ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

穴の町

2019-09-02 17:24:20 | 日記
ショーン・プレスコット『穴の町』



 表紙は白と黒の2色。

 右半分が黒の楕円で覆われ、それは背を越え、表4のほとんどを埋め尽くしている。

 中には、白抜きで『穴の町』とタイトルが入っている。

 残り半分の白地には、死人のような真っ黒な目をした人物が2人。

 白い帯には、細く赤い文字が、呪文のように横たわり、その上に黒のゴシックでひとこと「町が消える。」。

 SFっぽいのか、ホラーなのか。

 恐ろしい顔をした本だが、読み始めると、かなり違った感触で、いろいろ考えさせられる物語だった。


 その町にやってきた男は、消えゆく町について執筆している。

 知ってか知らずか、その町も、やがて消えていく運命にあった。

 町の住人らに話を聞く男。

 彼らの話は興味深い。

 そして誰もが、確実な拠り所のない人生を送っているとわかる。

 話を聞いている男も、どこからやってきたのか本人もわからず、浮遊感の漂う人生だ。

 男は、スーパーマーケットで働く。町を離れ、ホームレスに堕ちそうになり、また同じ職を得る。

 堕ちていく友人を支えながら、踏みとどまっている。

 小さな杭で、流されないように、なんとか自分の居場所を見つけようとするかのように。

 広大なオーストラリアが舞台なのに、どこにいても風通しが悪い。

 徘徊する思考を止めるには、出口を見つけるのではなく、探すのを止めてしまった方が簡単だ。

 穴に落ちるとは、そういうことだろうか。


 装画はタダジュン氏。(2019)



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