~経済ニュースの森の奥~ ・・マクロな視点から。

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No.8 郵政民営化の“森の奥” ~米国vs日本 340兆円争奪戦予測~

2005年10月09日 | 過去ファイルNo2~No10へ
10/7国会郵政審議委員会・・竹中大臣発言「国債市場にショックを与えない。十年かけてショックを吸収しながら(民へ)還元する」 民主党「それでは資金の流れが官⇒民にとはいえない。民主党案なら・・」(日経10/8第2面より)

・・・・

自民党案で100%成立する郵政法案の国会審議での、いわば虚しい論戦なわけですが、報道的には発言の中身より新生民主党の苦闘ぶりをワイドショー的に伝えることで野次馬的民衆心理をそそらせる記事です。

「官から民へ」の一言で大勝した自民党ということで、低レベルな弁論大会よろしく本質に触れず言葉のアヤで反論する民主党。ありがちな与野党の論戦はどうでもいいとして、ここでは「郵政民営化後の340兆円が国債市場から逃げていっては困る」という竹中氏のホンネが聞けたわけで、これは自民党案の郵政民営化がもたらす国家経済的に非常に重要な未解決問題であるわけです。ピンと来ない方のために改めて書くとそれは以下の懸念です。

●民営化によって膨大な国債の最大の資金源であった郵政・簡保のカネが、新郵便会社によって自由な運用にされた場合、国債の支え手を失う危険性があり、国債暴落につながりかねない

というものです。
事情に詳しい方ならよくご存知のことだと思いますが、郵政民営化はアメリカがオフィシャルに日本政府に要請し、それが実質的な日米公約になっていたわけで。
竹中氏としては米からの政治的圧力は受け入れなければならないと覚悟を決めつつも、その裏にあるアメリカの思惑に相当悩んだと思われます。

肝心のアメリカの郵便局は国営なのになぜ日本の民営化にこだわるのか?
340兆円という世界最大の眠ったカネを米国債のファイナンンス(手当て)のために使いたいのでは? または巨大金融軍団ウォール街にカネが流れていってしまうのでは?
という本音が見え隠れしていることは、彼はとっくに承知していたはずです。

一見突飛に見えるこの話の裏付け情報として
①アメリカ国内の懸案である年金改革に必要な財源が大幅に不足している
②そうでなくてもアメリカ政府は永遠に外国から米国債を買いつづけてもらわなければ今の消費バブル経済が破綻してしまう
③日本では株式交換制度の変更という手段で、外資による会社買収を容易にする「会社法」が前国会で成立している
④340兆円という巨大な資金を運用した実績のある会社は世界に一つもない。唯一そのスキルがあって本気でその運用に乗り出すとしたら世界一の金融仕手集団であるウォール街以外難しい
・・・という“状況証拠”があります。

もし本当にアメリカ政府&ウォール街が本気を出したら、それは結果として日本国内の膨大な郵貯資金がアメリカに向かうということであり、日本が国内で国債の引き受け手を失い日本国債のファイナンスができなくなってしまう危険性があるということ。 そして更に、それは日本全体のキャピタルフライト(資本の海外逃避)を起こす引き金にもなりかねない。
それが暗に意味するところは、日本国債の暴落⇒財政破綻という最悪のシナリオです。


小泉-竹中は民営化についてはアメリカとの公約通り実現するが、新郵便会社の資金340兆円に関しては簡単に他へ逃がすわけにはいかない。つまり国の借金を管理するため政府が関与していく。
「官から民へ」キャッチフレーズは実際にはまかり通らないこと、と開き直っていて、それ自体とても大きな自己矛盾を抱えているわけです。

繰り返しのワン・ワードキャッチフレーズで大部分の国民を洗脳し政局を安定させたあげく、信認を得たとたん340兆円は「官から“国へ”」という態度には、もっとマスコミや国民が怒りを表さなければいけないと思います。

しかし現実には国の天文学的借金の返済計画をヌキにして正常な民間経済は成立し得ないという抜き差しならぬ事情があることも確かで、それは民営化論議の時点でとっくに皆わかっていなければならなかったはず。ワンフレーズに騙された我々国民の熟慮も足りなかったかもしれません。

結論として340兆円については少なくとも海外に流出しないような何らかの保護規制が必要です。
もし新会社の裁量の運用で自由に民へ流れてもいいとなったら、いずれ現在のアメリカ式グローバル資本主義帝国に吸い取られてしまう可能性は大きいと思います。金融経済は多くの日本人が考えている以上に地球ボーダレスな仕組みになっている事をもっと認識すべきだと思います(皮肉にも竹中氏はそれを痛いほど分っているようだ)。

百歩譲ってウォール街はともかく、新郵便会社の資金でアメリカ国債を買うような流れだけは阻止しないと、日本の借金を放ったらかしにしてアメリカの借金に貢献するというとんでもない事態になる可能性があります。

残念ながら、(当ブログファイルNo2~6に書いたように)歳出削減や増税を数年間やったところで我が国の借金問題は解決しません。少なくとも解決の光明がはっきり見えてくるその時代まで、340兆円が民活にたくさん回って来ることは期待できないかもしれません。

郵政民営化の最大のメリットはいうまでもなく、官の既得権益や利権など、国家や国民が全く目の行き届かない不透明な資金の源を断つということで、結果歳出削減に大きな貢献を期待されているわけでそれ自体は国益に反するものではありません。
また小泉およびブレーンの成果として族議員たちの崩落という民にとって喜ばしい事態も起こりましたね。
しかし上記のように考えると民営化のもうひとつの大きな期待であった「340兆円が民間に流れて経済が活性化する」と小泉-竹中が主張していた所は、国の借金が暴発しないことを優先するため、絵空事に終わると見るべきではないでしょうか。

むしろ新郵便会社が国債買いを減らしてしまったら、政府としては今以上に民間金融機関から国債をファイナンスせざるを得なくなり、そのことで民間会社に資金が回りづらくなる危険性すら覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
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2 コメント

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誰が決めるのか? (ひろ)
2005-10-19 23:19:51
アメリカ国債を買うという判断を下すのは、誰なんでしょうか??それが問題の本質だと思うのですが。。

逆に言えば、この10年の間に、アメリカ国債よりも魅力的な投資先を国内に作ることが必要なのではないでしょうか?
Re:誰が決めるのか? (ririo)
2005-10-20 04:07:04
ウォールストリート・ジャーナルが少し前に報じた米シティグループの試算の記事は賛否両論巻き起こりましたね。

http://www.janjan.jp/government/0509/0509021909/1.php



確かに問題の根源を突き詰めると、誰が新会社の340兆円の運用責任をとるのか?といったことが議論になります。

民間会社として純粋に利潤を追い求めていくスタンスを取るならば、米系に限らず優秀な海外ファンドや運用機関に回る可能性が大きいと思います。その場合もちろんアメリカだけでなく世界各国に分散投資されるからすべてが米国債に回るわけではありませんが、少なくともリスクが低く4%で回る有力な投資先として世界中のマネーが集まっていることも確かです。



しかし記事に書いたように340兆円は相変わらず国がコントロールしながら運用したいと言っているので、そのとおりになるならば国債を見捨てて民間(国内や海外問わず)へたくさん回ってくるようにはならず、財政保全優先の超低利運用にて国策のための資金源として今後も管理されていくことと思います。

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