大航海時代~ロイルート編~

大航海みたいな日々の事。そんな日のこと。

『この虹の先へ…』第四回

2006-06-20 | 小説
今日は小説の続きです。
ちょっと変化がありますよw(ちょっとじゃないかな?





ぽたぽたと落ちてくる涙。俺はそれを見て何もできなかった。言えなかった。何故泣いているのか…それを聞く事ができなかった。そんなのは簡単。女の子の涙を見たのは初めてだったからだろう。もちろん、女の子友達はいる。だが、彼女達も家族であるおふくろや姉さんも決して俺の前では涙を流さなかった。俺はそういう場面に運良く出くわさなかったのだ。
……運が良く?逆だ。その場面に出くわなさかったから、こんな大事な場面でどう反応したらいいのかわからないのだ。だから……。
――――だから、こんな馬鹿みたいに突っ立っていた。
 「どうしたの?悲しいの?」
おふくろが優しく麗菜に問いかける。
しかし、次の瞬間全く予測しなかった事が起きた。麗菜はふるふるふると凄い勢いで首を横に振った。
「…は、初めて……うう…言われたから……っく…ぐすっ…」
初めて?何が初めてなんだか、ちんぷんかんぷんだった。
「…名前で呼ばれたりとか……家族とか……」
まだ涙は止まらない。なるほど。どうやら麗菜を引き取った親戚達は本当に救いがないようだ。もちろん、全員ではないだろうが。
「麗菜」
おふくろが、ぎゅっと麗菜を抱きしめる。どうでもいいが、いつも気がついたら近くにいるというのは勘弁してもらいたい。
 その後、無言で抱きしめるおふくろと大泣きする麗菜。数分後、落ち着きを取り戻した麗菜は目と顔を真っ赤にしていた。
「す、すみません…みっともない姿を見せてしまって…」
その姿と言葉におふくろと姉さんは、あらあらといつも通りだった。
「では、少し遅れたが新たな家族に、乾杯!」
親父の急な戻りに慌ててグラスを手に取る。
「かんぱーい!」
「かんぱ~~い」
お互いのグラスを申し訳程度にぶつける。そして、一気飲み!一応、グラスの中を言っておくと俺と親父、おふくろがビール。酒が駄目な姉さんと未成年の麗菜はオレンジジュース。
「少し冷めてしまったけれど、どんどん食べてね」
ニコニコのおふくろ。いただきまーすと各自料理に手をつけていく。料理の中に俺が好きな鶏の軟骨揚げがあったのが嬉しかった。…まぁ、酒の肴にもなるしな。
 なんだかんだで、あっという間にパーティは終了。まだどこかぎこちなかった麗菜だったが、最初に比べればずいぶんマシだった。女3人組は仲良く食器の後片付け。親父は酒とつまみを食べながらテレビを見ていた。俺はというと、ぼーっと麗菜を見ていた。そんな時、俺の前まで来た。
「あの…食器下げても良いですか?」
「あ、ああ」
今度は真正面に見てくる麗菜。…少々童顔だが、こうして見るとかなり可愛い。不本意にも緊張してしまう。
「あの…どうかしましたか…?」
?顔の麗菜。
「い、いや、なんでもない!」
慌てて手を振る。そんな俺の姿が面白かったのか、くすっと笑い、
「では、お下げしますね」
と笑顔で去っていった。がっくりとうなだれる俺。
…あの笑顔は反則だろう…。
「…まだまだ青いな」
親父のさりげない一言。……うるせぇよ…。だが、反論できない俺であった。
       続く