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絵本作家・内田麟太郎オフィシャルブログ

悲しい子に見えるもの

2016年05月22日 19時34分51秒 | 日記

     陣崎草子・作 萩岩睦美・絵  文研出版 1300円+税

 本を手にして「うん!?」となりました。陣崎さんは絵本作家でもあるのに絵を自分で描いておられなかったからです。どちらかといえば陣崎さんの絵はこの表紙のような様式化からは遠い絵です。
 でも、物語を読んで頷けました。主人公である香衣はアニメ風な絵を描くのにくらべ、もう一人の主人公といっていい糸子は「芸術的」な絵を描く少女だったからです。そして見えないものが見える少女です。
 二人の町を流れる青竜川は暴れ青竜とも呼ばれ、度々、洪水を起こしていました。江戸時代、川の怒りを鎮めるために娘が人身御供として川に沈められました。桜の花柄の晴れ着を着せられて。桜の子です。

 糸子にその桜の子が見えるのは、糸子が不幸な子どもだったからです。悲しい子には悲しい子が見えるのです。糸子が母親に虐待される場面には息を呑まされます。しかし産土神社である小姫神社は地域の子どもたちをいつも見守ってくれています。神主さん、香衣のおばあちゃん、老い猫のツユさんも。そして地域の大人たちも。

 大人たちは糸子の両親と話し合い、糸子をしばらく離れた町で暮らさせることにしました。お母さんが自分の不幸をそのまま子どもにぶつけていることを、見つめる時間が必要だと考えたからです。
 糸子が町を離れる日。糸子はついに見つけます。「わたしの骨を探して」と訴えていた桜の子の骨を。その骨を香衣と糸子は自分たちの大切なものと一緒に、神主さんに手伝ってもらい神社の大桜の根元に埋めます。

 神主さんの漕ぐ船で、糸子と香衣は青竜川をその町へ向かいます。ふり返ると、まだ蕾だったはずの桜がつぎつぎと満開になりりながら,花吹雪となり散っていきます。これは幻と同時にほんとうです。
 その幻美。わたしはこの場面を映画に撮りたいと思いました。幻と現実の、その悲しさとやさしさの美しさを。

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9 コメント

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「悲しさ」や「やさしさ」 (木枯らしモンジャロウ)
2016-05-22 19:07:09
宮本輝の『蛍川』の映画とは、違う「悲しさ」や「やさしさ」があるでしょうね。
さくらは、美しさだけではないでしょうね。
麟太郎さんが、映画に撮りたいという気持ちが、わかるような気がします。
今日の番号は「黒イヤ」(9618)でした。やはり、明るいさくらが、いいですね。
ああ (内田麟太郎)
2016-05-22 19:39:21
木枯しモンジャロウさま
 おもわず「ああ」となる場面でした。そしてくっきりと映像が浮かんできました。お金があったら映画撮りたいですね。
 黒いやが、もしかしたら幸せを運んでくるかもしれませんよ。黒い歯(おはぐろ)。人妻の誘惑かなぁ。
桜の花 (かふぇのぼうや)
2016-05-22 20:29:17
私が、小学校の時に
父からの、お出掛けのお誘いで
桜を見に行こう
母の前ではそう言ったのに
実は……ツチコノ探し……でした
車の中でツチノコ?なにそれ?動物?
こわいのと、ワクワクと、父変だと
色々思ったことを思い出します
奈良県の北山というところに行っていました
桜の花の下から見る桜が好きで
きれいって言いながら……
父は、ツチノコが見れると良いなって
ツチノコは、いなかったけど
父は、桜吹雪の中の私を見て
毎年来ようなって
言ってくれてました
あれから17年わたしは
桜の花を見ると
笑ってた父を思い出します
当時は、楽しくなかったけど
今は、良い思い出です
ありがとう父と見た桜
ありがとう父
つちのこ (内田麟太郎)
2016-05-22 20:45:16
かふぇのぼうやさま
 つちのこ、どこへ行ったんでしょう。懐かしいですね。一時期、田辺聖子さんがよく書いておられましたが。
 ありがトウですね。
 わが家ではわたしはおトウ、または「りんたろう」です。娘達の親しみと照れくささを感じます。
りんたろう (かふぇのぼうや)
2016-05-22 21:23:19
わたしに歳の離れた弟が出来たとき
名前は、りんたろうと名付けました
父の名前が、そうたろう
尊敬する方の名前が、りんたろう(勝手とは思いますが)
大切な方の名前は、けんたろう
三太郎です
ありがとう
りんたろう
ありがとう三太郎なのです
良い名前です
ふふふふふ (内田麟太郎)
2016-05-22 22:47:56
かふぇのぼうやさま
 こそばゆいです。
 金太郎、桃太郎、浦島太郎。
 日本の三太郎さんでしょうか。
監督デビュー!? (絵本の河)
2016-05-22 23:50:07
麟太郎さん、ついに映画監督デビューか!?
前園姐さんと某所でお会いしましたよ!
映画 (ひでちゃん)
2016-05-23 05:31:37
内田麟太郎さま
それで、お金……納得。映画撮りたいですね。「ざわざわ3号」の映画化。「ある絵詞作家の生涯」、100歳の記念に。
大金 (内田麟太郎)
2016-05-23 07:30:51
絵本の河さま
 映画は気になります。いつもその文法を気にして見ています。
 姐さんはお元気のご様子で何よりです。

ひでちゃんさま
 いや、豪邸と側室。絵本美術館の作品の収集。絵本美術館に置きたい現代美術(彫刻)の購入と、お金はいくらあっても足りません。
 ♪夢で会いましょ~

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