『公園のお風呂ダヌキ』-10

2010-07-22 05:06:36 | 連載
 昼間の公園には近所の小さい子どもたちがたくさん遊んでいました。そのにぎやかにはしゃいで走りまわっている小さい子たちの前で、お風呂ダヌキはまるで見張り番のように座っていました。
 こんにゃくさんはチビを木につなぐと、ブランコにのって高くこぎはじめました。
 お風呂ダヌキが見えます。
 木の枝がゆれているのも見えます。枝の先に小鳥がとまっているのも見えます。
 前に、後ろに、高く、高く。
 そのうちにこんにゃくさんは目がまわってしまい、とうとうブランコをとめて座り込んでしまいました。
 下を向いて、地面をじっと見つめていると、アリがたくさん動きまわっていました。近くにアリの巣があるのです。
 そのまわりには、いろいろな草が生えていて、それぞれみんな、小さな小さなかわいらしい花が咲いていました。
 草の中に小さな虫がチロチロ動いているのも見えました。
 少し離れたところに目を向けると、草の中に小鳥たちが降りてきていて、一生懸命になにか、チチッ、チチッと地面をつついいています。
 こんにゃくさんは、何かとても不思議な気がしました。でもそれがどうしてなのかはわかりませんでした。
 気がつくと風が少しつめたくなっていて、小さい子たちも家に帰ってしまったのでしょう。公園は静まりかえっています。
 こんにゃくさんも急にさびしくなって、チビを見ると、チビもこんにゃくさんの顔を見上げました。
 「帰ろうか、チビちゃん」
 ゆっくりと歩きはじめたこんにゃくさんたちを、お風呂ダヌキが見送っていました。


 それから二、三日たった学校の帰り、こんにゃくさんは、向こうからくる町山くんたちとばったりと出くわしました。
 このごろは前のようにひどくいじめられたり、おどかされたりすることもなくなっていたのに、一人だけで歩いてくるこんにゃくさんを見つけた町山くんたちは、急に近寄ってくるといきなりこんにゃくさんのまわりをぐるっと取り囲んだのです。
 「こんにゃく、ひさしぶりじゃねえか。忘れたのかよォ」
 「こんにゃくおでん、あしたの帰りにまたお金を持ってこいよ。だけどだれにもいうなよ、でないとひどいぞ」
 町山くんが意地悪く笑いながらいいました。後ろからもだれかがこんにゃくさんの髪の毛を思いっきり引っ張りました。
 大変です。どうしましょう。
 こんにゃくさんはふるえ上がってしまいました。おこづかいはつかってしまったし、貯金箱だって空っぽです。


つづく

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