3210 あほうむ びぎゃn

暁に逝ってよしとはいわなんだ、千年の幽囚を経ておなぢみあおきひとし伝説が遂に復活!飲んだら詠むな、呼んだら呑むな

テレビの場合、新幹線が一万本~マンガ背景風景映像著作権とライブラリー構想について

2005-10-23 17:40:01 | マンガ
 参考までに、テレビの場合の類似のケースをご紹介します。
 例えば、ドラマなんかの場合、誰かが大阪方面から東上するケースがありますよね。すると、デレクターは新幹線を撮影するためにわざわざ半日つぶすわけですよ。そうなんです、太平洋から日本列島を見たおなじみの構図、富士山をバックに新幹線が下手から上手へ走りぬける絵柄を、その度に新撮するわけです。
 いや、プロデューサーなんかは、言いますよ。そんなの、有り物を使えばいいって。事実資料室に行くと、テレビの著作権意識が高まってきた1980年代からの、その局が放送に出した全番組が保管されています。検索も、それ専門の下請け会社経由で資料室に保管される仕組みになっていて、かなり整備されています。
 「新幹線」「富士山」で検索すると、ニュースがほとんどなんですが、一般番組も含めて約30000本のVTRがリストアップされてきます。それで、その細目が書き込まれたリストを参考に、とりあえず100本程を借り出してきて試写するわけですが、だめですね。使えるものが一本もないんです。なんというんでしょうか、“表情”が微妙に違うんですよね。主人公が東京へ出て行くその時の心情を体現している映像は、これはないわけですよ。例えば「平成の三四郎が勇躍意気込んで東京に乗り込む時の、朝日を浴びて富士山脇を通過する時の新幹線」「日帰りのサラリーマンが乗っている夕日に滲んだ疲れ果て薄汚れたひかり」なんてものは、これはあるわけはないでしょう?で、新撮して編集し、アップしたものを試写室でスタッフだけで見るわけですが、ここで「新撮する価値があった」
「いや、それほどの映像じゃない」とプロデューサーと揉めるのはいつものことです。
 あるときは、羽田の民家という設定のドラマの1シーンで、主人公が苛々する気持を表現するのにその安アパートの上空ぎりぎりを航空機が大音響で通過するという実景をはさむことを思いつき(台本にはなかった、が)、ありものを3日ぶっ続けの徹夜で調べましたがやはりなく(騒音公害裁判なんかの参考資料VTRを見ても、全然迫力のあるのはなかった)、1日30万円の映画用クレーン(テレビだとトラックの荷台に乗せた安物で5万円ですむ)を借りて新撮して、始末書を書かされ(台本が指定していないというのが、敗因)ました。
 まあ、これは映像がそれ自体で完結してしまっているテレビの場合ですが、作品の一部を構成する実景映像としてのライブラリーというのは難しいという気がします。参考資料として用いるマンガの場合は、これはまた、話がややこしくなるとは思うのですが。
 

 註:この一文は、ブログ【たけくまメモ】で問題になっている背景画に関するエントリーにトラックバックしたものです。