バイオの故里から

バイオ塾主宰・Dr.Kawanoの日々、収集している情報(DB原稿)をバイオ塾メンバー向けて公開しています。

タンパク質を利用する受光素子

2007年08月23日 | 医療 医薬 健康
研究者 小山 行一
 所属: 富士写真フィルム足柄研究所

報告概要 視物質ロドプシンと同様のレチナールを発色団に持つ好縁菌の膜蛋白質バクテリオロドプシンについて,光電応答を調べた。レーザー光(YAG532nm)を用い,応答速度とバクテリオロドプシン自体の光吸収変化を同時に測定できる装置を開発しモニターした(図1)。約20種類の変異膜蛋白質での応答は,プロトン輸送に直接関与しているアミノ酸残基を変えることにより大きな影響を受けることが分かった。Asp-85→Asn変異体,Asp-96→Asn変異体およびGlu-204→Gln変異体に応答差があった(図2)。また,光電応答は電極近傍のpHに変化をおよぼすことを見いだした。バクテリオロドプシン光電変換素子の応答はプロトンの取込と放出を正確に反映しており(図3),イオン輸送の蛋白質の機構解明に寄与することが示唆された。J-Store >> 研究報告コード R993100831

ペプチドでTリンパ球の特異性をさぐる

2007年08月23日 | 創薬 生化学 薬理学
研究者 宇高 恵子
 所属: 京都大学大学院理学研究科生物物理学教室

報告概要 Tリンパ球の抗原認識の分子レベルでの機構を明らかにするために,合成ペプチドライブラリーをもちい,数種のMHC(主要組織適合性抗原)分子についてペプチド結合の特異性を調べた。また,抗原レセプターとMHC-ペプチド複合体の会合の特異性についても検討した。OX8ライブラリーを用いたMHCクラスI分子のペプチド結合の特異性を図3に示した。ペプチドの位置ごとに適合するアミノ酸の種類や結合にたいする貢献の度合いが違うことが分かった。ペプチド結合のGibbs Free Energyを考慮した数式から,任意のアミノ酸配列を持つペプチドについてMHC-Iとの結合能を予測するスコアリング法を考案した。スコアリング法を用いて,癌に特異的なTリンパ球を誘導するペプチドをスクリーニングした。ヒトの骨髄性白血病細胞で高発現している転写因子についてMCH-Iに結合が予想されたペプチドでTリンパ球が誘導できた(図1)。 J-Store >> 研究報告コード R993100834

DNAで分子エレクトロニクス素子をつくる

2007年08月23日 | 生命科学 生物誌
研究者 居城 邦治
 所属: 北海道大学電子科学研究所分子認識素子研究分野

報告概要 新規な有機光半導体の分子設計のために,光学的にみてπ電子が弱く相互作用するDNAを固体基板上に並べて分子膜を作製し,分子導線としてまた光導電体としての可能性を検討した。気水界面にアニオン性のDNAとカチオン性脂質との複合膜を形成させ,それを固体基板に移しとって分子膜を調製した。複合体中の電子供与体(光機能性脂質)から電子受容体への電子の動きを蛍光消光法で調べ,DNA膜は電子を良く通すことが分かった。電子供与体を含むPolyG-PolyCのDNA複合膜がもっとも高い光電流が発生した。電子供与体は光増感剤として機能し,DNAに光増感剤を組み合わせることにより光導電体として動作することが確認できた。J-Store >> 研究報告コード R993100835

ハワイ産ショウジョウバエのゲノムの構造と特徴,そして進化過程でのfru BTBドメインの保存

2007年08月23日 | 医療 医薬 健康
研究者 Terence Davis
 所属: University of Hawaii at Manoa

報告概要 ハワイ固有のピクチャ-ウイングとよばれるショウジョウバエ、Drosophila heteroneuraとD. silvestrisの2種について、fruitless(fru)遺伝子のゲノム構造、転写物の構造、コードされるタンパク質の構造を比較した。fru遺伝子の突然変異体はキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)において分離されている。この変異体では雄が雄に向かって求愛する。fru遺伝子は神経の雄化に関わるタンパク質をコードし、その働きによって性行動を制御していると考えられる。ハワイ産の2種にはキイロショウジョウバエで知られている5つの転写物のうち少なくとも4つが存在し、その構造はよく保存されている。特にタンパク質間相互作用に関わるとされるN末端のBTBドメインは3種間で100%保存されている。キイロショウジョウバエにおいて雌雄で異なるスプライシングが生ずることがわかっている上流エクソンは、ハワイ産の2種では発見できなかった。しかしノーザンブロット解析では、heteroneura成虫については雄でのみ複数のfru転写物が検出され、雌からは検出できなかったことから、この種では転写のレベルでfru遺伝子発現に性差が生じている可能性が考えられる。進化的によく保存されているBTBドメインの配列を上記2種類以外のショウジョウバエ類についても比較した結果、ハワイ固有種は大陸産の種の中ではrubustaグループのD. moriwakiに最も近いとの結果を得た。かつての大陸のこのブループの一種がハワイ列島に至り、現在のハワイ固有種群の祖先となったと推察される。 J-Stage >> 研究報告コード R013000003

ショウジョウバエにおける二重標識遺伝子トラップ法:機能性ゲノム学のための新しい効果的技術

2007年08月23日 | からだと遺伝子
研究者 Tamas Lukacsovich  粟野 若枝  Zoltan Asztalos
 所属: 科学技術振興事業団 創造科学技術推進事業

報告概要 Drosophilaにおいて最初に遺伝子トラップ法の開発に成功した。P因子を持つ形質転換ベクターpCasper3(図1)を用い,2つの独立したマーカー,mini-whiteとGal4による2段階選抜を行った(図2)。これらマーカー遺伝子はベクターのプロモーター遺伝子の下流にそれぞれ結合させる必要がある。不完全なmini-whiteのmRNAはゲノム中の集合サイトに関わらず自身のプロモーターにより転写されるが,mRNAが遺伝子に取り込まれ下流のエキソンをスプライシングし3'末端をポリA構造にできない限り,ハエの目の色をオレンジ色や赤色にすることはできない。この二重標識遺伝子トラップシステムは,
i) 効率的な突然変異誘発,
ii) 突然変異体の表現型における遺伝子反応の明確な識別,
iii) トラップした遺伝子の迅速なクローニング,
を可能にする。これらの特徴は,遺伝子トラップシステムがDrosophilaのゲノム機能学において非常に有効であることを物語っている(図3)。 J-Stage >> 研究報告コード R013000004

試験管内反応系を用いた分裂酵母複製開始制御機構の解析

2007年08月23日 | 菌類 細菌
 -DNA複製開始点を認識するしくみ-
研究者 升方 久夫
 所属: 大阪大学大学院理学研究科生物科学

報告概要 分裂酵母複製開始点と認識タンパク質複合体の相互作用を試験管内反応系を用いて明らかにした。真核生物の複製は染色体上の特定の部位から開始するが,出芽酵母以外の生物種では複製開始点認識機構は不明であった。分裂酵母複製開始点を自律複製配列(ARS)として分離し複製必須領域を決定した。細胞内の解析から染色体上の複製開始点に分裂酵母複製開始点認識複合体(ORC)が細胞周期を通じて局在し,一方複製開始制御に重要な役割を果たすMCMタンパク質は細胞周期のG1-S期にのみ局在することを明らかにした(図1)。さらに試験管内でORCとDNAを相互作用させる系を開発(図2)し,ORCが複製開始点の必須領域に結合し,その相互作用には厳密性の低いアデニン連続配列が必須であることを発見した(図3)。これらの新しい発見は真核生物複製開始における複製開始点の認識機構の普遍的理解に重要な手がかりとなる。 J-Stage >> 研究報告コード R013000015

mRNAを運ぶしくみ:制御ネットワークと核の動的機能構造

2007年08月23日 | からだと遺伝子
研究者 谷 時雄
 所属: 九州大学大学院理学研究院生物科学部門情報生物学

報告概要 mRNAの核から細胞質への輸送は,真核生物の遺伝子発現において欠くことのできない必須過程の一つである。mRNA核外輸送の分子機構を解明するため,単細胞の真核生物である分裂酵母Schizosaccharomyces pombeのmRNA核外輸送温度感受性変異株を分離し(図1),それらの原因遺伝子のクローニングと機能解析を行った。今回の解析によって,mRNA核外輸送だけでなく細胞内の多様な反応に関与する新規なATP/GTP結合タンパク質Ptr7pが見いだされ(図2),また遺伝子の転写及びプロセシング機構とmRNA核外輸送機構との間に密接な関連性があることが明かとなった(図3)。 J-Store >> 研究報告コード R013000016

新規微生物及び微生物によるアビエチン酸もしくはロジン類の分解法

2007年08月23日 | 菌類 細菌
出願番号 : 特許出願平6-90856 出願日 : 1994年4月28日
公開番号 : 特許公開平7-313143 公開日 : 1995年12月5日
出願人 : 東洋インキ製造株式会社 発明者 : 田中 玲子 外1名

発明の名称 : 新規微生物及び微生物によるアビエチン酸もしくはロジン類の分解法

【構成】 シュ-ドモナス属に属しアビエチン酸を分解する能力を有する新規微生物、及び該微生物を、アビエチン酸、ロジン及びロジン誘導体を炭素源とする培地で培養することを特徴とするアビエチン酸、ロジン及びロジン誘導体の分解法。
【効果】 微生物酵素反応を利用して効率良く高濃度のアビエチン酸、ロジン及びロジン誘導体を分解できるため、バ-ジンパルプ製造時におけるピッチトラブルの防止及び工程の短期化や、環境中に有害なアビエチン酸を放出させない安全性の高い、効率的なアビエチン酸、ロジン及びロジン誘導体の分解法である。


新規NAD+ 依存型アルコール脱水素酵素およびその製造方法

2007年08月23日 | BioTech生物工学 遺伝子工学
出願番号 : 特許出願平6-112486 出願日 : 1994年5月26日
公開番号 : 特許公開平7-313153 公開日 : 1995年12月5日
出願人 : 株式会社海洋バイオテクノロジー研究所 発明者 : 長島 弘秋 外3名

発明の名称 : 新規NAD+ 依存型アルコール脱水素酵素およびその製造方法

【構成】 下記の理化学的性質を示す新規なNAD+ 依存型アルコール脱水素酵素、及び該酵素の製造法。
(1)作用:NAD+ を補酵素としてアルコールをアルデヒドに酸化する。
(2)基質特異性:炭素数2~12のn-アルコールを同一炭素数のn-アルデヒドに酸化する。
(3)至適pH:9~9.5(4)至適温度:50℃(5)分子量:102 kDa【効果】 医薬品等の合成中間体として有用なアルデヒドを製造するために有効な新規NAD+ 依存型アルコール脱水素酵素を提供する。

キノン依存性フルクトース脱水素酵素

2007年08月23日 | 創薬 生化学 薬理学
出願番号 : 特許出願平6-108742 出願日 : 1994年5月23日
公開番号 : 特許公開平7-313154 公開日 : 1995年12月5日
出願人 : 株式会社中埜酢店 発明者 : 恵美須屋 廣昭 外3名

発明の名称 : キノン依存性フルクトース脱水素酵素

【構成】 以下の理化学的性質を有するキノン依存性フルクトース脱水素酵素及びその製造方法。作用:D-フルクトースを酸化してケト-D-フルクトースを精製する酵素反応を触媒する。基質特異性:フルクトースに対して作用する。最適pH及び安定pH範囲:ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウムを電子受容体としたときはそれぞれ5.0、5.0~7.0である。作用適温の範囲:10~60℃。熱安定性:30℃、15分間の処理で約95%の酵素活性を有する。阻害剤:重金属により阻害される。分子量:約57,000、約41,000、約21,500、約16,000である。
【効果】 本発明により、新規キノン依存性フルクトース脱水素酵素及びその製法が提供される。