吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

医療訴訟判決「腸閉塞」 その3

2015年10月07日 06時01分26秒 | 日記
 昔の患者さんである。大学にいた時のことである。高齢のご婦人であるが糖尿病やごく軽い認知症もあったと記憶している。1週間前よりどことなく具合が悪いとのことであった。腹痛ではない「どことなく具合が悪い」というのだ。確か近医入院中であったが時々嘔吐して食欲がない、食事ができないとのことで転院してきたのである。しかし普通に会話はできる。腹部所見は、かるく圧痛を認めるのみで本人は「何、大した痛みではないよ」と。その他、軽度炎症反応はあるが、白血球正常範囲、発熱は微熱が続いている程度である。ただ食欲はなく、食べると嘔吐してしまうので点滴のみとしていた。X線所見は腸閉塞といえばそうであるし、そうともいえない。数日間、経過を見ていたが、だんだん元気がなく動けない状態となりこれはおかしいと思われた。しかしあいかわらず腹膜炎所見はないのである。本人も強い腹痛はまったく訴えない。腹部のCTをとっても腸管の浮腫がみられるのみで明らかなその他の所見はなかった。このような場合は肺炎が原因であることが多い。しかし呼吸器症状はないしX線で肺炎を疑わせる所見はない。とにかくどこかに徐々に悪くなってくる全身状態の原因があるのであろうが、その所見に乏しいのである。