福井利佐blog

切り絵アーティストの日々

熊谷守一「生きるよろこび」

2018年03月02日 | 日記


東京国立近代美術館にて行われている

熊谷守一
「生きるよろこび」

に行ってきました。




私自身若いころは、熊谷守一さんは存じていなかったのですが

20代後半くらいでしょうか

とあるギャラリーに友人の展示を見に行ったとき


作品を買ったので
ギャラリーのオーナーさんといろいろ手続きやら
お話しをしていたら
閉館の時間になっていました。


そうしたら、ギャラリーの常連さんでお知り合いの男性の方が
いらっしゃいました。

オーナーさんが

「あら!久しぶり。どうしたの?」

なんて声をかけると

なんだか頬が紅潮していて
ウキウキしている様子。


「いや実はね〜」


なんて、取り出したのは

たった今購入したという作品が入っている

A3くらいの大きさの箱でした。




開けてみると


「雨滴」


と墨で書かれた「書」の作品でしたが

これが熊谷守一さんのものでした。
(しかも外が雨でした。)



その時、初めて熊谷さんを知ったのですが

その「雨滴」の文字の素晴らしさに目が釘づけ!


これはただものじゃない!と身体中がゾワゾワしたものです。




「雨滴」の文字の点々の部分が雫の形になっていて

全体的になんとも素朴で簡潔でありながら

絵のような書のような素敵な作品だったのです。


その日は帰ってから熊谷守一さんについて速攻調べたものです。



しかし、豊島区のご自宅跡を美術館にした
熊谷守一美術館にはなかなか行く機会がなくて
実物の作品は単発でしか見たことがなかったのですが

今回は、東京国立美術館にて個展が開かれるというのですから
一堂に多くの作品が見れることをとっても楽しみにしていました。





おそらく、97歳でお亡くなりになられた熊谷さんの
膨大な数の作品の中のほんの一部とは思いますが
代表的な作品が時系列に並んでおり
作風の変化や心情の変化が見て取れて
とても満足しました。





今見ても、色の配色とかオシャレすぎて
晩年自宅の敷地から一歩も出ない
ほぼ仙人化していた容貌からは
想像もできない(←失礼)、感性が溢れすぎていて感動です。


熊谷さんの作風は、かなり簡素化されたものが代表的なものですが、
もともとは普通に油彩も巧みに描ける方。
いろんな試行錯誤があり
この画風に達したわけなのです。


展覧会会場には多くの年配の方がお越しになられていましたが
定年後に趣味で絵を始めました〜的な方でよくいらっしゃるのが、
いきなり「素敵な作品だから」と熊谷さんのような
簡素な表現を真似して描かれる方がいらっしゃりますが、
この作風に行き着くまでの紆余曲折の過程あっての、
意味があってのこの作風だということを
ご理解いただきたいと
常々思うわけです(←なに様?)。


ピカソとかの画風を真似する方もそうです。
ピカソももともと普通にうまく描ける人ですからね。
青の時代とか、いろいろ暗い時代もあって
それであの作風に行き着いてますからね(←だからなに様?)。


なんてことを、主人と話していたのです(笑)。
(主人のお母様がもれなくその類いだったとか。)



私も、あるホテルのロビーで、
ご年配な方たちの趣味の切り絵展みたいのを見た時に
ある作家さんの切り絵の絵柄をそのまま切ったものばかりでビックリしたものです。


話は逸れましたが、
本物は違う!ということです(笑)。





欲をいえば、もっと書があるのを楽しみにしていました。


おそらく、たくさんあるはずですが
6点しか来ておらず
もっと見たかったな〜。


しかし、そのどれもが秀逸。(あたりまえ)

また選ぶ言葉が秀逸です。


「かみさま」とか「すずめ」とか

普通「書」として描かないような題材のチョイスが痺れます。




基本的には、作家の方は純朴な心の方が多いですよね。
お子様の死や友人の死、いろいろなものに直面してどんどん研ぎ澄まされていったのですね〜。
本人はそんな中、生きる希望を失わず長生きされましたからねー。


年を取っていくごとにどんどん純真になっていく熊谷さんがとても素敵でしたし、
文化勲章とかも辞退する域に達しているのが
本当に羨ましいです・・・。





また、個人美術館の方にも行かなくちゃなと思いました。



娘くらいなら付き合ってくれそうです。






帰りは主人とさくっと



赤坂飯店で赤坂ラーメンを。


主人は若かりし頃、よくここで仕事の打ち合わせをしたとか。
なんだか、「なつかしー」といいながら食べていました。

店員さんが、みんな店内のテレビでオリンピックの「カーリング」をみていたのが印象的でした(笑)。



それで、娘が帰ってくるので急いで帰りました〜。