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『公園のお風呂ダヌキ』-26

2010-08-01 09:20:57 | 連載
 ところが大通りまでくると、マフラーを忘れてきたのに気がついたのです。
 (あっ、いけなーい。まだみんないるかぁ、いやだなあ)
 買ってもらったばかりのマフラーです。
 仕方なくこんにゃくさんは公園に戻りました。けれどみんなはもうそこにはいませんでした。きっと新藤さんの家でおやつを食べているのかもしれません。
 こんにゃくさんは、みんながいないのでほっとしました。でもそれでいてなんとなくさびしくなって、そのまま公園の反対側のお風呂ダヌキのいる方に行きました。
 ブランコにゆられて、すっかりはだかになったまわりの木をながめていると、さっきまでみんなと一緒にいたのがうそみたいです。
 お風呂ダヌキはのんびりした顔で、あたりを見まわしているし、チュッチュッ、チチチ、チュッと小鳥の鳴く声も聞こえて、今日はそんなに寒くもないし、ここにいると、こんにゃくさんものんびりと落ち着いた気持ちになってきます。
 足元の枯れ葉をくつの先で蹴って、こんにゃくさんはぼんやりと新藤さん達のことを考えていました。
 (私、新藤さんてあんまり好きじゃないな、私、ボール遊びなんて大きらいなのに、山田さんも小島さんも、新藤さんと一緒になってもう、つまんない。お人形さん遊びのほうがおもしろいのにな。小島さんたら、どうして新藤さんなんか連れてきたのかな。小島さんはいいけど、新藤さんなんてもうやんなっちゃう)
 その時です。だれかが言いました。
 『こんにゃくさん、そうじゃないんじゃないの? そんなことを言っちゃいけないよ』
 声ですぐわかります。
 「お風呂ダヌキさん」
 お風呂ダヌキはいつのまにか、こんにゃくさんのすぐそばに立っていました。タヌキの笠に夕日があたって、まぶしく光っています。こんにゃくさんは、おもわず目をつぶってしまいました。
 ゆっくり目をあけてみると、お風呂ダヌキはニコニコしながらこんにゃくさんに言いました。
 『見てごらん』
 タヌキの手には、キラキラと光っている透き通った四つの石がのっています。
 「それ、なあに?」
 『これかい、これはね、人間のこころなんだよ」
 「こころ?」
 こんにゃくさんは急にこわくなって、ブランコに座ったまま、おもわず後ろにさがろうとしました。
 『大丈夫だよ、ほら、見てごらん。これがこんにゃくさんの。それからこれが新藤さんの。こっちは山田さんで、これが小島さんのだよ』
 四つともなんてきれいな石なんでしょう。
 よく見ると、四つの石は一つ一つ形が違っていて、光の色あいも違うのがわかりました。
 『どれが一番きれいかな』
 『わからないよ。だって差、四つともみんなきれい。みんな形も違うし、光も違うし、みんな一番みたいなんだもの」
 『新藤さんのは』
 「新藤さんのもすごくきれい」
 『それじゃ、新藤さんのはいやだなんて思う?」
 「思わない」
 こんにゃくさんは首をふりました。

つづく
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