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問いの大切さ、ヨースタイン・ゴルデル”ソフィーの世界”

2012-09-28 10:39:53 | 本たち
発表されてから、20年を過ぎて読んだ”ソフィーの世界”。
持ち前のへそ曲がりが、話題の時に手にとらせず、本の分厚さも扱いにくくて敬遠していた。
それが、上下巻に分かれ、手にとりやすい具合になったものを古本屋で見つけた。
とうとう読むお膳立てがそろったのだ。

もうすぐ15歳になろうとするノルウェーの少女が主人公で、ファンタジーミステリーの手法を取り入れ、哲学を中心に据えた物語りは進行していく。
ノルウェーでの15歳は、大人への仲間入りの歳。
日本で言うならば、元服の名残の14歳の立志式に当たる。
孔子の論語ならば、「吾十有五にして學に志す」か。
ただ生きるだけに終始しないで、よく考えよく生きることを促す意味も兼ねての実践的な哲学の勧めとして、大人の仲間入りをする年頃の人が、感情移入しやすいように設定されたのだろう。
もちろん、大人が読んでも面白く書かれている。

古代から現代に至る西欧を中心にした哲学の流れに、東方の哲学宗教や自然科学などを絡め、一元的視点に立たない気配りを感じる。
これは、作者が、ノルウェー人という地理的歴史的にユダヤ・キリスト・イスラム教の世界から距離を置いている素地もあるのだろう。
騒ぎの只中にいては、物事の状況を掴めないのと似ている。
初め読むときに、一元的立場で誘導されるのではないかという危惧を抱いて、警戒しながら読み進めていた。
しかし、2つの世界のやり取りを使っての思惑の駆け引きで、批判的に読み進める注意を散りばめてあったのは心憎く、作者自身の安全装置としてうまく作用していたと思う。

”問う”ことをしながら生きるのは、面倒かもしれない。
NO!を突きつけるだけではない批判的かつ冷静に判断を下すのは、困難を極めるだろう。
だが、まずは自分を戒め、他を諌めることは、すべての平安を気遣う第一歩になる。
驚きと感謝を持ってよりよく生きるためには、”問う”ことは始まりではないだろうか。
”問い”物事を探っていく上での、ガードとなりガイドでもある先人の足跡を辿るのは、とても有意義といえよう。
それには、何がどう流れているのかを知ることが先決。
まさに”ソフィーの世界”は、その指南書として手に取りやすい本だ。
できれば、子供たちに読んでほしいのだが、無理に読ませるのは逆効果。
私がこの本を読んでいた、この一ヶ月ばかり、部屋のどこかあり、目にしていたはず。
中くらいの人に、この本が面白かったことを話そう。
もしかすると、読む気が起こるかもしれないから。
そして、ソフィーやヒルデのように、哲学の面白さに目が開かれることを願っている。



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