林 住 記

寝言 うわごと のようなもの

広辞苑よりも

2008-01-29 | 拍手

 

 「国民的辞書」という勲章を持っている「広辞苑」の第6版が、岩波書店から発売された。予約だけで34万部に達したそうで、誠にお目出度いことです。

追随を許さぬ人気だそうだが、1冊7875円(7月からは8400円)もする字引に一々追随していたら破産してしまうから、森男は買わない。
だいいち、既に69年5月発行の第2版第1刷3200円を持っているもの。

第2版に一体何万語が収録されているのか数えたことが無いから分からないが、日常生活で使う言葉はせいぜい数百語だろう。だからサライの十字語判断でどうしても埋まらない枡にア・イ・ウ......と適当に入れて、そういう言葉があるのか無いのかを確認する時に使うくらいである。

また、今回の改訂で1万語を増やしたそうだが、表記に間違いがある、と指摘する人がいる。かっこいいを意味する「イケメン」です。

「いけメン」が正しいのに「いけ面」になっているのはイケメンという言葉の成り立ちに知らないからなんだそうだ。
なんでも「かっこいい」を意味する「いけてる」に男性複数を意味する英語、「men 」が組み合わされたのが語源だから、「いけメン」が正しい、とか。

そういう間違いもあるから、森男は広辞苑を追随するつもりは無い。
むしろ、三省堂が発売した「新明解国語辞典」の89年発行第4版第36刷2500円の方を愛用している。

理由は日常生活にはここに収録されている76000語で十分過ぎるからであるし、あの赤瀬川原平先生が「新解さんの謎」という本で推薦されたからである。

先生は、この字引はご婦人に対して辛らつで、世間を斜めに見ている偏屈爺さんが書いた、と看做し、収録された言葉の説明文を色々取り上げ、その可笑しさを指摘し、偏屈さを実証している。
だから読み物としても面白い、と森男は思案している。

本は発売後直ぐに買って、大いに楽しんだ後、リハビリに通っていた国立病院の先生に貸したら病院中を転々とした揚句、行方不明になってしまった。だから、本はもう手許には無い。

それで行き当たりばったりに、例えば「恋愛」という言葉について、新明解広辞苑を較べてみよう。

 れん あい「恋愛」 
    特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来る
    ならば合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられな
    いで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。

☆☆☆!......そこまで言いますか!

 れん・あい「恋愛」
    男女間の恋い慕う愛情。

たったこれだけ!断然、新明解の勝ちでしょ。
それで、次は「合体」について較べてみます。

 がっ たい「合体」
    ①起源・由来の違うものが新しい理念の下に一体となって何かを運営する
    こと。
    ②「性交」のこの辞書でのえんきょく表現。

☆☆☆!......。もう、負けそ。

 がっ・たい「合体」
    ①二つ以上のものが一つになること。合同すること。
    ②心を一つにすること。
    ③原生動物などで、二個の生殖細胞が合一して一個の接合子を生ずること。

貴方、原生動物ですか? お子さまは接合子ですか?

と、まあ新明解のほうがずっと親切で分かり易く、広辞苑はいかにも岩波書店。ヒンヤリとして難解である。

ところで89年発行第4版第36刷の新明解と、69年発売第2版第1刷とを較べるのは、20年も差があるのに不公平だ、と言われるかもしれない。

だが、広辞苑は「芦屋」という項目の説明で、初版時からの誤りを第6版まで改めなかった。すなわち、

 あしや「芦屋・葦屋」
    ①兵庫県東南部の市。阪神間の住宅地。もと精道村の大字。万葉集の葦
    原処女、在原行平と松風村雨の伝説など、文学上の遺跡。

と書いているが、行平と松風村雨の伝説は須磨(現神戸市)が正しく、行平の弟で芦屋に所縁があったとされる在原業平と混同しているのである、のであるそうなのである。(どうもよく分からんですね。在原兄弟は、ま、どうでもいいや)。

このことからも分かるように、89年当時から広辞苑は貴方や森男を原生動物と看做し、蔑視しているのである。多分、広辞苑にとっては今でも貴方と森男は原生動物なのであろう。ふんっ。

なお、新明解は「芦屋」なんていう高級住宅地に就いてのウンヌンは載せておりません。それでいいのです。高級は知らなければ幸せなのです。

そういうわけで、森男は分厚い広辞苑は昼寝の枕に使い、小さくて持ち運び易い新明解を贔屓にして、思庵、つまり厠にまで持ち込んでいる。
そして尻を出したまま長時間を過ごすのである。

それで、しょっちゅう風邪ひいてるんだな。
ハ、ハ、ハ、ハックショーィ。

◎なお、累計販売冊数は広辞苑1100万冊に対し新明解2040万部。
「国民的辞書」の勲章は、新明解爺さんに差し上げたいですね。

▲温泉芸者さんは、「お座敷文化大學」が気になっただけ。記事とは関係ありませんよ。
熱海=広辞苑、伊東=新明解かも。詳しくは(?)伊東観光協会HPをどうぞ。



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