物依存にはまっていきます。

そんな田中さんが変わるきっかけとなったのは、夫の「自分じゃ止められない。助けてくれ」の言葉でした。その言葉を聞いた田中さんは、夫と共に心療内科を受診することを決意。診療医の勧めでギャンブル依存症の家族が集う自助グループに参加することになります。

自助グループで、自分の体験をありのままに話し、他の人の話をただ聞くということを続けるうちに、「12ステッププログラム」という回復プログラムに出会い、最初のステップ「自分は(依存の対象に対し)無力であり、思い通りに生きていけなくなっていることを認める」ことが回復の第一歩であることを知ります。

さらに、自分の依存症の背景には、「明るいギャンブラー」だった祖父の存在、ギャンブルが原因で姿を消した父親の存在、さらに母子家庭の貧しさや、母親の期待と自分の個性とのギャップ、などによって生じた、「ギャンブルに対する抵抗感のなさ」と「自己肯定感のなさ」があると気づき、その事実を認めることによって、今までの思考・行動バターンから抜け出し、自尊心を取り戻します。

こうして、依存症から回復し、夫や母親との関係を再構築し、夫共々平穏な暮らしを取り戻した田中さんは、現在は「ギャンブル依存症問題を考える会」代表として、かつての自分同様に依存症に苦しむ本人や家族を助ける活動を続けています。

そんな田中さんは、自分の体験を通して気づいた日本社会のギャンブル依存の実態と、「IR法案(カジノ建設)」の問題点を、以下のように指摘します。
1. 日本で起きている様々な事件、(横領、保険金殺人、通り魔殺人、子供のネグレクト、パチンコ店駐車場での子供の熱中症死亡、等)はしばしばギャンブル依存症が背景に存在する。
2. ギャンブル依存症有病率は他国が0.5~2%台であるのに対し、日本は5.3%と突出して高い。
3. 日本はギャンブル事業運営者に依存症対策を義務付けていない、世界にまれな国である。
4. ギャンブル業界は広告やマスコミを使ってギャンブルに手を出す仕掛けを様々に作っていながら、依存症に対しては「自己責任」として知らんふりしている。
5. 日本では、子供への必要な予防教育が行われていない。
6. 新規顧客開拓のためギャンブル場に親子連れを呼び込む戦略が採用されているが、非常に危険である。
① 親はギャンブルに熱くなり不機嫌になる。>児童虐待に繋がる。
② 親がギャンブルに興じる姿を見て育つとギャンプルに対する敷居値が低くなり、将来依存症になる可能性が高まる。

著書の中で田中さんは、IR法案には賛成でも反対でもないと言っていますが、本を通して「IR法案」と、その前提として採択された「ギャンブル依存症対策法案」を見てみると、少なくとも以下のことに気づきます。
1. 「ギャンブル依存症対策法案」で、ギャンブル業界に一定の依存症対策を義務付ける条項を定めているのは、一歩前進といえるのではないか。
2. 一方、IR(統合型リゾート)について安倍首相は、「家族で楽しめる場」であることを積極的な評価として語っているが、それこそが田中さんが危惧する「子供をギャンブルの場に巻き込み、ギャンブル依存症の土壌を作ることになる」危険な側面への無知、あるいは無関心の象徴ではないだろうか。

実はこの本は、6月の「護憲+」月例会に講師として来てくださった大坂順子さんから紹介していただいたものですが、大坂さんや田中さんたちは長い間ギャンブル依存症の問題に取り組み、自ら解決策を導き出し実践を続けてこられ、その上で、社会が公的に関与すべき問題点については政治の場にキチンと提起するに至っており、その前向きな姿勢と尽力に、心からの敬意を表したいと思います。

今回は、大坂さんのお話やこの本によって、「ギャンブル依存症」について知ることができたと同時に、「民主主義」とは、自分たちの日常的な積み上げによって作られるものだということも、改めて学ぶことができました。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
笹井明子
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