りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“スティーブ・ドガー” ―全10場―

2012年03月18日 20時19分41秒 | 未発表脚本

    


       



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     〈 主な登場人物 〉


    スティーブ・ドガー  ・・・  エリート出世してきた議員。

    クラウニー  ・・・  スティーブの友人。警察官。

    アナベル  ・・・  村の娘。

    キティ  ・・・  アナベルの妹。

    アヴェリー  ・・・  アナベルに想いを寄せている青年。

    シャロン  ・・・  スティーブに想いを寄せる。

    アイザック  ・・・  警部。

    ジェラルド・マクレーニ  ・・・  政治家。



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    ――――― 第 1 場 ――――― A

         開演ベル。音楽流れる。
         スティーブの台詞に被せて、音楽段々大きく。

  スティーブの声「・・・見つけたぞ・・・。これで、マクレーニ氏の汚
            職の事実が判明する・・・。長年、信頼してきた
            人物の裏を暴くような真似はしたくなかったが・・・
            。マクレーニ氏のしてきたことは・・・決して許さ
            れることではない・・・。何時までも隠し通せるも
            のではないんだ・・・。」

         幕が開く。
         フェード・インする。と、森の風景。スーツ姿の
         一人の男(スティーブ)下手より、腕を押さえ
         ながら息を切らせ、走り登場。後ろを気にする
         ように歌う。

         “悪に手を染めるのは
         容易いこと・・・
         自尊心を殺し
         私利私欲の赴くまま
         ただ突き進めばいい・・・
         少しの正義も
         持ち合わせていないなら
         それを見て見ぬ振りすることなど
         何の造作もないこと・・・
         人の生きる道から外れた
         それが自分の人生と思うなら・・・
         俺はそれを正すまで・・・
         例えこの命を賭けての
         大仕事であろうとも・・・”

         小川の流れる音が静かに聞こえる。
         スティーブ小川に寄り、膝をつき、片手で
         水をすくい口に含む。
         一息ついて上着を片方脱ぎ、シャツの腕
         を捲くり上げ、腕に負った傷を水で濯ぐように。
         苦痛に顔を歪める。
         上手より、髪を無造作に結んだ一人の娘
         (キティ)、桶を抱えて登場。

  スティーブ「・・・いっ・・・た・・・(後方に人の気配を感じて。)誰だ
         !!(振り返る。)」
  キティ「・・・ごめんなさい。」
  スティーブ「・・・(溜め息を吐く。)なんだ・・・餓鬼か・・・。」
  キティ「餓鬼じゃないわ!!もうれっきとしたレディよ!!昨日
      で16になったんだもの!!」
  スティーブ「(ぶっきら棒に。)そりゃ、おめでとう・・・。(再び傷を
         洗うように。)」
  キティ「私はキティ!あなたは?」
  スティーブ「・・・狼男・・・。」
  キティ「狼男?(クスクス笑う。)」
  スティーブ「・・・ママに教わらなかったか?見知らぬ男に声を掛
         けるな・・・。そいつらは皆、狼男に変身するんだぞ・・・
         って。」
  キティ「(楽しそうに聞いているように。)へぇ・・・知らないわ!だ
      ってパパもママもいないもの!」
  スティーブ「(振り返って、キティを見る。)・・・あ・・・そりゃあ悪か
         ったな・・・。」
  キティ「平気よ!(背後から、スティーブを覗き込むように。)如何
      したの?怪我してるの?」
  スティーブ「ああ・・・。」
  キティ「痛そう・・・。(何か思いついたように。)ねぇ!(スティーブ
      の腕を引っ張って。)家へいらっしゃいよ!!」
  スティーブ「(溜め息を吐いて。)おい・・・。俺のことは放っておい
         てくれないか?」
  キティ「駄目よ!!怪我してる人を、放ってなんておけないわ!
      !ね!!家には名医がいるのよ!!」
  スティーブ「・・・名医・・・?」
  キティ「そう!!(嬉しそうに。)だから来て!!(スティーブ
         の腕を引っ張るように。)」
  スティーブ「おい!!」

         スティーブ、キティに引っ張られるように、
         上手へ去る。

    ――――― 第 1 場 ――――― B
 
         入れ代るように、下手より一人の青年
         (アヴェリー)登場。歌う。  

         “なんて清々しい日和なんだ
         丸で全ての生き物の
         息吹が間近に感じられるよう・・・
         君の肌の温もりが
         頬を過ぎ去っていくよう・・・
         君の為に世界は回る・・・
         君の為に全ては始まる・・・
         明るい日差しが眩しいように
         君の瞳に映る朝露の雫が
         キラリと光った宝石よりも
         美しいT感じるのは
         屹度僕だけでない筈・・・
         ・・・君は僕のもの・・・”

         フェード・アウト。
         紗幕閉まる。
 
    ――――― 第 2 場 ―――――
   
         紗幕前。
         曲調変わり、上手スポットにクラウニー、
         浮かび上がり歌う。ゆっくり中央へ。

         “悪に手を染めるのは容易いこと
         自尊心を殺し
         私利私欲の赴くまま
         ただ突き進めばいい・・・
         少しの正義も持ち合わせていないなら
         それを見て見ぬ振りすることなど
         何の造作もないこと・・・
         人の生きる道から外れた
         それが自分の人生と思うなら・・・
         俺はその道に沿うまで
         たとえ神の心に背いた
         罰せられることだとしても・・・!!”

         クラウニー、スポットのまま、一人の男(政治家
         ジェラルド・マクレーニ)の声が、重々しく響く。

  ジェラルドの声「まだ見つからないのか!!」

  クラウニー「・・・はい・・・。」

  ジェラルドの声「一体何処へ逃げたんだ!!あの書類が世間
            に流れたら如何なるのか分かっているのか!!
            私の政治生命はおろか、おまえの警察での出
            世街道も、間違いなく断たれるんだぞ!!」
 
  クラウニー「分かっています・・・」
  
  ジェラルドの声「・・・だが、まさかあいつが裏切るとはな・・・。一
            番信頼して、今まで全てを任せてきたと言うの
            に・・・!!兎に角、一刻も早くスティーブを捜し
            出して、書類を取り返してこい!!あれがなけ
            れば、いくらあいつが言いたいことを言おうが、
            私の力で如何にでもなる!!」

  クラウニー「・・・はい!!」

         フェード・イン。
         クラウニー、何かホッとしたように、大きく
         溜め息を吐いて、下手方へゆっくり歩いて
         行くと、下手よりシャロン登場。

  シャロン「(クラウニーを認めて、足早に近寄る。)ああ、クラウニ
       ー!!いい所で会った!!」
  クラウニー「やあ・・・」
  シャロン「スティーブが行方不明なんだって!?今、彼の事務所
       へ寄って来たら、昨日から連絡が取れなくて困ってるっ
       て・・・!!あなたなら知ってるんでしょ!?彼の行きそ
       うな所!!教えて頂戴!!会いに行くんだから!!」
  クラウニー「・・・ちょ・・・ちょっと待ってくれよ・・・。そんなに捲し立
         てるなよ・・・。君がスティーブの心配をするのは分か
         るけど、俺だって知らないんだ!こっちが知りたいよ、
         全く・・・。」
  シャロン「嘘!!」
  クラウニー「嘘なんか吐かないよ・・・。(溜め息を吐く。)」
  シャロン「じゃあ一体、何処へ行ったって言うの!?」
  クラウニー「(意地悪そうに。)何処かで、いい女でも見つけて、
         上手いことやってるんじゃないのか?」
  シャロン「まあ!!何てこと!!彼がそんなことする筈ないでし
       ょ!!私がいるんだから!!」
  クラウニー「おいおい・・・。一体いつから君がスティーブに、そう
         言える女になったんだい?昔からあいつのことを知っ
         てて、あいつが付き合ってきた女の名前も全部言え
         る俺としちゃ・・・君の発言は問題だなぁ・・・。」
  シャロン「いいでしょ!!その内そうなるんだから!!私の名前
        もちゃんと入れておいてよ!!それより本当に何処行
        っちゃったのかしら・・・。そうだ!!あなたの所で捜索
        願い出してよ!!ね!!あなた刑事なんだし、出来る
        でしょ!?」
  クラウニー「・・・それで俺に捜せってか・・・?」
  シャロン「そう言うこと!!」
  クラウニー「やれやれ・・・。」
  シャロン「早く行きましょ!!」

         シャロン、クラウニーの腕を取って、足早に
         下手へ去る。

    ――――― 第 3 場 ――――― A

         音楽で、紗幕開く。
         と、家の様子。中央に椅子とテーブル。
         上手よりスティーブの腕を引っ張って、
         キティ登場。

  キティ「(スティーブの手を引っ張って、椅子に座らせる。)さあ、
      ここへ座って!ちょっと待っててね!!(回りを見回して、
      大声で叫ぶ。)アナベル!!アナベル姉さん!!」
  スティーブ「・・・姉さん・・・?」

         下手より、粗末な服装だが、透き通るような肌の、
         黒髪を解き流した美しい娘(アナベル)登場。

  アナベル「如何したの、キティ?そんな大きな声で・・・。(スティ
        ーブを認めて。)どなた・・・?」

         スティーブ、アナベルを認め、その美しさに
         一瞬息を飲む。

  スティーブ「(立ち上がって。)・・・突然すまない・・・。僕は・・・」
  キティ「(口を挟むように。)狼男さん!(クスクス笑う。)」
  スティーブ「キティ!」
  アナベル「狼男・・・?」
  スティーブ「いや、違うんだ!僕はスティーブ・ドガー。」
  キティ「まあ!姉さんになら、さっさと自分から名乗るのね!!
      スティーブ!!」
  スティーブ「レディに対しての礼儀だからね、おちびちゃん!」
  キティ「失礼ね!!“キティ”よ!!」
  スティーブ「(声を上げて笑う。)いたっ・・・(苦痛に腕を押さえる
         。)」
  キティ「(怪我を思い出して。)そうだ、姉さん!!スティーブ、怪
      我してるの!!診てあげて!!」
  アナベル「・・・まあ・・・。」

         アナベル、スティーブの側へ。腕を取って診る。
         
  スティーブ「・・・君が・・・名医・・・?(腰を下ろす。)」
  アナベル「(不思議そうに。)・・・名医?」
  キティ「そう!!アナベルはこの村で、唯一薬草の勉強をして
      いる名医なの!!ね!!」
  アナベル「キティったら・・・。またそんな冗談ばっかり・・・。」
  キティ「だって本当じゃない!この前だって、隣のローラ小母さ
      んが蛇に噛まれて死にそうになった時、姉さんの調合した
      薬草で、命拾いしたんじゃない!」
  アナベル「あれは・・・」
  キティ「それより早く診てあげて!」
  アナベル「そうだった・・・。(スティーブの腕を診る。)・・・銃・・・?
        」
  スティーブ「・・・悪いが・・・聞かないでくれ・・・。君達の為だ・・・。
         」
  アナベル「(スティーブを見詰める。テーブルの上の籠の中から、
        数本の瓶を出し、同時に出した小さいボールの中に
        合わせ入れ、そこへガーゼを浸すように。)・・・弾は抜
        けているようですから心配いりませんわ・・・。(ガーゼ
        をスティーブの腕に当て、包帯を巻く。)」
  スティーブ「手際が良いんだね。」
  アナベル「そんな・・・。(恥ずかしそうに。)」
  キティ「来てよかったでしょ?スティーブ!」
  スティーブ「(微笑んで。)ああ・・・。2人でここに・・・?」
  アナベル「ええ・・・。(瓶などを籠へ仕舞いながら。)」
  キティ「父さんも母さんも、私が小さい頃に亡くなったの!それ
      からずっと、姉さんが私の親代わり・・・。」
  アナベル「(首を振る。)ううん。私の方がキティがいるお陰で頑
        張ってこれたのよ・・・。(スティーブに。)何か飲み物で
        もお持ちしますわ・・・。と言っても、傷に効くようなもの
        って、果実酒くらいしかないですけど・・・。(微笑む。)
        キティ、蔵から樽を出すの、手伝ってくれる?」
  キティ「はーい!(スティーブに。)姉さんの作った果実酒は、どれ
      もこれも絶品よ!何かお好みは?」
  スティーブ「(思わず立ち上がって。)あの・・・!!」
 
         アナベル、キティ、不思議そうにスティーブの
         方を見る。

  キティ「如何したの?果実酒、嫌い?」
  スティーブ「そうじゃないんだ!・・・迷惑は分かっている・・・!!
         迷惑を承知で頼みたいんだ!!」
  キティ「頼み?」
  スティーブ「・・・暫くここへ置いてくれないか・・・?」
  アナベル「・・・え・・・?」
  キティ「何だ、そんなこと!!いくらでもいたって構わないわよね
      お姉さん!!私達2人しかいないんだし!!」
  アナベル「・・・(少し困惑したように。)でも・・・。」
  スティーブ「君達の迷惑になるようなことは絶対しない・・・。だか
         ら頼む・・・!」
  キティ「わあ!お兄さんが出来たみたいで嬉しいなぁ!!私、家
      の中に男の人がいたこと、全然知らないでしょ?ね、お姉
      さん!!構わないわよね!?」

         アナベル、キティの様子を見て、少し考える
         ように。

  キティ「お姉さん?」
  アナベル「・・・(微笑んで。)そうね・・・。何もお構いは出来ませ
        んけど・・・。」
  スティーブ「ありがとう!!(思わずアナベルの側へ駆け寄り手
         を取る。)」
  アナベル「あの・・・。(驚いて。)」
  スティーブ「(ハッとして手を離す。)ごめん!!」

         キティ、嬉しそうにそんな様子を見ている。

  アナベル「あ・・・飲み物入れてきますね・・・。キティ。」
  キティ「はい!」

         アナベル、キティ上手へ去る。
         スティーブ、思わず握った手を見て、照れた
         ように首を傾げる。               
         











    ――――― “スティーブ・ドガー”2へつづく ―――――













    この“アナベル”さんと言う名前の登場人物が、春公演
   作品にも登場します(^^)v・・・が、春公演のアナベルさんは、
   とっても勝気なお嬢さんです^^;こちらのアナベルさん・・・
   楚々とした感じですね~^_^;




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     (どら私的余談^^;)

    子どもが入院したことはお話ししましたが、全く動いては駄目
    な為、朝一から21時の消灯まで病院で付き添って、そこから
    一駅先の家まで自転車をぶっ飛ばして・・・(ホント、ぶっ飛ば
    す・・・と言った表現がピッタシだと、自分で思うのですが・・・)
    帰って来るのです・・・^_^;
    が・・・その帰り道が、どのルートを通っても真っ暗の・・・淋し
    い道なのです(>_<)今日も少しでも明るい道を・・・と思い、
    昨日とは別の道を通ってみたのですが・・・やっぱり暗くて・・・
    永遠に続く訳ではない、今だけのことだから・・・と、自分に言
    い聞かせ、また明日も別の道を探してみようと思っています
    (-"-)

    病院にいる間、余りにも暇なもので・・・その内パソコンを持っ
    て行こうと考えてみたり・・・今日は、春公演のお人形作りを
    少しでも進めようと、作り掛けで放ったらかし状態だった、
    犬の村長さんを持って行って仕上げたのですが・・・如何せん
    ・・・病院の為、写真を撮ることが、非常に難しく・・・一枚だけ
    ・・・ベットに腰かけたまま食事が出来る・・・よくテレビなどで
    見かけるテーブルの上に置いて撮ってみましたが・・・大きさ
    やアングルなどが全くなってなくて・・・すみません(>_<)



        
       


    看護師さん達に、「病院でもやって欲しいわ~」などと
    言われ、子ども達が辛い思いをして泣いているのを身近
    に聞いて・・・ベットの上の狭い空間で、親も子もストレス
    が溜まり気味で怒り怒られしてるのを見てると、ひょっと
    して、この何てことない荒っぽい作りのお人形でも、何か
    の役に立てることがあるのではないか・・・と・・・また、
    新たな可能性を模索するには、丁度よい機会になった
    ような気がしています(^.^)




    2012年3月18日(日)
   
    最近は、病院にいる間、ズーッと脚本ばかり書いています。
    ・・・と言っても、まだ1作目が書き終わろうか・・・と言った
    ところですが・・・^^; 
    そちらは、現在グーグル版“ワールド”で紹介させて頂いて
    いますが、またグー版の新作も書いて行こう・・・と思ってい
    ます(^^)
    今、非現実的な世界があると言うのは、何だか息抜きに
    なって、とっても助かっています~(>_<)













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