子供の頃、夕刻に木枯らしの吹く縁側でひとり吹く親父の尺八の音は
それはそれは恐ろしいものでした。
鬼気迫る親父の顔も怖いものでした。
今にも「お化け」がヒュ~と出て来そうでした。
それ以来、トラウマになってしまい尺八が嫌いになってしまいました。
あの尺八、一体どうしたろう。
数年前に実家に問い合わせても所在が分かりませんでしたが
昨年、戸袋の中で見つかったと兄が送ってくれました。
日本の伝統的な楽器の領域を超え、あらゆる音楽との融合を試みる
若手の尺八奏者・神永大輔さんがライブで
この尺八を演奏するとのこと。
吉祥寺のライブハウス「曼荼羅」に出掛ける。
あぁ、子供の頃に聴いた懐かしい音色です。
こんなに優しい音だったんだ。
演奏中の神永大輔さんの顔も親父に見えてくる。
演奏会が終わり、私が吹くとスースー、音にならないんですよというと
神永さんは尺八を吹くにはアゴの骨格が大事だそうで
これは遺伝性のものなので、吹けるようになりますよと励まして頂くが
神永さんの唱える「アゴの骨格遺伝論」は
私には証明されていないようだ。
28年振りの親父との再会。