ロビンソン本を読む

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酸っぱいブドウ はりねずみ

2019-08-13 17:18:41 | 日記
ザカリーヤー・ターミル『酸っぱいブドウ はりねずみ』




 カバーを広げると、街が広がる。

 実際には、左端のタクシーが見えるようになるだけだが、茶色の大地、青い空、その先の何もない空間が見えてくるような気がするのだ。


 舞台となるのはシリアの街。

 覚えにくい名前の住人たちが、59もの短編に次々と登場する。

 短いものは1ページにも満たない。

 そこに綴られる日常生活は、不意に暴力が現れ、死人が出る。

 これはシリアの現実を反映しているのだろうか。

 ところが死者は、生者と同じように意識がある。

 死が怖いものとして語られない感覚は、よほど死が身近にないと生まれないのではないか。
 

 カバーに描かれた街と様々な人々。

 行き先も行動もまちまち。

 立ち止まり人と話している人、じっと他人を見ている人、いままさに殴りかかろうとしているかに見える人もいる。

 抜け目ない表情が、表面からではわからない何かに注意せよと告げている。

 
 書かれていることだけがすべてではない。

 物語は、文字通り受け止めるのではなくて、感じないと伝わってこない。

 子供が語る『はりねずみ』の方が、無邪気なだけに、些細な違和感が際立って見える。


 装画はしおたまこ氏、装丁は緒方修一氏。(2019)



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