八田 正人・河岡 義裕:ウイルス Vol. 55 (2005) , No. 1 pp.55-61
2003年12月以来,高病原性鳥H5N1インフルエンザウイルスがアジア各国で流行し,2005年3月現在,カンボジア,ベトナムおよびタイで,合わせて74名もの感染が確認され,そのうち49名が亡くなった.我々は,この流行を引き起こしている高病原性鳥H5N1インフルエンザウイルスについて,マウス,カモおよびフェレットを用いて病原性を解析した.ヒトから分離されたウイルスはマウスに対して強毒で,致死的な全身感染を引き起こした.また,ヒト由来株の中にはフェレットに対しても強毒で,全身感染をひき起こすウイルスが存在した.一方,鳥由来株は,カモに対して強い病原性を示す株もあったがマウスやフェレットに対しては,弱毒であった.また,PB2タンパク質の627番目のアミノ酸にLysを持つヒト由来株は,Gluを持つヒト由来株よりもマウスおよびフェッレトに対して強毒であった.このことから,PB2タンパク質の627番目のアミノ酸がLysであることは,哺乳動物で効率よく増殖するために重要な働きをしていることが示唆された.
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JOI JST.JSTAGE/jsv/55.55
◇最近日本で分離された鳥インフルエンザウイルス
真瀬 昌司・河岡 義裕:ウイルス Vol. 55 (2005) , No. 2 pp.231-237
現在,アジアを中心にH5N1亜型ウイルスによる高病原性鳥インフルエンザが猛威を奮っており,ヨーロッパへも拡がる傾向をみせている.2004年のわが国の3県における発生から分離されたウイルスは2003年中国で分離された遺伝子型Vに相当し,アジアで優勢な遺伝子型(Z)とは異なっていた.また2003年の動物検疫所におけるウイルスサーベイランスで中国由来輸入アヒル肉からも高病原性H5N1亜型ウイルスが分離された.このウイルスは既知の遺伝子型とは異なっており,またウイルスのマウスに対する病原性はマウス接種後著しく増強した.
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