JIIN’S ブログ

寺院の住人が綴る、ジーンズをはいた時のような気取りなしブログ!

大量殺戮事件

2012年08月16日 | Weblog

墓地へ通じる参道がある本堂左側の軒下に
スズメバチの巣が見つかりました。

墓参の多いお盆時期にこのまま放置することはとても危険と判断して、
すぐに近所のハチの巣取り名人のMさんに撤去をお願いしました。

蜂の行動が止まる夜を待っての作戦開始です。

Mさんは完全武装していましたが、巣の場所が軒下の高いところ
ということもあって、
僕(無武装)も少し離れたところから助手(照明係)として
参戦することに。


殺虫剤による攻撃、巣の破壊…手際よく進めるMさんによって、
作戦は見事に成功しました。


             


夜が明けて、陥落されたハチの巣を片付けながら、
僕は 前夜の「大量殺戮事件」を思い返しました。


この蜂の巣の中に、どのくらいの数の蜂たちが いたのだろう…。

僕は、数えきれないほどの蜂のいのちを一瞬にして奪ってしまった共犯者。
ご先祖を通し、いのちの尊さに出遇うお盆の期間中に 大量殺戮を犯した
住職です。 



たしかに、ハチの巣をこのままにしておけば、墓参の方に危害をおよぼす危険性が
非常に高いことは事実です。

ですから、それを未然に防ぐためのハチの巣の駆除は、お寺を預かる管理責任者
として当然の業務といえます。

 

しかし、その行為をどれほど正当化しても、それは人間のからの論理でしかありません。
多くのいのちを殺したこと…その事実には何の変わりもありません。


人間って悲しいですね。

自分が生きていくためには他のいのちを簡単に奪ってしまいます。

自分のいのちを明日につなぐ食事のときにも、
器の中に並ぶご馳走は全部 「いのち」です。


しかし、その悲しみに気づかせてもらうのは、すでに 仏さまの光の中に照らされているから…。
 

こんな時、金子みすずの「大漁」の詩を思い出します

 

           「大漁」

     朝焼け小焼けだ
     大漁だ

     大羽鰮(いわし)の
     大漁だ


     浜は祭りのようだけど

     海の底では何万の
     鰮(いわし)のとむらい
     するだろう


仏さまは、この私に殺生をしない立派な道を歩めとはいわれない。

殺生しなければ生きていけない私の悲しみを私以上に思いとって、
そのままつつんでいて下さる…そんなふうに味わっています。