東電株が連日のストップ安に…
一時反発した東京電力でしたが、連日のストップ安となって震災時の安値を更新しました。原発事故の報道もありますが、「国有化」の報道も見られています。くわしくはレポートをご覧ください。
東京電力が一部の新聞で「東電国有化案浮上」と報道されたこともあって、東京電力は連日のストップ安となって、ついに500円台まで下落しました。東京電力の国有化については、政府関係者からもコメントが出始めていますので、噂段階ではなくなっています。
24日には、みんなの党の渡辺喜美代表が「東京電力の一時国有化の検討を開始しなければならない」と発言していますし、本日は、玄葉国家戦略担当相が、政府内で東京電力の国有化案が浮上しているとの報道について肯定的な発言をしました。
一方で、枝野官房長官は東京電力の国有化について否定する記者会見をしていますが、株主としては国有化の可能性が少しでもあれば、株を保有したくないのが本音だと思います。
仮に国有化にならなかったとしても、1961年に制定された「原子力損害賠償法」によって東京電力が巨額の補償金の支払いを請求される可能性は高く、政府が補償金の一部を負担する方針はあるものの、東京電力の支払い能力を超えてしまう可能性も指摘されていますから、株価が回復する見込みは少ないかも知れません。
株式投資の視点から考えますと、一番気になるのは「株が紙くずになるか?」という点だと思います。これは基本的に上場廃止にするときの手続きで決まります。
株式の価値は残して、単純に上場することだけを止めるのであれば、株式市場で自由に売買することはできなくなりますが、企業が存続して株主であるので紙くずにはなりません。
しかしながら、国有化のケースでは「100%減資(資本金を全額減らすこと)」をして株の価値をゼロにすることがほとんどなので、上場廃止後に持ち続けていても価値はないということになります。
最近の例でいえば、日本航空(JAL)の国有化が記憶に新しいところです。このときも100%減資を行ってから上場廃止となっています。JALは再建中ですが、普通に国際線も国内線も営業していますから、株式投資をしていない人からみれば株の価値がなくなるということがピンと来ないかも知れません。
東電の場合も、仮に国有化になったとしても、東電が営業をしなくなって電気が供給されなくなることはありませんが、株式としては100%減資となる可能性は高く、株の価値はなくなると思われます。
また、国有化後に再上場したケースでは、「日本長期信用銀行→新生銀行」や「日本債券信用銀行→あおぞら銀行」がありますが、これらも場合も金融再生法によって特別公的管理銀行になって100%減資の手続きを行い、既存の株主の権利をゼロにしてから国が株を全部取得したという経緯になっています。
その後、新生銀行、あおぞら銀行として上場していますが、以前の株主が持ち続けて助かったということはありませんでした。
東電株は、配当をもらって長期で投資する資産株として持っている個人投資家も多いと思います。このような投資家の方は、日頃それほど売買せず、株式市場の動きを見たり、ニュースをチェックしたりしない人もいるのではないでしょうか。
まだ「東電が潰れるわけはない」と現物株を持っている個人投資家もいると思いますが、JALや大手銀行が国有化になったことを考えますと、100%減資をして株としては価値がなくなってしまう可能性は十分に考えられることだと思います。
もちろん、国有化するかはわからないことではありますが、わからない間だからこそ思惑で株価が寄り付いて短期的に大きく動くと思います。東電株を持ち続けて評価損が大きくなっている個人投資家の方は気が気ではない状況だと思いますが、将来はわからないという前提で、多少でも現金化してしまうか、価値がなくなってもよいから持つのかを決断するしかないと思います。
JALや長銀のケースを思い出しますと、急落したときに「どうせ潰れないだろう」と思ったこともありますが、長い目で見れば異常な下げ方になったときに売って現金化した人が正解でしたから、東電のケースもあまり楽観的に考えない方がよいと思われます。
レポート担当 : ケンミレ株式情報 市原 義明