バイオの故里から

バイオ塾主宰・Dr.Kawanoの日々、収集している情報(DB原稿)をバイオ塾メンバー向けて公開しています。

【特別寄稿 山中論文の真の価値】

2007年12月10日 | NEWSクリッピング
 今回は現役の研究者の方にご寄稿いただきました。
出典:[SciCom News] No.218 2007年12月10日号 No.1

 論文捏造問題について山中先生のiPS細胞の論文を例にとってポジティブな議論させていただきます。勿論、山中先生の研究に対する姿勢は敬服に値するもので、この問題をきちんとクリアされている点に敢えて注目したということです。

 捏造があったり、疑惑があったりすると大々的に報道して『とかく科学・・・』
と非難されることが多い昨今です、きちんとした仕事を取上げて、こういうふうに論文は書くべきなのだという点を議論したいと思う今日この頃です。

 そういう点で、今回の中山先生のiPSの論文は高く評価されるのだろうと思いま。
 マスコミ各社は、iPS論文でES細胞に代わる分化細胞ができたという点のみ、検証などは問題にせずに、報じておりました。またか・・・という印象なのですが、もし、もしですよこのiPS細胞が何か別の細胞のクロスコンタミだったらどうなのでしょうか?世の中にはテラトーマと呼ばれる分化する癌細胞というものがあります。樹立系の細胞ですから、もしこうした細胞をコントロールして中山先生が使っていたとしたら、そうした細胞がクロスコンタミする恐れは十分にあるはずですし、今欧米ではそうした問題が大問題として取上げられている真っ最中です。

 BBCのラジオ放送では11月20日に"Cancer Research Wasted Millions"と題して、誤った細胞が使われている実情について40分の特集番組を File on 4 で放送しました。論文の採択やグラントの採択にあたっては、STR分析で細胞を authentication することを必用とするという方向に行くべきだということが "No authentication no paper, no authentication no grant." として主張されていました。

 恐らく、今回のiPS細胞の投稿に際しては当然そうした指摘があったのだろうと想像します。論文では上皮細胞はしかるべき細胞の提供機関から購入し、出来たiPS細胞は確かにその購入細胞と同じルーツであるという点をいわゆるSTR分析によって確認しております。この点がクリアしている点はこの論文においてかなり重要な点だと思います。

 これだけでなく、色々な疑問をクリアして採択されたのが今回の論文だと思いますので、改めて、立派なお仕事だということが理解されるのです。論文が出たから立派だったというわけでは無い点を是非ご理解ください。

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