老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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学校教育に「精神疾患」の授業の必要性

2019-01-14 16:34:51 | 社会問題
2022年から、高校教科書に「心の病気」つまり精神疾患の記述が入ることになった。私はこのことをとても喜んでいる。

なぜかと言えば、20年近く前、私は子供が精神疾患だと気づいたとたんに、精神科に連れて行った。ごく薄くであったが精神疾患についての知識があったことと、人種・国籍・障害などに偏見を持つのは恥ずべきことであるという教育を、家庭でも学校でも受けてきたことが大きい。

時間はかかったものの、早期発見・早期治療で回復し、今ではごく普通に社会生活を送っている。

しかし、情報を得ようと入った精神障害者家族会で、私は様々な事例に出会い、驚くことになった。ことに統合失調症のご家族からの発言。

「こんな病気は知らなかった」「我が家にこんな血筋はないと夫婦で喧嘩になった」「精神科なんて行くのも怖い」「うつ病なら心の風邪だから暫く休ませれば治るだろう」等々。

熱を出したり腹痛を起こした子供を放っておく親は少ないだろうに、精神疾患への無知と偏見の結果、家族が戸惑って放置するうちに病気を発症した当人は悪化してしまう。妄想や幻聴に襲われて苦しみ、それが暴言や暴力となって、家族も苦しむ悲惨な事例に胸を痛めた。

そうなると社会は精神疾患への偏見を強める。「一生治らない危険な病気」「閉じ込めておけ」「親の責任」。そして偏見に怯える家族や本人は近所に知られないようにと家に閉じこもり、ますます治療に繋がりにくくなり、もっと悪化していく。

実は、日本でも精神疾患の教科書記載は過去にあった。しかしその内容は医学的に正確な事実を欠き、むしろ不安と偏見を強めるものであった。そして1978年、最後に正しい内容が記載されたとたん、翌年から一切の記載がなくなった。何故かは分からない。

精神疾患は、一生のうちに5人に1人がかかる。うつ病は5~10人に1人。統合失調症は100~120人に1人(胃潰瘍と同じ率)で、しかも24歳までに75%という高率で発症している。15~39歳までの年代別死亡原因は自殺が第1位だが、この中には多くの精神疾患当事者が含まれていることも見逃してはならない。

つまり日本では、青少年がかかりやすい病気の知識を一切、本人そして家族に与えてこなかったのだ。その結果、日本は発症から治療に繋がる未治療期間が非常に長い。

海外では、精神疾患について学校教育をしている国も多い。その結果、例えばオーストラリアでは、精神疾患を発症して平均2か月以内に治療に繋がっている。

ところが教育をされていない日本では未治療期間が平均1年3~7カ月(統計による)という。

放っておいて良くなる病気は少ない。家族会で出会った人の中には、10年も医療に繋がらないままの人もいた。本人は苦しみ、家族も困り果てている。

今は薬が良くなり早期発見・早期治療で回復する人も増えたのに、無知と社会的偏見が障害者を作り出しているともいえる。

私は「学校メンタルヘルス教育」研究グループに属して、中学校での「心の病気」の教育を始めた。研究者・精神科看護師・福祉関係者等が中心の研究&ボランティアグループで、依頼があれば日本各地どこでも無料で授業をする。

生徒への授業は中学3年間で5回、教師、保護者への授業もする。子供がせっかく知識を持っても、相談相手の教師や親が無知であれば、間違えた対応をしかねないからだ。

ただし、1回きりの授業であろうと、高校生、小学生、養護の先生、保健師、学生等々、依頼があればどこにでもどんな相手であろうと、柔軟に対応する。しかし、どんなに頑張っても学校側に関心がなければ広まらない。

教科書記載されることについて、教師側からは「どう教えて良いか分からない」という声も出ている。受験に関係ない授業はさっと流すという話もある。

しかし、精神疾患の知識があるかないかは、その人の一生に関係する。いったん悪化して認知力が損なわれると、障害が残ってしまい、社会生活が困難になる。

せっかく高校の教科書に記載されることになったのだ。各地に教育に熱心な精神科分野の専門家はいるのだから、学校側は協力して十分な知識を生徒に与えてほしい。

正しい知識はその人の一生を救う。本人のみならず、友人や親きょうだい、社会に出てからは同僚など、どれだけ多くの人を救う機会があるかもしれない。

私たちの「学校MHL教育」研究グループは、授業を行うほかにも、学校教育のツールキットをネット公開している。知人に教育関係者がおられれば、ぜひお知らせ頂きたいと願っている。

https://www.comhbo.net/wp-content/uploads/2018/01/MHL20140830_ver12.pdf

ツールキット http://comhbo.html.xdomain.jp/

「護憲+コラム」より

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2019-01-14 19:14:27
アインシュタインが日本に生まれていたら、世に出ることは叶わなかったでしょう。日本は異物を認めない所だから。グリープに馴染めない子、担任と相性の悪い子は、独自な性格を持っていると内申書に書かれて悪い評価を得る。自閉症は当人の問題ではなくて、周りの、学級広くは社会の問題である。色盲は別に病気では無いのに、病気扱いするのと同じで臭いものには蓋をするだけ。
こころ医者講座のこと (おとなのおやつ)
2019-01-16 16:33:05
 米津玄師は自閉症と一緒に育った人のようですが、彼からその病を取ると彼の歌は、きっと普通のおじさんの作る歌になり、今のように若い人のこころを捉えるものにはならないのではと思います。
 「個性を育てよう」と教育スローガンが言われたとき、「叩かれても叩かれても出てくるのが個性だ」と、なだいなだ精神科先生は何かに書いていられた。
 自閉症の本人よりも、周りの人たちの気持ちの正しさ、病について理解があるか無いかは大切ですね。それは社会の雰囲気などにも求められ、精神病のことを理解している社会と、それを多数を乱す者として即排除してしまう考えの社会とでは、その雰囲気の明るさ、落ち着き、余裕、賢さ、強かさなども違ってくるのではと、むろん理解の多い社会の方が、長い目で見て賢いということだと私は思います。。
 知り合いの若いサラリーマン家庭でのことですが、夫が勤め先で上司の不正を告発し、結局はあちこちの部署を回るうちにこころの病気を発症したとのこと、そのとき私が妻の人に贈ったなだいなだ著『こころ医者講座』は、こころの病気になった人のこと、そしてその周りにいる者の病人への接し方など、納得できる文が詰まっている本で、その夫はやがて転職し新しい会社で勤めだし、悩んでいた妻も平静になり、「学校へ行きたくない」と言い出していた一人娘も、その後元気に登校している様子です。
 いま我が家に『こころ医者講座』は私用に一冊残っているだけです。出版された時に10冊、20冊…買いだめしておくべきだったのだ!と、ときどき思いだしては悔やむことしきりです。

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