ブリュッセル(ダウ・ジョーンズ)国際通貨基金(IMF)は5日発表した報告書で、ユーロ圏の債務危機の影響が域内
の中核国や銀行、投資家へと拡大しており、新たなリセッション(景気後退)の可能性も排除できないとの見方を
明らかにした。
IMFは、欧州の2011年の経済成長率が昨年の2.4%から2.3%に鈍化し、12年には1.8%になると見込む。インフレ
率は11年に4.2%となり、12年には3.1%に低下すると予想している。
その結果、より緩和的な金融政策が正当化されることになるとした。さらに、欧州連合(EU)は欧州中央銀行(EC
B)が市場に対し安定的に存在感を示せるようにすべきだと主張した。
ただ、アントニオ・ボルヘス欧州局長は、大半の国々は景気刺激策を導入できる状況にないと指摘。
「(それらの国々は)当然、今後も財政面で極めて厳格な規律を維持することが必要だ」とした。
特にギリシャについては、国営企業の民営化を含む経済改革の実施を加速しなければならないと述べた。
また、「トロイカ」と呼ばれるIMF、EU、ECBの3者とギリシャ政府による次回支払い分をめぐる協議に緊急性は
ないと、ボルヘス欧州局長は語った。
ギリシャ政府は昨年、大幅な財政・経済改革を条件に、EUとIMFから1,100億ユーロの融資を取り付けていた。
ボルヘス欧州局長は「重要なメッセージは、われわれは特に急いではいないということだ」とし、協議が「前向
きな結論」に達することに自信を示した。
トロイカによるギリシャ経済の評価は10月後半に明らかにされる見通しだ。
ボルヘス欧州局長はまた、これまで1,090億ユーロと見積もられていたギリシャ支援策第2弾の規模を変更する必
要があると明らかにした。従来の額は「時勢に合わなくなった」とし、「すべての数字は極めて暫定的なものだ
」と語った。
次の支援策は、ギリシャの財政収支に大きな重点を置くのではなく、経済成長の促進に注力しなければならない
との見方だ。
ボルヘス欧州局長によると、ユーロ圏の支援基金である欧州金融安定ファシリティー(EFSF)がユーロ圏加盟17カ
国すべてで批准されれば、IMFはEFSFの国債流通市場におけるオペで協調的に行動することが可能になる。この目
的に向け、IMFは流通市場と発行市場に介入する特別目的機関を設立する必要が出てくるという。
EU各国の首脳は既に、EFSFが国債の流通市場に介入できるようにすることで合意した。スロバキアとオランダは
まだこの内容を批准していないが、今月中に手続きを終えるとみられている。
ボルヘス欧州局長は、欧州の銀行に特有のリスクを強調し、同地域の大手行はいずれも資本増強すべきだとする
IMFの見解を繰り返した。民間部門による資本増強が不可能であれば、政府が主導すべきだとした。
だが、こうした取り組みは欧州全体をより幅広く巻き込んだものでなければならない。ボルヘス欧州局長は、欧
州レベルでの意思決定の枠組みと、預金保険基金の必要性を呼びかけた。
政治的な障害により導入は簡単ではないものの、「これらはすべて実現可能だ」と、同局長は語った。
今週に入って厳しい重圧にさらされているベルギー・フランス系銀行大手デクシアについては、ベルギーおよび
フランス政府が問題解決に向けて協力する以外に選択肢はないと述べた。
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