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毎日が給料日、20億人の笑顔 ドレミングの決済アプリ

2018年04月19日 13時02分47秒 | 社会経済

銀行口座を持てない低所得者層は世界で20億人とも言われる。“金融難民”を支援しようと、給与を即日従業員のスマートフォン(スマホ)に振り込むシステムを開発したのがドレミング(福岡市、桑原広充最高経営責任者=CEO)だ。スマホを店舗のQRコードにかざせば、その日のうちに買い物もできるようになる。日本発のスタートアップが、世界のキャッシュレス経済圏の裾野を広げようとしている。

■サウジ皇太子「魅力的なビジネス」
ドレミングのサービスはサウジアラビア政府も関心を寄せる(中央が英国CEOの高崎氏)
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ドレミングのサービスはサウジアラビア政府も関心を寄せる(中央が英国CEOの高崎氏)
 脱・石油依存を掲げるサウジアラビアは労働力のほぼ半分を外国人労働者に頼る。同国が昨秋に首都リヤドで開いた未来投資構想会議。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、フランスのサルコジ元大統領、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長らそうそうたる顔ぶれの中に、ドレミング英国CEOの高崎将紘氏の姿があった。

 「とても魅力的なビジネスだ。是非サウジでも進めて欲しい」。高崎CEOとの面会の機会をわざわざ設けたのは、王位継承順位第1位のムハンマド皇太子。高崎CEOは名前の将紘に引っかけて「孫正義に続く次のマサは僕だよ」と冗談めかすと、皇太子も白い歯を見せた。

 金融サービスや再生可能エネルギー、人材育成などに動くサウジが招待するドレミングは、金融とIT(情報技術)を融合したフィンテック企業だ。勤怠管理から給与計算、給与振り込みまでワンストップでできるスマホアプリを提供する。ほかの企業もやっていそうだが、特徴は働いた日数分の給与を直接、労働者に送金できることだ。


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 通常、給与の支払いは企業側の勤労データを銀行が一定期間かけて処理し、毎月決まった日に支払う。だが、ドレミングのシステムは、日ごとに働いた分の賃金がスマホに通知され、例えば5日働いたら5日分の賃金を上限にお店で買い物ができる。店は労働者の口座から買い物代金を引き落とせないため、雇用主が店の口座に支払う。一連の決済は全てキャッシュレスだ。

 いわばドレミングのアプリを介して給与を立て替える訳だが、労働者から金利も手数料も取らない。売り上げはアプリの導入企業からだけだ。

 日本では労働基準法で「賃金は直接労働者に支払わなければならない」と定められており、雇用主が給与を店に直接渡すようなことはできない。そのため現在の利用は限定的。働いた日数の給与を労働者にいつでも支払える仕組みとして、数十社がアプリの利用契約を結んでいる。

 飲食業店のスピル(千葉市)では100人強の社員・アルバイトを対象に導入している。税金や社会保険等控除後の支給額を自動計算し、銀行口座にチャージ。働き手は、好きなときに自由に引き出すことができる。

 穂崎芳幸社長は「働き方は多様化しており、給与の受け取りも個々人の生活スタイルに合わせ変えていく必要があると感じていた」と導入の動機を説明する。「お金の使い方や管理の自由度が高まった」と働く側からも好評だ。

 ドレミングのアプリの本来の使い方ができれば、銀行口座の介在を省くことができ、買い物がしやすくなるほか、生計も立てやすい。また、個人がインターネット経由で仕事を引き受ける「クラウドワーカー」やフリーランス、副業、在宅勤務(テレワーク)など、月額給与の概念が当てはまらない働き方が増えている。国家戦略特区の指定を受けた福岡市が昨年、規制緩和を提案しており、18年にもドレミングが本来目指しているサービスが実現する可能性が出てきた。

 目下のドレミングの足場は、与信上、銀行口座を持てない20億人の金融難民がいる海外だ。鈴木竜也取締役は「新興国にはその日暮らしの低所得者も多い。働いた分だけ賃金を受け取れたら安心して生活できるうえ、勤労意欲も高まる」と話す。

■インドやベトナムでも注目
 ドレミングは昨年、インドの財閥大手リライアンス・インダストリーズと提携した。計画では低所得者にデポジットを払ってもらい5億台の格安スマホを提供。企業にはアプリの導入を働きかける。キャッシュレス化の波が押し寄せるインドでは商店でもQRコードの導入が進んでおり、スマホを手にした労働者が手軽に買い物ができるようにする。


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 銀行口座を持っている労働者にとってもアプリがあればATM手数料や並ぶ時間の手間が省けるとあって「雇用主が導入に前向きになる」(鈴木取締役)。何より「働いた分がきちんと支払われれば、安定した暮らしにつながり、勤労意欲が高まり、そして貧困から抜け出せる」(高崎CEO)という期待が大きい。

 インドだけではない。ベトナムでも昨年9月、総資産6千億円という同国有数のリエンベト郵便銀行と提携。同行のスマホ用Eウオレット(電子財布)とドレミングの給与システムを連動させ、買い物決済できるようにする。ホーチミン市などで間もなく実証実験が始まる予定だ。

 また「中東アフリカのフィンテック・ハブ」を国家戦略として掲げるバーレーンでは、同国中央銀行がフィンテックに特化した組織を立ち上げた。ドレミングはここにも商機を探る。

 フィンテックの技術研さんや、より使いやすいサービスに育てるためドレミングはシンガポールや米シリコンバレー、英国にも拠点を置く。16年には会計事務所世界大手、KPMGから日本のスタートアップとして初めて「世界のフィンテック50」にも選ばれた。

 翻って日本。働き方の多様化に会わせた、柔軟で利便性の高い給与の支払い方法を模索しなければ、企業は実力を持つ個人からもそっぽを向かれかねない。

 時代の変化をかぎとったセブン銀行は昨年、ドレミングと組み給与の即日振り込みサービスを始めた。買い物決済まではないが、セブンイレブンなどのATMですぐに現金を引き出せる。すでに数十社が導入を計画している。

 ドレミングのビジネスモデルは銀行など金融機関にとって脅威と見られがちだが、鈴木取締役は否定する。労働者の勤労状況や収入など個人の同意を条件に銀行がビッグデータを取得できれば、融資の返済能力などが判断できる。非正規社員や低所得者の与信管理もしやすくなる。金融機関にとってドレミングはライバルでもあり、味方でもあるというわけだ。

 国内外では高額の手数料を求められる給料前借りローンなど低所得労働者を追い込む「貧困ビジネス」が後を絶たない。高崎CEOは「労働者が真面目に働いた手取り給与をいち早く使えるようになれば貧困ビジネスは撲滅できる」と力説する。「売り手良し、買い手良し、社会良し」とするためフィンテックを根付かせるのが、ドレミングの起業家精神といえる。(上阪欣史)

[日経産業新聞 2018年4月19日付]



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