先日、モハメッド・アリのDVDを見たらたまたまBSでそのウィル・スミス版の「アリ」もやっていた。
なんという偶然。
正直、前回も書いたけどウィル・スミスの方は大写しのフットワークの白いシューズだけが印象に残った感じだったんだけどこんな長い映画だったのね?
しかも前半はアリというかどちらかと言うとこれも先日見た、マルコムＸが主体のちょっと政治的な映画っぽくも作られているみたい。
もともとリアルでも「マルコムＸ」を見てから「アリ」を見たんだけど、あらためて短時間に同じ工程を踏んで見てこんなに「マルコムＸ」が出ていた印象は無かったのでちょっとビックリしました。
でも、この映画の中のマルコムはアリに迷惑をかけないよう街を去ったことにしてコッソリ試合を見にきたり、長い時間登場する割にはカリスマ性もイマイチでなんかやけに弱弱しく描かれていた。
ただ、アリが最初にチャンピオンになるまで、そして「ネイションズ・オブ・イスラム」に入信してイライジャに広告塔として見込まれ「マハメド・アリ」と改名するあたりは結構描かれている。
また、徴兵にとられてそれを拒否するいきさつも描かれている。
しかし、いまひとつパンチにかける。
全部描いてはいるのだけどマルコムＸも精彩ないしアリの口から出てくる発言も迫力に欠ける。
代わりに、結婚再婚を繰り返す女性との描写がやたら目に付いた。
ウィル・スミスは女ったらしだと思うけどアリもこんな感じだったのかねぇ?
とゆーか、思うにアリは自分の信念を貫いた人なんだからもっとその心の中の怒りとか必然性のような動機付けの部分があるわけでそこの描写が欠けていたように思う。
天敵アナウンサ、ハワード・コーセルとアリとの関係はユーモラスによく描かれていたと思うが最初にアリを鍛え上げスターダムにのし上げたトレーナ、ドリュー・バンディーニ・ブラウンにせっかくジェイミー・フォックスを起用していながらその関係をきちんと描ききれていない。
ボクシング映画のトレーナーとの関係は普通でも、もっとダイ・ハードに描かれているのが定石ですよね?
最後に、アリが宗教にこだわらなくなった描写としてユダヤ教のこのトレーナを復帰させる、という程度の描写なのだがボクサーの師弟関係としてもアリ自身の宗教へのこだわりにしてもどちらもきちんと描ききれてない「ついで」な感じだった。
そしてエピローグは例の「キンシャサ」の部分になるのだが、そこはまるで先日のドキュメンタリーの模倣と思えるシーンの連続で、ある意味、どう描くのか、どう演じるのか、の興味本位で見ておりました。
全体に、メリハリがないけど細かいエピソードまでもが描かれているので「マルコムＸ」と「モハメド・アリ かけがえのない日々」 を見た上でバックボーンを把握する補足的な感じの映画としてはよかったかな。
僕はリアルを描いた映画、って凄くハマルんだけどこの映画に関してはメッセージが政治なのか宗教なのかラブロマンンスなのかハングリーな生き様なのかいまいちフォーカスがどこなの?という感じで、だから全体に印象の無い映画になるんだな、と思いました。
辛口評はあまりしない性質なんですがこの映画はもしかするとアリやマルコムＸの過激性をオブラートに包むために作られた映画なんでは?とまでも思ってしまいます。
ウィル・スミス モハメド・アリ 、
ジェイミー・フォックス リュー・バンディーニ・ブラウン
ジョン・ヴォイト ハワード・コーセル
ジェイダ・ピンケット・スミス ソンジー
チャールズ・シュリフォード ジョージ・フォアマン 、
ミケルティ・ウィリアムソン ドン・キング 、
監督 マイケル・マン
"ALI"
米'01 157分
俺流評価 ★☆☆☆☆
おまけの一言
・アリの一人目の奥さん役はウィル・スミスのリアルの奥さんです。
この当時は彼のCD「Willennium」にも子供と共に声の登場しておりました。
Matrix2と3では亡くなったR&Bシンガーで女優Aaliyahの代役をやってましたよね。
