
大きい。小型犬がびっくりして逃げ出しそうだ。
でも、体の割に顔が小さくて飼い猫特有のあどけない表情に思わず騙されそうになる
トリッキーな雌猫『リーちゃん』だ。
『ミーディ』の住む薬屋の二軒先のお宅、手入れが行き届いた庭付きの一軒家が彼女の家。
今日は塀の上、昨日は出窓の屋根の上。
冬の寒い日には飼い主さんの車の中…と、その時々の一番心地よい場所へ移動している。
私が通ると、挨拶を欠かさない礼儀正しいお嬢さんでもある。
お互いに時間が許せば、近くの公園のベンチに座って、じっと黙って隣に居てくれる。
まるで、昔からの親友の様だ。
猫と並んで座っていると、通る人が笑う。
子供達が立ち止まって、こっちを見ている。
猫に触りたいのだ。
なかなか通り過ぎてはくれない。こういう時の子供達は、
頑なな迄に自分の要求を満たそうとする。まるで、欲のモンスターだ。
嫌な空気を読んだのか、ベンチを降りて、子供達から遠ざかる様に
道を挟んだ歯科医院の駐車場へと避難する猫。
子供達も負けずに追い掛けて行く。
『リーちゃん』は露骨に嫌な顔をして、子供達に背を向け家へ帰ろうとしたが、
急に立ち止まり道の真ん中に「もう、どうにでもしろ」と言わんばかりにゴロンと横になった。
暫くされるがままに子供達に撫でられた後、気が済んだ子供達を後目に
「やれやれ」と言った感じの不機嫌な顔で家に帰って行った。
子供達の扱いは、彼女の方がきっと上だ。
