吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

胃潰瘍で死亡、労災認定された男性の遺族が勤務先を提訴 富山地裁 その2

2023年07月06日 06時05分48秒 | 日記
 まずは死亡されたかたのご冥福をお祈りいたします。
 特にこのような、完成納期が迫られる製造業では遅れないように1日の仕事量が増える場合が多々あるものと思われます。さてこのような場合の、超過勤務と死因との医学的因果関係の証明は極めて難しいでしょう。現在、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発生原因はピロリ菌感染が多いと言われています。このような超過勤務ストレスで発症する場合もありますが、まずピロリ菌感染による原因の除外のため菌の有無の確認が必要でしょう。
 そして潰瘍出血で死亡されたとありますが、現在の医療水準では、胃潰瘍出血なら胃カメラで止血することはほぼ可能です。致死量の出血に至る前には、かなり何回も吐血するので、まずは医療機関を受診しているはずです。それにもかかわらず亡くなったということは、「何回も吐血したが医療機関へ行かなかった」「救急病院がどこも満床で病院収容ができなかった」またあるいは「そのほか何か慢性的な併存疾患を持っており、そのため少ない量の出血でも致命的になった」などが考えられます。
 なので潰瘍出血による死亡を労災によるものとするのは少し無理があると考えます。医学的根拠が不明であっても司法判断で時に医学的根拠認定することがあり、この結果が知りたいところです。