路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

三匹の侍

2007-12-30 | 『太郎・アコ・しま次郎』

煙草屋のシャッターの隙間から、黒い影が動いた。

黒猫のタンゴの様に赤いリボンならぬ赤い首輪をしている。

これはチャンス!とばかりに近付いた。

黒いのの後ろから、少し小振りなキジトラが付いてくる。

ラッキーだと思ったのもつかの間、店の裏庭へと逃げ込んでフェンス越しにこっちを伺っている。

カメラを向けると、窓が開いた。

家の女主人が出てきた。

愛猫を撮影しているのが判ると猫達をフェンスの中から裏の公園の方へ誘導してくれた。



黒いのが『アコ』、向かいのマンションの子供達に時々パンを貰っていたらしいが、

冬に寒くなって自販機の裏で暖まっていたのを彼女に保護された。人馴れしているので

おとなしく背中を撫でさせてはくれるが、子猫の時の栄養事情が悪く一時は病気で大変だったそうだ。

キジトラは『しま次郎』、これまた冬の日に自販機の裏で暖を取っていたのを

『アコ』が連れて来たそうだ。自分と素性の似た奴をほっては置けなかったといった所か…。


雄猫というのは、人間と同様に父猫に限らず師と決めた雄猫に付いて猫生を学ぶらしい。

どうやらキジトラの師は黒いのみたいだ。


ふと、後ろで可愛い声がした。

茶トラの大きな雄猫が姿を表した。三匹目だ。

「あれが一番の古株『太郎』…新入りが気に入らんのか、あんまり家に居着かん。性格は良いのに、ヤキモチかねぇ…」

三匹とも、飼い猫なのに今まで出会ったどの野良猫よりも警戒心が強く寄っては来ない。

女主人と話す私を囲う様に遠巻きに見ている…まるで用心棒。



女主人は三匹の侍を従えた姫君に見えた。

荒野(野良)の三匹が辿り着いた先は、煙草屋の城だったのかもしれない。



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宇宙人

2007-12-30 | 『宇宙人』

「早起きは三文の徳」と言うが、私は「早起きして猫に会う」が正解だと思う。

朝日を浴びた猫達は、本当に美しいからだ。



近所の書店の開店の時間にはまだ早い。

少し散歩でもして時間を潰そうと歩いていたら、

築十五年位のマンションの広い駐車場に雌ライオン…いや、アビシニアンを発見。

血統書付きの外国猫はすっきりとした体型で小顔、雄か雌かもわかりにくい。

雌ライオンにも見えるこの猫は、やはり雄だった。

青地に小さな白い水玉模様の首輪が見える。

飼い猫は人馴れしているので、初対面でも近付き易い。


「写真、撮っても良い?」猫に聞いてみた。

猫はゆっくり近付き、タイヤ止めのブロックに前足を掛けてポーズを取った。

次は車の下の日陰へ移動し、くつろぐ。不思議な猫だ。

血統書付きの高価な飼い猫なら、部屋から出してはもらえなさそうなのに、

飼われていても外出許可のある猫の様に外に居る。

しかも、そこら辺の野良猫以上に痩せている。

撮影のお礼にキャットフードを出すと、風に飛ばされそうな位細い体で近付いて来る。

嬉しいのか、鼻炎なのか、鼻息が荒い。

それにしたって、折角の端整な顔立ちが台無しだろう。

フガフガ言いながら動く姿は、猫でなく『宇宙人』みたいだった。



マンションの駐車場で、世界征服を企んでいたのかもしれない。



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