ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

靴ひも

2020-03-27 17:57:44 | 読書
 ドメニコ・スタルノーネ『靴ひも』





 表紙のイラストは、綺麗な色使いで、一見楽しげに映る。

 けれども、よく見ると、家族と思われる4人は、バラバラな方向を見つめていて、冷たさが伝わってくる。

 
 3部からなる夫婦と子ども2人の物語。

 最初は、妻のモノローグから始まる。

 狂気をはらんでいるように感じられ、先行きが不安だ。その原因は夫にあると示唆される。
 
 次に夫の視点になる。

 先の妻の語りとは時代が異なっていて、夫婦関係は良好に見える。

 ただ、妻を狂気の淵に追い込んだ原因が、解決されたのかどうか不明だ。そこに老人の曖昧さが加わって、不安に取り巻かれている。

 そして最後に子どもたちの視点。

 子どもとはいえ、すでに50歳に届く年齢になっている。それなのに、甘えた幼子のような考え方をする。

 母の狂気、父の身勝手を受け継いだ子どもたち。


 お互いを思いやることがない家族。

 そんな心の離れた家族を、靴ひもにまつわるエピソードがひとつにつなげる。

 しかし、つながるとは、一体どういうことを言うのだろう。

 血のつながりなのか。

 一緒に住むからつながるのか。

 相手のことを、憎みながらも考え続けることが、つながっていると言うのだろうか。

 
 家族とはなんと面倒な関係なのだろう。

 面倒だからといって、簡単に断ち切れないのが家族で、だからさらにややこしくなるのだ。


 装画は都築まゆ美氏。(2020)


コメント
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