ringoのつぶやき

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「打ち出の小槌あるわけない」、マイナス金利は政府の錬金術にならず

2016年08月25日 21時42分26秒 | 債券
2016年8月25日 00:00 JST更新日時 2016年8月25日 15:21 JST
  • 政府は昨年度、国債発行で約1100億円の超過収益
  • 日銀の国庫納付金は引当金で4501億円も目減り

高価な金を安直に生み出す方法が存在しないように、金融緩和は政府にとって錬金術にはなり得ない-。黒田東彦総裁が導入した異次元緩和とマイナス金利政策は過去に例を見ない低コストでの国債発行を実現した半面、日本銀行の購入負担は重く、政府への納付金が激減している。

  政府が機関投資家向けに発行する今年度の国債額は当初、約152兆円の予定だった。24日に閣議決定した第2次補正予算案では、約158兆円に修正されている。日銀は金融機関から長期国債を今年120兆円購入する「最後の買い手」。ブルームバーグの試算によると、政府がゼロ%を下回る利回りでの入札で得た超過収入は昨年度に約1100億円に上った。一方、日銀は国債関連の損失に備えて引当金を4501億円積み増し、国庫納付金が大幅に減少。超過収入と引当金を差し引くと約3401億円のマイナスになる。

  結局のところ、政府が利子を受け取って国債を発行できるのは、日銀がその矛盾を負担しているからだ。両者の媒介役を務める金融機関は政府からマイナス利回りで購入した国債を、日銀のオペ(公開市場操作)でより深いマイナス利回りで転売する「日銀トレード」で利ざやを稼ぐ。日銀は保有債券の平均利回りが下がる上、額面を上回る価格での購入で生じる損失を償却。異次元緩和からの出口で予想される巨額の赤字に備えた引当金の積み増しを始めた。

 
Taro Aso, Japan’s deputy prime minister and finance minister, left and Haruhiko Kuroda, governor of the Bank of Japan
Taro Aso, Japan’s deputy prime minister and finance minister, left and Haruhiko Kuroda, governor of the Bank of Japan
 
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg *** Local Caption *** Taro Aso; Haruhiko Kuroda

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは「政府の国債発行コストは下がっても、日銀からの国庫納付金は引当金積み増しによって減るので、統合政府で見れば構造的にほぼ中立だ」と指摘。「政府は国債費に生じた余力を今年度第2次補正予算に充てられるが、日銀は今年度決算でも国庫納付金が減るだろう。財政健全化に打ち出の小槌(こづち)があるわけではない」と言う。

  財務省は表面利率0.1%の10年利付国債(343回債)を6月から今月にかけて、約8.1兆円発行。3回の入札における平均落札利回りはマイナス0.13%、募入平均価格は102円32銭だ。割引現在価値に基づく調整などを考慮しないで単純計算すれば、政府が証券会社や銀行から借り入れた金額は約10年間の利払いと償還額の合計を上回り、お金をもらって借金できたことになる。

  借入額と利払いの合計を上回る超過収入は、税収の上振れなどとともに前倒債に算入される。前倒債は翌年度に見込まれる借換債の一部を先行発行し、供給額の振れをならして安定的な発行を支える仕組みだ。15年度に発行した今年度分は42兆2509億円と直近10年間で最高に達した。今年度当初計画では上限が48兆円と前年度当初の1.5倍に拡大。国債の発行面だけを見れば、前例のない金融緩和は政府に恩恵をもたらしている。

  日銀は長期国債買い入れオペで、今月末までの3カ月間に残存期間5年超10年以下のゾーンを合計7兆8600億円程度購入する方針だ。先週19日時点では、新発10年物国債343回債の保有が4兆4876億円に達し、発行残高の約56%を占めた。国庫短期証券や財投債などを含めた国債等の日銀保有は発行残高の3分の1を超えている。

 

  金利低下と債券価格上昇が進めば、政府はより安いコストで国債を発行できるが、日銀は民間金融機関からの割高な価格での買い入れで損失の償却や将来の巨額赤字に備える必要に迫られる。

  日銀の保有国債の平均残高は昨年度が311.3兆円と過去最高を記録。国債利息収入も最大の1兆2875億円だったが、伸び率は23%増にとどまった。運用利回りは通年で0.41%、下半期は0.39%まで下がった。今年度も、世界的なデフレと日銀による異次元金融緩和で、運用利回りの低下傾向は続く可能性が大きい。

  日銀は保有国債の会計処理に償却原価法を採用し、額面を上回った購入価格の部分を償還まで毎年均等償却している。15年度の償却額は8739億円と、異次元緩和前に当たる12年度の約2.6倍だった。利息収入は昨年度に2兆1614億円もありながら、4割超が償却のために消えた計算だ。マイナス利回りとなるような額面を上回る国債の買い入れを続ければ、経常利益の主な源をさらに食いつぶすことになる。

  日銀は2%の物価目標を達成するために導入している「量的・質的金融緩和」の下、国債の保有を年80兆円増やす方針を示している。1月末には金融機関の日銀当座預金の一部にマイナス金利0.1%の適用を決め、国債市場全体の利回り低下を促している。

  岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは「政府がマイナス利回りで発行した国債のほぼ全ては、落札した金融機関からオペを通じ、日銀が買って損失を被っている。日銀は一時的には副作用が上回っても、長い目で見れば効果が上回って『花が咲く』と信じている」と指摘。来月には日銀が金融政策の運営方法を修正し、国債残高の積み増しで年70兆-90兆円などの幅を持たせる柔軟化とマイナス金利の0.2%への小幅な深掘りに動く可能性があると読む。

  日銀が抱える最大のリスクは、異次元緩和からの出口時に赤字が生じる可能性だ。保有国債の売却で投入資金の回収をすると市場金利の急騰を招きかねず、政策金利とともに金融機関に支払う付利も引き上げなければならない状況にも直面する。引当金に法定準備金等も含めた日銀の自己資本は3月末に7兆4346億円。日銀の木内登英審議委員が昨年12月に示した試算によると、出口での損失は年7兆円程度に上る。

  会計規程の見直しによって日銀は、長期国債からの利息収入と超過準備などへの利払い費用の差額の50%をめどに、債券関連の引当金の積み立てと取り崩しを行うことが今年度から当面可能になった。必要な場合には差額を全て対象にできる例外規定も設けている。同引当金の残高は少なくとも08年度から横ばいだったが、昨年度は一気に増えた。半面、国庫納付金は3905億円と、前の年の7567億円から5割近く減った。

  マイナス金利政策の導入に伴い3層構造に変更した日銀当座預金では、従来通り0.1%の付利を供与する基礎残高を約210兆円に抑えた。14年度の付利の支払いは前年比81%増だったが、15年度は2216億円と47%増に鈍化した。

  三菱モルガン証の六車氏は、「日銀は異次元緩和からの出口では、FRBのようにバランスシートを維持し、付利を引き上げるだろう。引当金は到底足りないというシミュレーションは成り立つ」と指摘。「金融機関への利払い費が膨張して毎年度赤字になれば引当金を充当し、なくなったら資本勘定を取り崩す。最終的に債務超過になったら、通常の民間企業なら破綻だ。あるいは増資する手もある」と語った。  

  消費増税を2回も先送りして経済成長に軸足を置く第2次安倍晋三内閣は、低金利を追い風に事業規模28.1兆円の経済対策を実施する予定だ。今年度の第2次補正予算案では、金利低下で国債の元利払いが少なく済んだ分を財源の一部に充てる方針を示した。また、財政投融資の貸付金利の下限は現在の0.1%から0.01%に引き下げる意向だ。


DJ-ブレグジット決定後の英経済、本当にリセッション入りはないのか

2016年08月25日 14時36分04秒 | 社会経済

 

 英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票から2カ月がたち、離脱派も残留派も投票結果が英経
済に与える当面の影響について自分たちが正しかったと主張している。

 残留派は、企業の信頼感が落ち込み、7月の景況調査は低調だったことを指摘している。独立系シンクタンク
の英国経済社会研究所(NIESR)は、4-6月期に成長率は半減し、7月はおそらくマイナス成長になったと述べた

 離脱派は、国民投票後に行った調査の多くは瞬間的な反応を映し出したもので、そうした反応はその後解消さ
れたとしている。株式相場は回復し7月の小売売上高は予想を上回った。失業保険申請件数も7月に減った。ただ
しこれは、求職者給付に代わり普遍的給付制度が導入されたことを一部反映している可能性がある。

 実際のところ、エコノミストらは明確な結論を導くにはまだ早すぎると言うにとどめている。

 以前に英財務省顧問を務めたマンチェスター大学のダイアン・コイル教授は「国民投票の結果の影響が、そん
なに早くに金融市場の反応以外に現れると期待するのは、どうみても愚かなことだ」と指摘し、「7月と8月の信
頼できる統計は数カ月手に入らないという事実は別として、輸出注文が取り消されたり、投資が進まなくなった
り、他に移されたりした場合には、影響が出るだろう」と語った。

 そしてまだ、リセッション(景気後退)の最も良い予兆はどれ一つとっても警戒警報を発していない。

 非金融機関や家計向けの民間信用は増加傾向が続いている。

 英銀行協会は24日、7月に信用が6%伸びたと発表した。クレジットカードでの借り入れは正味で前年比約20%
も急増した。住宅ローン借り入れも前年比で伸びたが、住宅ローン許可件数は減少した。

 英中銀イングランド銀行の統計では、6月の個人向け貸し出しは前年比の伸びがほぼ11年ぶりの高さとなった

 キングストン大学のスティーブン・キーン教授は、信用の伸びは現在、国内総生産(GDP)の約6%に匹敵して
いると語った。同教授は「リセッションの可能性は現在極めて低い。信用(の伸び)がいまのところプラスだか
らだ。近い将来における英国でのリセッションは予想していない。その可能性が高まるには、信用が強く落ち込
み始める必要があるだろう」と指摘した。

 サザンプトン大学のリチャード・ベルナー教授、オックスフォード大学のジェニファー・キャッスル教授、新
経済財団(NEF)のジョシュ・ライアンコリンズ氏が最近発表した共同研究によると、信用の伸びの変化は、経
済成長の変化との相関性が高いので重要だ。過去50年間の英経済を分析した結果、実体経済における銀行の信用
創造が名目GDP成長率の最も重要な予測因子との結論に達した。

 ライアンコリンズ氏は「最新の統計は非金融機関と家計に対する信用がプラスの領域に強く動いていることを
明らかに示しており、これでまだ(英国の)経済が大きく減速する兆しがほとんどないことの説明になるかもし
れない」と述べた。

 それでも、エコノミストらは最近の信用の伸びが続かない可能性があると心配している。ライアンコリンズ氏
は、この種の債務は「デフォルト(債務不履行)に対し一番崩れやすく、この強さの伸び率は維持可能ではない
公算が大きい」と指摘した。キングストン大学のキーン教授も、民間債務は過去の基準からすると「多大だ」と
している。

 一方、サザンプトン大学のベルナー教授は、イングランド銀行が先ごろ行った利下げは最終的に、信用を伸ば
すよりも抑える可能性があると指摘した。ロイヤルバンク・オブ・スコットランドなど一部の銀行は既に、事業
法人の顧客に対してマイナス金利を課して利ざやを守る措置を講じていると述べた。「イングランド銀行が政策
金利を新たに過去最低の0.25%に引き下げしたことが(中略)銀行の信用創造に悪影響を及ぼし、ひいては経済
成長に悪材料となっている」と語った。
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8月24日(水)のつぶやき その2

2016年08月25日 04時14分30秒 | その他

8月24日(水)のつぶやき その1

2016年08月25日 04時14分29秒 | その他

コラム:なぜドル円だけが3桁なのか=佐々木融氏

2016年08月24日 22時05分35秒 | 為替

[東京 24日] - 先進国通貨の対ドルレートを見ると、円だけ異なる点があることに気づく。他は整数が1桁だが、円の対ドルレートだけが3桁なのだ。

実は、ドル円相場も最初は1桁だった。何しろ、もともとは1ドル=1円だ。

円は、1871年(明治4年)に「新貨条例」という法律で日本の貨幣単位として採用された。純金1.5グラム=1円と定められ、1円、2円、5円、10円、20円の金貨が製造された。

一方、米国のドルはその79年前の1792年に「貨幣鋳造法」によって公式に採用され、1ドル金貨の金の含有量が決められたが、1871年時点での日米両国の金貨幣の純金含有量を比較すると、日本の10円金貨が15グラム、米国の10ドル金貨が15.05グラムでほぼ同じとなっている。

つまり、円という通貨は、そもそも1ドル=1円という価値になるように作られたと考えられる。

<戦前にたどったヘリマネへの道>

しかし、1877年に勃発した西南戦争の戦費調達のために、政府の不換紙幣が大量に発行されると、円の価値が下落し、1897年には1ドル=2円程度まで円安が進んだ。

戦費調達のために、政府が紙幣を大量に刷って市中に供給した結果、円の価値が下がり、インフレ、他国通貨に対する円安を引き起こしたのだ。当時、東京のコメ価格は、4年間で倍になったと記録されている。

こうした事態を背景に、1882年、松方正義大蔵卿(現在の財務大臣)は、日本銀行(日銀)を創設。日銀が唯一の中央銀行として、本位貨幣(金貨や銀貨)と必ず交換する銀行券(兌換銀行券)を独占的に発行するという制度を作った。

1897年に公布された「貨幣法」では、「1円=純金750ミリグラム」と定め、5円、10円、20円金貨を鋳造した。1円は、当初定められた純金含有量のちょうど半分と同等の価値ということになったのである。

このような措置をとったのは、それまでの物価上昇を反映するためだった。そして、日銀が発行する兌換銀行券も、金貨と兌換することを定め、これによって日本の貨幣制度は完全に金本位制度になったのである。

こうした政策のおかげもあって、ドル円は1897年から1931年までの34年間もの間、1ドル=2円前後で安定的に推移した。

しかし、ここから事情が変わってくる。1929年10月24日の米国での株価大暴落(暗黒の木曜日)を発端として世界的な大不況となり、他の主要国同様、日本でも物価が大幅に下落し、デフレに陥ったのだ。

この状況下、1931年12月13日に大蔵大臣に就任した高橋是清は、金の輸出を禁止し、日銀の発行している兌換銀行券を金貨に交換することを法律で制限した。つまり、金本位制度の停止である。

さらに高橋蔵相は1932年3月、金融関係者に対し、財政政策の拡張と満州事変の戦費調達のために、国債の日銀引き受けを実施する準備がある旨を伝えた。高橋蔵相の強い意向を受け、日銀も同意した。まさに、ヘリコプター・マネーが行われたわけだ。

<1ドル=1万円になったのと同じ衝撃>

さて、この結果、円は暴落し、対ドルで2円前後から1932年12月の4.86円まで急速な円安が進行するとともに、日本はデフレから脱却した。

しかし、高橋蔵相は、経済が回復した後は当然、日銀直接引き受けを止めるつもりでいた。1935年10月に発表した1936年度予算編成方針では「公債漸減方針」を掲げた。

ちなみに、当時日銀は国債を直接引き受けていたが、引き受けた国債を市中に売却していた。直接引き受けは行っていなくとも、市中から購入した国債をそのまま保有し続けている現在の状況に比べると、直接引き受けていた当時の方が健全だったとも言えるかもしれない。実際、1936年当時の日銀のバランスシートの大きさは対国民所得比で20%前後であり、現在と比較しても極めて小規模にとどまっている。

日銀は引き受けた国債のうち、当初98―99%は市中で売却できていたが、1935年度には77%しか売却できなかった。公債の市中消化が滞り、日銀が発行公債を背負い込む状況を受け、高橋蔵相は、公債政策の行き詰まりを指摘し、悪性インフレーションの弊害が現れることへの警告を発した。

もっとも、健全財政路線にシフトすることで、高橋蔵相は軍部と対立。1936年2月26日に暗殺された(二・二六事件)。その後、公債漸減方針が撤回され、「対満州政策の遂行」「国防の充実」「農村の経済更生」「税制大改革」の名のもとに国債が野放図に発行され、戦争に突入していったことは歴史が示すとおりだ(国債発行額は1932年度の7.7億円から1945年度には334億円へと13年間で40倍以上に膨れ上がった)。

そして、戦後の日本は復興資金を日銀信用により賄ったことなどにより、ハイパーインフレに悩まされることになる。1944年から1951年までの8年間の物価上昇率は年率平均プラス100%にも達した。こうしたハイパーインフレを受けて、ドル円は円安方向へと大幅に修正されたのである。

ちなみに、第2次世界大戦が勃発した1939年当時は、1ドル=4.25円程度だったが、1945年8月に戦争が終結すると、軍用交換相場として1ドル=15円に設定され、1947年3月にはこれが1ドル=50円に、さらに1948年7月には270円に引き上げられた。そして、1949年4月に、連合国軍総司令部(GHQ)が発表したレート(一般に利用される相場)は、1ドル=360円となった。

1ドル=4.25円だったドル円は、たった10年間で360円までの大幅な円安になったということだ。これが先進国通貨の中で、ドル円だけが3桁になっている理由である。

要するに、日本という国は、たかだか80年ほど前に現在と同じような政策を採用しており、その結果が現代の為替相場に残っているのだ。4.25円が360円になるのは、120円が10000円(1万円)になるのと同じマグニチュードである。

後世の為替ストラテジストが、なぜドル円だけが5桁なのかを説明する時のキーワードは、「アベノミクス」「量的・質的金融緩和(QQE)」なのだろうか。

*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。


8月23日(火)のつぶやき その2

2016年08月24日 04時12分35秒 | その他

8月23日(火)のつぶやき その1

2016年08月24日 04時12分34秒 | その他

日本経済は円高で再び大きな試練が始まった

2016年08月23日 07時45分29秒 | 為替

真壁昭夫 [信州大学教授]

足元の為替市場で円高が進んでいる。18日には、ドル/円の為替レートが99円台半ばまで下落した。これは、英国のEU離脱決定の影響によって、投資家のリスク回避が進んだ6月24日(1ドル=99.02円)以来の水準だ。

 この背景にはいくつかの要因がある。その一つは、米国経済の先行き不透明感だ。足元の経済指標やこれまでの景気循環を考えると、徐々に米国の景気がピークを迎える可能性は高まっている。

 特に、昨年の夏場以降、米国の企業業績がドル高の影響で下落傾向を示していることは要注意だ。米国企業の海外収益の割合が高まっていることを考えると、ドル高は米国経済にとって無視できないマイナス要因だ。

 米国政府は、これ以上のドル高を容認することは難しい状況になっている。経済専門家の間でも、「米国政府の為替政策はドル安に転換している」との見方が有力になっている。

 ヘッジファンドなど大手投資家は、米国政府の政策展開を見逃すはずはない。彼らの投資姿勢は、既にドル安・円高を想定した持ち高に変わりつつある。そうした状況を考えると、今後も基本的に円高が続きやすくなるはずだ。

 また、最近の世界経済を概括すると、欧州の大手銀行が抱えるシステミックリスクなど、無視できないリスクが高まっている。それだけ投資家のリスク回避の動きが出やすく、リスク軽減から円高は進みやすいと見るべきだ。

 これまで、円高はわが国の企業業績を圧迫し、景気を低迷させてきた。ここで、わが国企業は円高への抵抗力を高め、経済の活力を引き上げることを真剣に考える局面に来ている。

足元の為替市場を取り巻く経済環境
総合的に考えると円買い圧力は強まる

 足元のドル安・円高は、米国の実質金利の上昇圧力の弱さに起因する部分が多い。短期的には、為替相場を動かす最も大きな要因は二国間の“実質金利”の差だ。

 一般的に、投資資金は、低金利の通貨から高金利の通貨に向かいやすい。多くの投資家は高金利通貨を選好することが多いからだ。その結果、高金利の通貨は低金利の通貨に対して強含み、金利の低い通貨は弱含みとなりやすい。

現在、米国は主要国の中で唯一利上げ期待がある。本来であれば、ドル高が進んでもおかしくはない。しかし、これは表面的な利回り=名目金利を見た場合の議論だ。

 問題は、通貨の価値の変動=インフレ率を加味した実質ベースの金利を見なければならないことだ。過去の相場を振り返っても、為替レートは、名目金利から物価の上昇率を引いた、実質金利に反応することが多い。

 名目ベースではわが国の金利水準の方が低いのだが、米国のインフレ率を考えると、どうしても実質ベースで見た金利はわが国の方が高くなりがちだ。そのため、円が買われやすく、ドルが売られやすくなる。

 米国のFRBは年内利上げの可能性を残しているが、会合の都度、金融政策の慎重な運営スタンスが示されている。市場参加者の利上げ予想も高まりづらく、金利の上昇圧力は弱い。

 2016年上半期、わが国の経常収支(海外とのモノやサービスの取引状況を示す)の黒字幅は、10.6兆円と上半期として9年ぶりの水準に達した。経常収支が黒字であるということは、需給面からドル売り・円買いにつながりやすい。

 わが国の企業が、海外からの売上などで得たドルなどの外貨を売り、円を買う可能性が高いからだ。これらの要素を総合的に考えると、円買い圧力が強まる可能性が高まる。

自国の経済に下落圧力がかかると
ドル高を牽制し始める米国

 昨年以降、米国政府のドルの為替レートに対する考え方=為替政策も変化している。過去を振り返ると、米国の経済が堅調な場合、米国政府はドル高に寛大だ。「強いドルは国益につながる」とのスタンスを明確にする。その場合、円安の進行も容認されてきた。

 しかし、ひとたび米国経済に下落圧力がかかると、米国は手のひらを返してドル高を牽制し始める。最近、G7やG20等の場で、ジャック・ルー米財務長官は一貫して「為替相場は秩序立っている」と発言している。

 米国政府が、ドル高を懸念する最大の理由は企業業績の悪化だ。近年の米国経済を見ると、ドル高が企業業績を圧迫してきた。大手企業の業績は2016年4~6月期まで4四半期連続の減益に陥っている。

 また、米国では3四半期続けて労働生産性も低下している。労働生産性が低下する中、新規の採用は労働コストの増加につながり、追加的に利益を圧迫する可能性がある。そうなると、雇用の削減=リストラを進める企業も出てくるだろう。

 過去の景気循環を振り返ると、2009年6月に米国経済は景気の底(ボトム)を打ち、それ以降、7年超の景気拡張の中にある。平均的に米国の景気拡張期間が5年程度であったことを踏まえれば、景気はピークまで7合目程度まで来ていると言えるだろう。

米国政府にとって大きな課題は、いかに企業収益を支え、景気の下支えを図るかだ。その方策の一つとして、企業経営者からも指摘されているドル高の影響を軽減することは欠かせない。輸出の促進のためにも「緩やかなドル安がいい」のが米国の本音だろう。

 そうした状況を考えると、繰り返しとなるが、明らかに米国政府の為替政策は転換している。わが国をはじめ、自国通貨安で輸出促進などの景気支援を図りたいとの考えに対する牽制だ。そのため、FRBも利上げには慎重にならざるを得ない。そうした米国政府の政策変化を、海千山千のヘッジファンドマネージャー連中が見流すはずはない。

 彼らは敏感にそうした変化を察知し、ドル売りを仕掛け、これまで売ってきた円を買い戻している。これは、2011年11月~2015年半ばまでのドル独歩高の修正とも言える。

中国経済の減速と欧州の政治混乱に
米国経済のピークアウトが重なれば…

 足元の世界経済を俯瞰すると、これまで米国の景気回復が世界全体を牽引してきた。今後、米国景気の先行きに不透明感が高まると、世界全体の景況感悪化は避けられないだろう。

 中国は、過剰な生産能力の問題を抱え経済成長率が低下している。欧州では英国のEU離脱の影響、イタリアでの政治不安など不確定要因が多い。米国でも、生産性の伸びがマイナスに落ち込むなど気掛かりな点は多い。

 仮に、中国経済の更なる減速、欧州の政治混乱等に米国経済のピークアウトが重なると、世界経済は未知の低迷リスクに直面する恐れがある。米国に代わる世界経済の牽引役が見当たらないからだ。

 今後、さらにドルが下落すると、これまで以上の速度で円売り・ドル買いのキャリートレード巻き戻しが進むことが考えられる。その場合には、資金調達通貨である円の買い戻しが進み円高が加速する可能性もある。

 為替市場の変動に加えて、世界的な需要の低迷から資源価格が一段と下落し、投資家のリスクオフがさらに円高圧力を高める可能性もある。その場合、わが国の景気にも相応の下押し圧力がかかるだろう。

 わが国経済の問題は、円高による国内企業の収益悪化懸念だ。企業の海外進出の影響もあり、わが国は海外経済の動向、それに起因する為替レートの変化に影響されやすい。

 それを克服するためには、政府が労働市場などの構造改革を進め、企業の積極性を引き出す必要がある。それは、アベノミクスが掲げた成長戦略の本義であるはずだ。

 同時に各企業にも、自助努力によって技術革新を進め、新しい製品やサービスを断続的に生み出すことが求められる。そうしたイノベーションこそが、企業の競争力を引き上げ、わが国の潜在成長率を高めるために必要な要素だ。それができないと、社会全体の活力が低下した状態から抜け出すことは難しい。円高は、再び、わが国経済に大きな試練を与えようとしている。



8月22日(月)のつぶやき その2

2016年08月23日 04時16分15秒 | その他

8月22日(月)のつぶやき その1

2016年08月23日 04時16分14秒 | その他

公募割れ続く日本郵政とゆうちょ銀行 「騙された」株主のとるべき道は?=栫井駿介

2016年08月22日 07時55分03秒 | 気になる株

昨年11月に上場した日本郵政グループ3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)ですが、今年に入ってさえない値動きが続いています。特に日本郵政とゆうちょ銀行は公募価格を割り、上場によって新たに株主となった多くの投資家が含み損を抱えている状況になっています。株主は、このまま塩漬けにするか、損切りして売却するか悩んでいるのではないでしょうか。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大和証券にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

勝ち組と負け組がハッキリしてきた親子上場、今後有望なのは?

 

日本郵政グループの価値はほぼ金融2社のみ

日本郵政グループは、全国の郵便局を営業基盤として活動する国内最大規模の企業グループです。郵便だけでなく、銀行や生命保険も取り扱う、他に例を見ない業態となっています。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は持株会社の日本郵政の傘下でそれぞれ上場し、もうひとつの主な子会社である日本郵便は非上場です。

出典:日本郵政 株式売出目論見書

出典:日本郵政 株式売出目論見書

日本郵政の事業は、もともと郵政省が管理する国の事業でしたが、小泉政権時代に郵政民営化の方針が示され、その後紆余曲折がありながら、昨年11月についに上場を果たしました。上場時の売出規模は過去最大規模で、テレビコマーシャルまで使って大規模な販売が行われていたのは記憶に新しいと思います。

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もともと「官業」であったことから、その特色が今も色濃く残っています。例えば郵便局は日本全国の市町村に配置され、日本全国にあまねくサービスを行う「ユニバーサルサービス義務」が課せられています。

古くからの事業を行っていることから、特に高齢者には安心感を与えるブランドである一方、一般的な民間企業と比較して決断が遅く、コスト高になりがちな側面があります。

持株会社である日本郵政の利益を分解すると、その大部分は連結子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命に支えられていることがわかります。セグメント利益の約5割はゆうちょ銀行、約4割はかんぽ生命から生み出され、郵便関連事業からはほとんど利益があがっていない状況です。

出典:日本郵政 有価証券報告書

出典:日本郵政 有価証券報告書

つまり、実質的には日本郵政グループの価値はほとんど金融2社に支えられていると見るのが適切です。

明るい兆しの見えない金融以外の事業

持株会社である日本郵政は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命の約9割の株式を持ち、郵便事業を行う「日本郵便」の全株式を保有しています。

将来的には、ゆうちょ銀行とかんぽ銀行の株式を売却することが決まっていますので、日本郵政の金融子会社からの利益の取り分は減少していきます。やがて日本郵政に残るのは郵便事業だけとなり、このままだと利益の大部分を失うことになってしまいます。

電子メール等の普及により、郵便物は益々減少していくことが確定的です。インターネット通販の隆盛により、ゆうパックのような宅配物は毎年確実に増えていますが、この事業は非常にコストがかかるため、利益を生むどころか、取扱数が増えるほど赤字が膨らむような状況になっています。

さらに、近ごろの人件費の高騰が追い打ちをかけています。

もちろん、日本郵政と子会社の日本郵便も手をこまねいているわけではありません。昨年オーストラリアの物流会社であるトール社を6,000億円で買収しました。また、郵便局でカタログギフトを販売するなど、様々な新規事業に手を出しています。

しかし、新規事業はあまりうまくいく様子が見られません。トール社は買収初年度から減収減益を記録しました。買収してから特にてこ入れをする様子はなく、高い買収金額を回収できそうにない状況です。

また、報道にもあった通り、決済代行事業からわずか2年で撤退するなど、踏んだりけったりの状況が続いています。

そもそも日本郵政は「お役所」であり、新規事業をやるような能力は備わっていません。これが中小企業であれば、社員の意識改革や人材の採用などを行うことで劇的に変わることもあるでしょうが、従業員数が20万人を超える企業で改革を行うのは並大抵のことはありません。

利益の大部分がやがて減少し、郵便事業は衰退、新規事業は鳴かず飛ばず。日本郵政(日本郵便)の将来性には明るい兆しが見えていないのです。

ゆうちょ銀行は「普通の銀行」になるだけでいい

ではその傘下のゆうちょ銀行はどうでしょうか。

ゆうちょ銀行は預金額約180兆円を誇る日本最大の銀行です。しかし、他の銀行と大きく異なり、一般企業への融資ができません。そのため、預かった預金を国債や社債に投資して得られる金利収入を収益源としています。

その内容に民営化以降変化が見られています。従来はほとんど国債で運用していましたが、今ではその割合は4割にまで下がり、さらに減少させる方向性です。

そして、代わりに買っているのが外債です。外債は一般的に日本国債よりも金利が高いため、単純に入れ替えるだけで、利回りの向上が見込めます。

出典:日本郵政 決算説明資料

出典:日本郵政 決算説明資料

もちろん為替など一定のリスクは増えます。しかし、これまで保守的な運用をしていたゆうちょ銀行の規制上の自己資本比率は26パーセントもあり、他の銀行を大きく上回ります。

つまり多少のリスク取って収益を増やす余裕が十分にあるのです。

その他にも、投資信託の販売など、他の銀行がやっていることを真似するだけで利益を上積みできる、経営上これ以上ないシンプルな状況です。そのために外部から人材を採用し、ノウハウの取り込みも行っています。

直近の報道にあったように、振込手数料を有料化したのもその一環と考えられます。

長い目で見ればゆうちょ銀行が優位

ゆうちょ銀行の配当利回りは現在の株価で4.0%と、日本郵政の3.8%を上回ります。公募価格で買っていたとしても約3.5%の配当利回りですから、長期的に持っていっても悪くない水準です。安定的な利益成長を考えると、資産株として持っていて十分もとが取れます。

将来の兆しが見えない日本郵政と、淡々と改善を続ければ安定成長が見込めるゆうちょ銀行。日本郵政は持株会社なので、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の保有株式分の価値はあるという見方もありますが、お荷物の日本郵便が「マイナス価値」になることも十分にありえます。長い目で見れば、どちらを持っていた方が良いかは明らかでしょう。

日本郵政<6178> 日足(SBI証券提供)

日本郵政<6178> 日足(SBI証券提供)

ゆうちょ銀行<7182> 日足(SBI証券提供)

ゆうちょ銀行<7182> 日足(SBI証券提供)

今はマイナス金利の影響で、両社ともに株価が下落しています。しかし、いつまでもマイナス金利が続くことはないでしょうから、長期投資家はその先の展開を見越した投資をしなければなりません。

つばめ投資顧問では、保有銘柄に関するご相談を承っています。また、毎週発行するレポートでは、バリュー株投資の考え方に基づいた長期保有銘柄を推奨しています。無料情報も満載のホームページを、ぜひ一度訪れてみてください。

※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。


8月21日(日)のつぶやき

2016年08月22日 04時17分28秒 | その他

中古住宅購入時に補助金、改修費最大50万円、40歳未満に、政府、空き家解消促す。

2016年08月21日 11時43分13秒 | 社会経済

政府は中古住宅を購入する際に必要なリフォーム工事の費用を、1件当たり最大で50万円補助する制度を創設する。欧米に比べて少ない中古住宅の取引を活発にし、深刻になっている空き家問題の解消につなげる。対象を40歳未満の購入者に絞り、若年層が使えるお金を増やして個人消費を底上げする狙いもある。
 24日に閣議決定する2016年度2次補正予算案の概要に、250億円の事業費を盛り込む。秋の臨時国会に提出し、成立すれば年内にも新制度が始まる。政府は少なくとも5万戸の利用を見込んでいる。
 補助の対象となるのは、自分が住むために中古住宅を購入する40歳未満の若年層だ。子育てなどに伴い可処分所得が少なくなる傾向にある若年層に狙いを定めて、住居費の負担を軽くする。
 リフォームの施工業者が中古住宅の購入者に代わって国の事務局に申請し、補助金を受け取って工事代を安くする仕組みを想定している。申請の際には、専門家が物件の傷み具合を判断する住宅診断(3面きょうのことば)を受けていることが条件になる。
 補助額は住宅診断にかかる5万円のほか、耐震補強や省エネ改修などリフォームの内容に応じて最大50万円とする。
 中古住宅のリフォーム費用は仕様や場所によって大きく異なる。一戸建てで1千万円を超すことが珍しくない一方、マンションでは数百万円の場合が多いとされる。
 全国的に増えている1千万円を切る中古物件を買うと、購入費よりも改修費のほうがかさみかねないので、政府はリフォーム費用を補助すれば若い層の購入意欲が高まるとみている。
 日本の住宅市場に占める中古の割合は15%程度にとどまる。7~9割の欧米に比べ著しく低い。新築志向が根強く、古い住宅をリフォームして使う習慣が広がっていないためだ。政府は中古住宅の市場拡大に向け、リフォーム市場を13年の7兆円から25年までに12兆円に伸ばす目標を掲げる。
 全国で820万戸に達する空き家対策にもつなげる。野村総合研究所は少子高齢化の進展で、33年に全国の空き家が2167万戸に増えると警鐘を鳴らしている。
 空き家が増えると住宅地が荒廃し、地域への悪影響が大きい。対策は急務となっている。
 国土交通省は今月末に示す17年度予算の概算要求に、20年間で資産価値がゼロとみなされる住宅評価の見直しや、空き家の情報を集めて住みたい人に提供する「空き家バンク」の充実といった対策を盛り込む。


10月衆院2補選、保守分裂の可能性、福岡6区、重鎮の代理戦争?、東京10区、小池の乱なお火種。

2016年08月21日 11時42分09秒 | 政治

10月23日投開票の2つの衆院補欠選挙が保守分裂となる可能性が出ている。鳩山邦夫元総務相の死去に伴う福岡6区と、小池百合子都知事の議員失職による東京10区の候補者擁立に向け、自民党内の調整が難航しているためだ。党執行部にとっては今月発足した新体制の初陣で、二階俊博幹事長らの調整力が問われている。
「後ろ盾」に躍起
 福岡6区は擁立作業が混迷している。福岡県連は地元政界に強い影響力を持つ蔵内勇夫県連会長の長男、謙氏の公認を党本部に申請した。一方、邦夫氏の次男で福岡県大川市長の二郎氏が出馬を表明。記者会見で「党公認が得られなければ無所属で出馬する」と語った。
 謙氏の選対本部の本部長には麻生太郎副総理・財務相、顧問には古賀誠元幹事長が名を連ねる。
 一方、二郎氏は二階派の武田良太衆院議員(同11区)が支援している。二階氏自身も1日に二郎氏と会って激励するなど派閥として推す構えとみられている。邦夫氏が主宰した派閥横断の政策グループ「きさらぎ会」の顧問には菅義偉官房長官が就任した。両陣営とも「後ろ盾」を得ることに躍起で、麻生氏や二階氏ら党重鎮の代理戦争の様相も帯び始めている。
 東京10区は過去5回の衆院選では4勝1敗と自民党が強いが、都知事選の「しこり」から自民党都連による擁立作業は遅れている。都知事選で党の推薦候補が大敗。都連会長だった石原伸晃経済財政・再生相ら都連執行部が総退陣したためだ。
 都知事選で大勝した小池氏は後任として独自候補の擁立を模索。都知事選で小池氏を支援した若狭勝衆院議員(比例東京)の名が上がる。ただ、党都連は党の方針に反して小池氏を支援した若狭氏の支援に否定的。「処分の対象にすべきだ」との声すらある。
 「2020年の東京五輪を控える中で、これ以上小池氏との関係を悪くするのは得策ではない」との意見もある。擁立の動き次第では、都知事選同様、再び保守分裂となる事態も想定される。
二階氏どう調整
 二階氏は周囲に「安倍首相に恥をかかせることはできない」と語り、調整に努める姿勢を示す。小池氏が新党結成を「選択肢」と述べたことについては「自民党と敵対するものをつくる気配を少なくとも私は感じない」と党内の沈静化に努めた。福岡6区については、二階氏側近は「どちらにも公認を与えず、選挙で勝ったほうに公認を与えるのでないか」と読むが、候補を一本化できなければ調整役として批判される可能性もある。
 野党にとっては、2つの衆院補選は参院選1人区で取り組んだ「共闘」を次期総選挙に向けて継続するかの試金石になる。民進党は既に候補者を擁立済みで、共産などは候補者の一本化に前向きだ。民進、共産など4党は7月下旬の幹事長・書記局長会談で「できうる限りの協力」を目指す方針を確認した。