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今週の一枚:「DARK CRYSTAL」吉田美奈子 1989

2006年05月08日 | Fuku-music
【Fuku】

今週の一枚では初の女性アーチストだと思いますが、私のレコード棚では非常に大きな面積を占めている、日本を代表する"VOICES OF MUSIC"の孤高の女王こと吉田美奈子氏、の'80年代を代表する名盤「DARK CRYSTAL」です。

'83年のアルファレコードからの「In Motion」から6年、その間はどこのレコード会社にも所属せず、全くフリーの立場で'86年に自主制作で3000枚限定の超ゴスペルアルバム「Bells」を発表した以外は表舞台から姿を消していた彼女が、創美企画という広告会社が初めて手がけたレーベルの第一弾として突如表舞台に戻ってきた作品が「DARK CRYSTAL」。この一年後にはさらにこれを進化させた形の「Gazer」を発表し、アルバムプロデュースから打ち込みものの演奏、サウンドコーディネートまで全てを一人で作り上げて、改めて彼女の才能の凄さを世に知らしめました。

彼女は、非常に早くにコンピューターミュージックとCompact Diskへの取り組んでいたことはあまり知られていないのですが、YMOが世に出る前からシンセサイザーを駆使した電子音楽を取り入れて、打ち込みやサンプリングなどの技術にも早くから取り組み、このDARK CRYSTALはその彼女の多彩なる才能が花開き、多重録音のコーラスワークは当たり前ですが、フェアライトとミニ・ムーグを駆使してのベース、ドラムスの音質の厚い非常に重く鋭い音は、このアルバムの特徴であると共に、聴いた人に強烈な音の洪水を浴びせる日本では他に例を見ない強烈なファンクアルバムとしても非常に高く評価されています。

しかしながら、彼女の最大の魅力はやはりあの人間離れした"声(VOICES)"で、低音域の重く沈みこむような伸びと高音域の圧倒的な声量は、日本ではこの人に匹敵する歌い手はおそらくいないでしょう。このアルバムでも、最初の「Starbow」のラストの盛り上がりはもう殆ど人間業とは思えない血管が切れそうなスリリングな声を聴かせてくれます。7曲目の「凪」のスローな心地よいバラッド、8曲目(ラスト)の「December Rain 」の殆ど一発録音のピアノ弾き語りは、彼女本来の圧倒的な高音と声の伸びを聴かせてくれて、このアルバムの白眉だと思います。

創美企画盤は、鋤田正義氏の画像と故ペーター佐藤氏のアート・ディレクションも秀逸で、この後'95年に再発されたMCAビクター版ではジャケットが変更されてしまったのが非常に残念です。これはオリジナルのほうです。

1973年の「扉の冬」でデビュー以来、30年以上にわたって日本のポップミュージックの本当の歌の女王(ディーヴァ)として今も活躍し続けている彼女。
最近もてはやされている若手のディーヴァと呼ばれる女性シンガーが、ケツをまくって逃げ出す(^^;;;;;;ほどの圧倒的な声の存在感。今後も第一線で活躍して続けて欲しいですね。最新作の「Spangles 」も秀作です。

DARK CRYSTAL MINAKO YOSHIDA
SHB -1001, 1989 SOHBI KIKAKU CORPORATION,