老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

混迷する政局と天明の大飢饉

2011-03-07 21:50:44 | 民主主義・人権
前原外相の辞任によって政局はますます混迷の度を深めていますが、ここでちょっと江戸時代に還って天明の大飢饉(1782~1788年)により困窮した人々の救済を、本所吉祥院観音天に訴えた30歳の白河藩主松平定信の納めた願文を見てみましょう。

「天明8年正月2日松平越中守義一命を懸け奉り心願仕り候 当年米穀融通よろしく格別の高値これなく下々難儀仕らず安堵静謐仕り並びに金穀ご融通よろしくご威信ご仁恵下々に行き届き候ように越中守一命は勿論妻子の一命にも懸け奉り候て必死に心願奉り候事 右の条々相調わず下々困窮ご威信ご仁徳行き届かず人々解体仕り候義に御座候はば、只今の内に私死去仕り候ように願い奉り候 以下略」 

大雑把に要約すると、定信は飢餓に苦しむ領民を助ける為に、自身のみならず妻子の命をかけて観音天に救いを求め、願いが叶わなければ即座に死なせてほしいといっています。
勿論彼は神仏に頼るだけではなく、率先して倹約に努め食糧救済措置も迅速に行ったため領内からは一人の餓死者も出ず、その手腕を買われて老中首座となって寛政の改革を実行しました。

田沼意次の重商主義とは対極の節倹を旨としたその改革は必ずしも成功とはいえないけれど、その願文にこめられた気迫と覚悟はすさまじいものがあります。

さて現代に戻って自民党にも民主党にも絶望した人々はともすれば英雄を求める。しかしそこには危険を伴う事を宮部みゆきさんはジュブナイルファンタジーの形をとって2年前にいち早く警告しています。民主主義とはなんとも難しいものです。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
成木清麿
コメント (1)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シンポジウム「TPPとは何か 問われる日本の対応」(3/5)

2011-03-07 17:44:30 | 民主党政権
3月5日にプレスセンターホールで行われた下記シンポジウムに参加してきました。
====
★☆シンポジウム「TPPとは何か 問われる日本の対応」☆★
■プログラム:基調講演「TPP、国益となる選択とは」
講師:伊東光晴(京大名誉教授)
      パネルディスカッション
        パネリスト: 岩田伸人(青山学院大学経営学部教授)
               平井伸治(鳥取県知事)
               星野知子(女優)
               三村明夫(新日鉄会長)
               茂木守 (全農中央会会長)
        コーディネーター: 後藤謙次(ジャーナリスト)
■主催:「食と農の研究ネット」
■後援:「経済産業省」「農林水産省」「経済同友会」「JAグループ」「全国地方新聞社連合会」「共同通信社」
====
ある時唐突に菅総理が言い出した「TPP」という言葉。ふと気が付けばTPP参加は規定方針のように語られ、「平成の開国」というキャッチコピーで国際社会にもアッピール。内閣もTPP実現のための布陣に変わっていました。それに呼応してマスコミが「TPPは時代の要請」の論調で報道を始める一方、インターネットの世界では「TPP参加は国を滅ぼす」という声も広がっていきました。

私自身は「とんでもない」という直感的な感想を持ってきましたが、「なぜ今突然TPPなのか?」「TPP参加支持する人たちの大義は何か?」など、遅ればせながら基本的な背景を押さえておきたいと思い、今回の参加を決めました。

伊東光晴さんの基調講演では、TPP参加の問題点が舌鋒鋭く明快に語られました。(*論旨は以下のブログに紹介された趣旨と同一です。)
「TPP参加は誤り 日本の米作・畜産は規模拡大政策では存立し得ない」伊東光晴(2010/12/14)
http://hibikan.at.webry.info/201012/article_317.html

その後行われたパネルディスカッションは、TPP推進派の三村氏、反対派の茂木氏の他は、「どちらとも言えない」の中間派という、マスコミ好みの“バランスのとれた”顔ぶれ。三村氏と茂木氏の激論で対立軸は明確になったものの、シンポジウムは司会者の「もっと情報が必要」「日本も議論に参加すべき」「農業政策にもっと真剣に取り組む必要があることが浮き彫りになっただけでも今日TPPの議論が出てきたことは良かった」という、優等生的で玉虫色の「まとめ」で終わりました。

今回のパネルディスカッションで分かったこと:
(1)政府の動き:
・菅総理のTPP加盟という発想は、2009年11月、オバマ大統領が来日の折に考え方を演説したことに始まる。(この時オバマはThey TPP countries と表現。2010年3月になってオバマ大統領は We TPP countries と言い出した。)オバマ大統領のこの意向に沿って、菅総理は2010年9月の所信表明演説で「TPP」に言及、2011年1月の施政方針演説で「平成の開国」と宣言、TPPに向けた内閣改造に着手。
(後藤氏)
・今後の動き
2011年5月連休中に「2プラス2」、5月21日に日中韓首脳会議、5月27日にG8首脳会議(オバマ・菅会談?)。これまでにTPP参加表明できるよう固めておきたい。そのためには3月中には決めなくてはならない。
(三村氏)

(2)TPP推進派の言い分:
・成長戦略としてのTPP
日本は先進国の存在感ある位置に居続けなくてはいけない。これからの成長戦略に必要なのは、成長している世界のエネルギーを上手く活用すること。今日本のGDPに対する輸出比率は16%で世界82位。内需拡大が成功していたこともひとつの要因だが、内需拡大がこれ以上見込まれない以上輸出を伸ばすべき。
・TPPと農業
TPPが有ると無いとにかかわらず、水田農業は衰退している。農業改革によって近代化(=大規模化、機械化によるコストダウン)を図る必要がある。農政への担い手の希望者、農業に参入する意欲ある企業は多い。コストダウンしても足りない部分は国が補償すれば良い。こうしてTPPと強い農業は併存できる。
(三村氏)

(3)TPP反対派から見た問題点:
・農業の衰退と食料の安全保障 (食料自給率の低下、地球規模の飢餓人口に援助ができない国になる。)
・環境・国土保全 (水や自然の国土財産は一度失われたら回復できない。)
・農業の基本的考え方 (各々の地域で各々の形で食料を維持すべき。)
・補償問題 (生産者は生産・販売で利益を得たいと望んでいる。)
・農業と他産業の関係 (「GDP1.5%の農業のために他産業を犠牲にして良いのか」の前原(元)大臣の発言があったが、農作物生産が衰退すれば運送その他、他産業にも影響する。)
(茂木氏)

以上、冒頭司会者は、「政争の具に使われている感のあるTPPの問題ですが」と言っていましたが、今起きているのは国のあり方を決める政策論争そのものだということ、国民が政権交代に期待した「国民生活第一」の理念を菅総理は裏切って、アメリカと財界の意向を受けて突き進んでいること、こうした事実を再確認したシンポジウムでした。

「護憲+BBS」「イベントの紹介」より
笹井明子
コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする